多数の犬や猫を飼い、近隣に迷惑をかけるトラブルが、2年間に全国で少なくとも2055件起きていた。朝日新聞社の自治体アンケートでわかった。100匹以上の犬を飼う例も32件あり、大半が狂犬病予防のワクチンを接種していなかった。飼育数の届け出制など対策をとる自治体は34に上った。環境省は初の全国調査を始めた。
全国の都道府県、政令指定市、中核市、東京23区など保健所のある計134自治体にアンケートを送り、すべてから回答を得た。複数の犬猫飼育で苦情が寄せられた発生元の件数は、過去2年間に犬で1089件、猫で966件あった。これらは氷山の一角とみられる。
10匹以上飼っている場合の飼い主について質問したところ、倒産するなどしたペット業者か、むやみに犬や猫を拾って繁殖させている個人が大半だった。住民からの苦情は鳴き声、悪臭などさまざまで、ゴミ屋敷のような不潔な場所での飼育例も多くあった。
また、放し飼いの犬が通行人をかんだり、農作物を踏み荒らしたりする被害も報告されていた。国や自治体は、こうしたトラブルを「多頭飼育問題」と呼んでいる。
広島市ではペット業者が犬約540匹を飼育、死体もずさんに処理していた。大半の犬は狂犬病予防のワクチンもされていなかった。宮城県蔵王町では個人が犬205匹を飼いきれなくなり、保健所で引き取った。
15自治体が条例を制定・改正し、飼育数の届け出制や繁殖制限などを導入していた。佐賀県は犬猫を6匹以上飼うときは届け出を義務づけ、違反者には5万円以下の罰金を科すといった内容。茨城県、山梨県も届け出を義務づけ、鳥取県は10匹以上の飼育を認めない禁止区域を設定できるようにした。
さらに、独自の飼育指針や手引書づくりなどの対策をとる自治体が、検討中も含めて14自治体あった。