◎「ほくりく健康創造」 得意技出し合って成果を
文部科学省が進めている「知的クラスター創成事業」の第二期分として石川、富山両県
が共同で提案した「ほくりく健康創造クラスター」が採択された。今年度から向こう五年間、毎年七億五千万円の研究費が交付されることになっている。
要するに両県が官民連携で開発している得意技を出し合い、研究開発の拠点を形成し、
それでもって技術革新を推し進めるものである。緊密な協力によって優れた成果を出してもらいたいものだ。
クラスターは英語で「集積」を意味し、転じて知的クラスターとは研究開発の拠点とい
うことになる。各地がそれぞれに得意分野の研究開発の拠点形成に取り組んでおり、それを支援するのが文科省の知的クラスター創成事業だ。
第一期は両県がそれぞれ独自に研究開発に取り組み、一年早かった富山県は今年三月末
に一期分の研究を終え、石川県は一期分がもう一年残っているが、第二期の狙いは一期の成果をさらに発展させることである。
石川県の得意技は脳の動きを画像化する技術や、安藤敏夫金大教授による世界的な発明
と注目された高速原子間力顕微鏡などである。この顕微鏡は水溶液の中で動いているDNAやタンパク質などの生体分子をナノ(十億分の一)レベルの解析度で高速撮影ができるという「新兵器」だ。富山県の得意技は医薬品製造の基盤技術などである。
こうした双方の得意技を融合して新しい技術を生み出そうというのが第二期の取り組み
である。研究分野は「医薬基盤技術を生かしたバイオ機器開発」「イメージング診断機器開発に向けた研究開発」と、こうした得意技の「広域化(世界標準化)プログラム」の三つである。
ひっくるめていえば、脳や細胞の動きを画像で診断して異常を発見したり、医薬品の形
態をいろいろに変えることによって薬を皮膚や、においを通して体内に投与したりすることを目指し、世界標準化して広く普及させる狙いの開発である。世界標準化は各分野で日本が他国に後れを取っているとされる。両県が強烈な競争心をプラスに変えるチャンスでもある。
◎「普天間」移設問題 福田首相はもっと真剣に
米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県議会の野党六会派が日米両政府の移設計画に
反対する決議案を提出した。同県議会は野党が過半数を占めており、十八日の本会議で可決の見通しという。決議に法的効力はないが、日米の懸案解決へ政府は重大な決意をもって臨まなければならない状況であり、真剣な取り組みを福田康夫首相に求めたい。
政府と沖縄県との距離が縮まらない背景には、交渉の実務を担った防衛施設庁が防衛省
に統合されたことや、前防衛事務次官の汚職事件に伴う異動などで人脈が細ってきたこともあると言われる。この際、地元自治体との交渉を進める防衛省側の態勢をもう一度整える必要もあるのではないか。
先の沖縄「慰霊の日」の戦没者追悼式で、福田首相は沖縄の米軍基地負担の軽減と自立
型経済の構築を訴えた。この二つの願いを実現する最大の鍵は普天間飛行場の移設である。今回の米軍再編計画では、普天間飛行場以外にも多くの米軍基地・施設の返還が予定されており、その面積は合わせて一千ヘクタール以上になる。
また、米海兵隊のグアム移転は普天間飛行場の移設とセットになっており、普天間問題
を突破しない限り、基地負担の軽減も基地の跡地を活用した地域振興策も前に進まないのである。
沖縄県の仲井真弘多知事は、普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設
する政府案を認める条件として、滑走路の位置をもっと沖合に移すよう求めている。飛行ルートが住宅地に近づかないようにするためだ。これに対して、米側は日本政府と合意した現計画の修正に反対している。日本側も政府同士の約束にこだわっているが、飛行場移設の実を得るため、沖縄県の修正要望を受け入れて米側を説得することも考えてよいのではないか。
沖縄県内には、基地をめぐって対立する政治勢力が、結果的に政府から振興費を引き出
す役割を相互に担い、政府頼み・基地依存をかえって深めたという批判がある。与野党はこの指摘を真摯に受けとめてもらいたい。