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「返品自由」か「責任販売」か 小学館、書店に選択肢

2008年7月16日

 書籍の4割が読者の手に届かずに返品される――。そんな出版流通の現状を改めようと、小学館が今秋、ある試みをする。同社の書籍を販売する書店が、取引条件を選べるようにするのだ。それは(1)買い切りが原則で販売額の35%の粗利益が得られる(2)返品は自由だが利益は2割程度、の二つ。同じ本について複数の取引条件を設けるのは業界初の試みだ。

 出版業界では、出版社が価格を拘束する再販制度がある代わりに、書店に返品を認める「委託制度」が一般的。だが、返品が自由なために、4割もの返品率が恒常化し、出版不況の主因となっていた。

 返品なしの買い切りにする代わりに高い粗利益を保証する「責任販売制」の試みも一部にあるが、経営が苦しい書店にはリスクが大きく、広がっていない。

 そこで小学館は「返品自由」か「責任販売」か、書店が選べるようにする。技術的な課題があったが、取引条件を識別する「RFタグ」を開発。本に付けることで選択が可能になった。

 まず、11月に発売予定の『ホームメディカ 新版・家庭医学大事典』にこのタグを装着する。本体価格は6千円(税抜き)。書店が「責任販売」を選べば35%に当たる2100円が利益になる。通常の委託なら、返品はできるが利益は約2割の1200円程度だ。

 「責任販売」を希望する書店は事前に申し込めば、注文した数が確実に配本されるという。出版社が返品過多を恐れ、中小書店に本を回さないことも業界の弊害だが、「責任販売」の広がりは、必要なところに必要な部数が届く取引につながる。今回、小学館の販売目標は責任で5万部、委託で3万部。将来は他の書籍に広げ、他の出版社にも呼びかけるという。

 小学館と集英社などの物流を担う昭和図書の推計(07年)では、書店で売れ残って出版社に返品される書籍と雑誌の合計は年間8億5千万冊。そのうち2億冊以上が断裁処分され、損失は1700億円に及ぶという。今回のような取引条件の併用を業界全体に広げることで無駄を減らし、出版不況脱却につなげるのが狙いだ。(丸山玄則)

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