部屋の掃除をしていたら、いつだったか購入した12インチ盤のジャケットに紛れ込んでいた、2冊の小冊子が出てきたので、掃除もそこそこに、パラパラとページを繰ってしまいました。

出てきたのは、「COLUMBIA RECORDS」という英字を緩やかに波打たせ図案化したタイトルを表紙に配した、いわゆる新譜月報で、裏表紙に特約店のスタンプが押されていることから、おそらく日本コロムビアが販売契約先の小売店などに配布していたもの、と思われます。

7インチ盤のジャケットを縦半分に割ってひと回り小さくした、すなわち、短冊シングルCD(!)のジャケットとほとんど同じサイズ。ホチキス中綴じ・モノクロ48ページのぺらっとした成りで、表紙のみ4色刷り。ちなみに手元の2冊は昭和40('65)年9月号と翌41年1月号。前者の表紙には「三度日本の舞台に立つブラザース・フォア」とキャプションが添えられた、演奏中の4人の写真、後者には「ますます快調の都はるみ!!」というわけで「アンコ椿は恋の花」で前年度レコード大賞・新人賞を獲得したばかりの新進歌手の笑顔が各々フィーチュアされています。

この、非売品だったと思われる冊子。当時、どのように活用されていたのでしょうか。店頭に行って「ください」といえばタダで持って帰れたのか、それとも、センマイ通しなどで片隅に穴を開けられて、過去のものと共に紐で綴じられ、予約カウンターのようなところにぶら下げて皆で見たものなのか。。これは是非とも「レコード手帖。」執筆者として名を連ねる諸先輩方に、いずれ伺ってみたいところであります。

中身は、というと、タイトル、発売日、価格の羅列で、ジャケットや歌手などの写真も添えられていたり、いなかったり。時折、付されるキャプションも「〜文句なしに決定盤と申せましょう。」といった類のものばかりで、当然ですが純粋な新譜カタログとしての役目に終始しているのみ、なのですが、これが侮れません。

「今月のニュー・ボイス」「常盤津」「ディズニー・ランド」「特別企画」「ジャズ」「ムード」「スクリーン」などの小見出しのもと、洋楽・邦楽カタログの絶妙な隔離と混ぜ合わせを繰り返してのカタログ配置のリズムが思考を刺激して、僕は聴いたことのないレコードに囲まれた気になり、真顔のまま興奮状態に陥るのですが。。あら、あなたもですか? やっぱり。でも、負けませんよ。

思い立ったがナンとやら、特約店の番号を確認。ちなみにスタンプされていたのは、愛知県は豊橋の「ヤマト楽器店」というお店の名と、3つの支店の電話番号。そのひとつをダイヤル、○○-54-55。。
あの、すみません。いま、月報を見ていたのですが、レコードの予約注文、いいですか? はい。えーと、まずLPですけどね、ボブ・ディラン「コロムビア・カレッジ・フォーク・シリーズ〜ボブ・ディラン!」、それとEP、ハニーカムズの「サムシング・ベター」、ドノヴァンの「キャッチ・ザ・ウィンド」、あとキンクスの。。

「お客様のおかけになった番号は、現在、使われておりません。」

夢と書いて、「ム」。無と書いて。。

寄稿してくださっているコラムで、僕はますますファンになってしまいました。今日の「レコード手帖。」は、毎月ご登場のジャズ・シンガー、akikoさん。今回も必読。読んだら、ひととき、僕も考えることにします。

小西康陽さんは今夜から3日連続DJ。東京は青山・Loop、六本木・mado lounge、そして島根・NAKED SPACE。すべての詳細はいつも通り、「制作室から。」をクリックでご確認くださいませ。
僕は今夜、部屋でひとり、ただひたすら、レコードを聴くことにしよう。無、になるまで。というわけで、今日も。

(前園直樹)