7月16日の中医協
厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は7月16日、総会(第132回)と診療報酬基本問題小委員会(第123回)を開催した。総会では、医療費の動向や施設基準の届け出などについて厚労省が報告したが、特に大きな議論はなかった。小委員会では、DPC(医療費の包括払い)を中心に議論。DPCの在り方について批判的な意見を展開する日本医師会の委員に対し、「医療全体をどう考えるかという委員としての見識ならば聞くが、『日医として』と再三強調されるのはどうなのか」と、対馬忠明委員(健保連専務理事)がただす一幕もあった。(新井裕充)
【関連記事】
<今回の中医協関連>
07年度医療費、過去最高の33.4兆円
診療科の収支、10年改定で反映か
DPC拡大を了承―中医協小委
<前回までの中医協関連>
7月9日の中医協 (前回の中医協)
6月25日の中医協(前々回の中医協) 11日付で厚労省の人事異動があったため、事務局の担当者が大幅に入れ替わった。開催前、委員と名刺交換する姿が目立ち、和やかな雰囲気の中で総会が開催された。2010年度診療報酬改定に向けた議事運営のかじを取るのは、佐藤敏信・保険局医療課長(前医政局指導課長)。
冒頭、佐藤課長が人事異動について報告。新たに就任した、▽榮畑潤・大臣官房審議官 (医療保険、医政担当) ▽神田裕二・保険局総務課長 ▽田河慶太・同局保険課長 ▽武田俊彦・同局国民健康保険課長 ▽三宅智・同局医療課医療指導監査室長 ▽小野太一・同課保険医療企画調査室長 ▽村山令二・保険局調査課長 ▽岩渕豊・社会保険庁運営部医療保険課長―を紹介した後、議事に入った。
総会の議題は、▽医療費の動向 ▽主な施設基準の届出状況 ▽その他―の3点。「医療費の動向」では、07年度の医療費について、厚労省の担当者が資料に沿って説明した。それによると、07年度の医療費は前年度から約1兆円増の33.4兆円で、医療費の伸び率は前年度に比べて3.1%増加している。「受診延日数」(延べ患者数に相当)は前年度に比べて0.9%減少しており、減少傾向にある(05年度0.3%減、06年度0.7%減)。医療機関の種類別に見ても、大学病院だけが増加している。
質疑で、藤原淳委員(日医常任理事)が、この点を指摘。「大学病院の独り勝ちではないか。きちんと機能分化されているのか気になる」と質問した。これに、厚労省の担当者は「高齢者が大学病院を志向しているからではないか」と回答した。
邉見公雄委員(全国公立病院連盟会長)は、外科(診療所)の医療費の伸び率が毎年減少している点を指摘し、外科医の減少に歯止めを掛ける必要性を述べた。
厚労省はまた、07年度の調剤医療費の動向を「全数」と「電算処理分」に分けて提示。それによると、全数は5兆1673億円で、処方せん一枚当たりの調剤医療費は7305円。電算処理分は4兆1803億円で、処方せん一枚当たりの調剤医療費は7322円となっている。電算処理分の処方せん一枚当たりの調剤医療費の内訳を見ると、技術料が26.3%(前年度比1.2%増)、薬剤料73.6%(同7.5%増)で、薬剤料の約85%を内服薬が占めている。これらの説明に対し、委員から意見は出なかった。
「主な施設基準の届出状況」では、診療報酬を算定する上で施設基準の届け出が必要となる主な項目について、05−07年の7月1日現在の届け出状況が示された。
■ 診療報酬基本問題小委員会
議題は、▽診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会からの報告 ▽DPCの在り方 ▽その他―の3点。
最初の議題では、診療報酬調査専門組織「医療機関のコスト調査分科会」が6月13日に取りまとめた07年度の「医療機関の部門別収支に関する調査研究」の結果を田中滋分科会長(慶大大学院教授)が報告。病院の経営実態を把握するための新しい調査方法として、池上直己・慶大教授らの研究グループが開発した調査手法(診療科部門別収支計算方法)を紹介した。
この調査手法について、田中分科会長は「医療のコストや原価を把握するために有効な調査として、活用可能な段階になった」と評価した。審議の結果、この調査手法を今年度も継続して実施することが承認されたが、委員からはさまざまな指摘が相次いだ。
対馬委員は「医療経済実態調査だと、病院の部門別収支、外来・入院別の収支が分かりにくいので、これ(診療科部門別収支計算方法)が実用化されると、(診療報酬改定の)一つの材料として有効」と評価しながらも、「日ごろ聞いている話と違う点がある」と指摘。「外科、整形外科、産婦人科が非常に高い(収支がプラス)。これらは、かなり厳しいと聞いている。また、皮膚科、眼科、耳鼻科が低い(収支がマイナス)。これも、日ごろ聞いている話と合わない」
田中分科会長は、「医師を獲得できない」という問題と、「医師が治療した後の会計上の収支」という問題とが異なることを指摘した上で、「医師が獲得できていれば」ということを前提にした調査結果が掲載されているとした。また、今回の調査対象になった病院の特性(DPC対象病院であること)なども、調査結果に影響していると説明した。
診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)も、調査の対象になった病院の特性が結果に反映したとの見方を示した上で、収益と費用を部門ごとに割り付ける「配賦」という手法をさらに検証することを求めた。
田中分科会長の説明に対し、対馬委員は「以上のような問題意識を持って引き続きやっていただきたい」と理解を示したが、診療側の藤原委員はこの調査手法を批判。「大変自信のある調査のように見えるが、多くの委員が『妥当かどうか』が分からないのではないか。調査の病院数も少ない。DPC対象病院に実施した調査を一般病院にも敷延していいのか」と不満を表した。
遠藤小委員長(中医協会長)は「サンプル数(調査対象)を今後増やそうという提案であり、その調査結果を踏まえてあらためて議論すべきだろう。本日の議論を反映しながら研究を進めていただきたい」とまとめた。
続く「DPCの在り方」では、宇都宮啓・企画官が、DPCをめぐるこれまでの議論や経緯などを説明し、次期診療報酬改定に向けた検討課題として、▽DPCの評価 ▽DPC対象病院 ▽DPC制度の運用に関する見直し―の3項目を提示。各項目ごとの論点として、「新たな機能評価係数の設定」「調整係数の廃止に伴う経過措置」などを示した。
委員の意見を求めるに当たり、遠藤小委員長は「1回目なので、個別の論点を詳細に取り上げるのでなく、DPC全体の方向性を高い視点から(フリーディスカッションの形式で)議論いただきたい」と述べたが、竹嶋康弘委員(日医副会長)の代理で出席した中川俊男氏(日医常任理事)がDPC制度を批判。日医常任理事の藤原委員も加わり、「DPCから脱退できるルールが必要」「治癒率を低下させ、再入院を増加させる」などと、これまでの日医のDPC批判を延々と繰り返した。
これに対し、対馬委員が中川氏、藤原委員の姿勢を批判。「DPCだから激しい意見の応酬になることはやむを得ないが、『日医としては』という言葉が再三出てくる。医療全体、病院全体をどう考えるかという委員としての見識ならば聞くが、『日医として』と再三強調されるのは、どうなのだろうか」
遠藤小委員長も、「(委員は)団体推薦ではないということになっているので、団体名を出して発言するのはどういう位置付けなのか、不明瞭(めいりょう)なところがある」と述べた。
中川氏は「ごもっともだ。日本医師会は診療所の団体ではなく、すべての経営形態の医療機関に所属する医師が加盟する団体なので、そういう意味で『日医としては』という表現を使った。耳障りだと思うので気を付けたい」と釈明した。
今後は、「新たな機能評価係数」などの検討を「DPC評価分科会」でもスタートさせ、同分科会と連携しながらDPCの在り方の議論を進めていく。
更新:2008/07/16 21:40 キャリアブレイン
新着記事
院内感染対策サーベイランス運営委が初会合−厚労省(2008/07/16 22:13)
12万件は「アクセスログ数」(2008/07/16 21:55)
7月16日の中医協(2008/07/16 21:40)
過去の記事を検索
キャリアブレイン会員になると?
専任コンサルタントが転職活動を徹底サポート
医療機関からスカウトされる匿名メッセージ機能
独自記者の最新の医療ニュースが手に入る!
【特集・第19回】本田宏さん(済生会栗橋病院副院長、NPO法人「医療制度研究会」副理事長) 産科、小児科、救急医療、リハビリ医療、外科など、危機にひんする日本の医療を立て直すため、全国の医師9人が立ち上がり、7月7日、「医療崩壊はこうすれば防げる!」(洋泉社)を出版した。厚生労働省が進めてきた医療政 ...
医療法人社団斗南堂・八王子クリニック(東京都八王子市)ミディアム・テンション≠大事に仕事と家庭を両立 医師・看護師の厳しい労働実態が社会問題化し、医療現場の環境改善が重要な課題になっている中、「生活を大切にしながら働ける」医療機関が、東京都八王子市にある。医療法人社団斗南堂・八王子クリニックだ。 ...
WEEKLY
埼玉県戸田市の戸田中央総合病院には、今年もたくさんの新人ナースが仲間入りしました。人に寄り添う日々の業務は、緊張の連続でもあります。新人ナースの一日に密着しました。
医療セミナー情報