▽市民含め危機意識共有を
任期満了に伴う益田市長選は二十日告示、二十七日投開票される。二〇〇四年十一月に美都、匹見両町と合併後、初の市長選。市財政が厳しい状況の中、市民の地域振興への期待は大きい。益田市政が直面する主な課題をまとめた。
土曜日の午前、益田赤十字病院(乙吉町)の救急外来に次々と車やタクシーで患者が訪れる。この日は循環器科医師が当番だったが、子どもの来院が多かったため急きょ非番の小児科医が駆け付けた。
午前中だけで二台の救急車が急患を搬送してきた。「重症者を優先します。お待ちください」。看護師が診察待ちの患者や家族に頭を下げて回った。
「益田の救急医療は崩壊寸前です」。木谷光博副院長(50)は訴える。地方の医師が不足する中、同病院でも二〇〇二年に四十九人だった勤務医が三十六人に減った。専門科や年齢の関係で当直ができる医師は二十九人。ぎりぎりのローテのうえ仮眠もできないほど患者が訪れるため、三十六時間勤務も月に一、二回は強いられる。
「こんな過酷な労働環境で耐えられますか」と木谷副院長。医師不足に加え、市民の安易な受診も中核医療機関の医師の過重労働に拍車を掛けている。
益田保健所によると〇六年の同病院の休日救急患者は約六千八百人。このうち軽症が95%を占めた。中川昭生保健所長(56)は「発熱や腹痛などは近くの診療所で受診してほしい。入院や手術が必要な患者に対応するのが病院の役割なのです」と強調する。
赤十字病院の窮状を受け、益田地域医療センター医師会病院(遠田町)は五月から週一日、夜間救急を引き受けた。医師会病院の板東一彦事務長(50)は「苦渋の決断だった。しかし、このままでは共倒れになりかねない」と打ち明ける。勤務医十五人のうち八人が当直を受け持つ。その疲労は想像以上だ。
益田医師会は市や保健所に休日診療所の開設を提案している。当番で開業医らが待機・診察し、病状に応じて患者の受け入れ先を振り分けるものだ。赤十字と医師会の二つの病院を中心とした機能分担のシステムづくりと市民を含めた危機意識の共有は、待ったなしの状況だ。(岡本圭紀)
【写真説明】急患が運び込まれる益田赤十字病院の救急外来
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