メラノサイトは、皮膚のシミとなる黒褐色の色素メラニンを生み出す細胞です。そのライフサイクルは次の過程をとることが知られています。
 | Step1 : まだメラニンを作る能力を持たない未熟な細胞メラノブラストの増殖 Step2 : メラノブラストの成熟(分化)によるメラノサイトへの変化 Step3 : メラノサイトの増殖(→メラニン生成) Step4 : メラノサイトの減少 |
従来の皮膚のシミに関する研究や美白のアプローチは、メラノサイト内のチロシナーゼ酵素の活性やメラニン生成の抑制に関するものが多くを占めます。しかし、花王ではこうしたアプローチに加えて、メラノサイトと皮膚の中でメラノサイトを取り囲むように存在する角化細胞の両者に着目した研究を進めてきました。その結果、角化細胞からメラノサイトにメラニン生成を指令するメカニズムを発見し、情報伝達物質であるエンドセリンを抑制する有効成分「カモミラET」を開発するなど、情報伝達物質に着目した独自の美白研究を行ってきました。 一方、メラノサイトのライフサイクルの各過程に影響する物質を同定し、その作用を調べれば、シミの根本的な原因や皮膚疾患の解析に繋がると考えられます。しかしこれまで、より皮膚の中に近い環境でメラノブラストやメラノサイトを培養する技術がなく、詳細な研究ができませんでした。 広部教授は、皮膚に本来備わっている生理的物質のみを培養液に加え、メラノサイトやその前駆細胞であるメラノブラストを純粋培養する技術を確立されました。この方法により、皮膚により近い条件で情報伝達物質の影響を評価することが可能になりました。 以上を背景に、上記の4ステップにおける情報伝達物質の研究を行いました。 |