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【主張】防衛省改革 「文官統制」見直し進めよ
「不祥事はなぜ続発するのか」との疑問から、防衛省・自衛隊の抜本的な組織見直しを求めた政府の「防衛省改革に関する有識者会議」の報告書がまとまった。
主要な柱は自衛官(制服組)を内部部局の次長や課長に、内局官僚(背広組)を統合幕僚監部に相互に登用できるよう提言したことだ。背広、制服組を「混在」させ、一体で日本を守ることは当たり前である。
これまで制服は内局の課長以上に就けなかった。内局が陸海空の各幕僚監部をコントロールするなど、政治による文民統制とは異質な「文官統制」がまかり通っているためである。
防衛相を補佐する防衛参事官制度も背広組しかなれず、形骸(けいがい)化していた。これも廃止され、政治任用の防衛相補佐官を創設する、としている。法的に根拠のない防衛会議も防衛省の最高審議機関としての活用が打ち出された。
いずれも妥当な内容だ。石破茂防衛相は「法改正なしにできるものから始める」と語った。人事交流などは大臣の決断次第だ。
一方で、この提言が実現すれば、54年前の旧防衛庁設置以来の大規模な組織改革になる。混乱や停滞を危惧(きぐ)する声もあるが、いかに実効性ある組織にするかだ。
首相官邸の司令塔機能強化が提言されている。防衛担当の首相補佐官創設や自衛官の活用は当然だ。ただ、安全保障会議の活用や同会議に防衛力整備の在り方を検討するための常設の検討機関設置については十分に機能するかどうかの問題がある。安保会議は決定事項を追認するだけの機関にすぎなくなっているからだ。
安倍前政権は日本版の国家安全保障会議(NSC)創設を打ち出したが、福田政権は断念した。日本が進むべき国家戦略を策定する場がない現実を考えれば、日本版NSCこそ、国家安全保障の司令塔にすべきだろう。
防衛省防衛政策局の機能強化も打ち出されているが、防衛相の指示、命令などは内局を通じて行うとされている。内局優位は変わっていないとの指摘もある。
自衛隊の不祥事について報告書は「失敗さえしなければよしとする減点主義の傾向」などがあるとし、内局による徹底した統制が一因と分析している。
誇りを持ったプロフェッショナルの集団として自衛隊を再生させるには不断の見直しが必要だ。