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『萬雅堂』便り

2005-11-20 私よりも、むしろ坂ちゃんのこと

同人誌表紙 坂口尚三・画

虫プロにおいでよ」_ 12:29

坂口尚三のそんな言葉に、半信半疑ではあるもののとにかく一度はと訪ねてみることに。

すると、どう段取りされていたのか「じゃぁ、一応簡単なテストを」「ええっ?」いきなり動画机の前に座らされます。「ジャングル大帝」の主人公レオを何ポーズか描かされて…そのときの応対は制作のもりまさきさん(のちのマンガ家、真崎・守)。

「じゃ採用です」即決でした。キツネにつままれたようとは正にこのこと。

実はすべてが坂口くんの根回し済み。彼は天才アニメーターとの呼び声高く(事実、手塚治虫も彼を絶賛しています)、このころ既に原画マンとして一つの班を受け持つほどの立場だったのです。その男の紹介ならと、私の採用は半ば決まっていたみたい。昭和41(’66)年3月1日付けで入社となりました。待遇も新人でなく経験者扱い。そして、なんとそのまま「ジャングル大帝・坂口班」の動画として配属されたのです。このとき彼は私の友人から一気に「先輩、上司、そして先生」となったのでした(笑)!もうすっかり頭上がりませんよ。ほんとのところは、日本初のカラーテレビアニメ番組「ジャングル大帝」の放送開始(’65年10月6日)もあって、虫プロ自体も人手が欲しかった時期だったのだとは思いますがね。同じ班の先輩が西村宏(緋禄司)さんと谷沢豊さん。(そして後に小林準治さんが入社してこれに加わります。)この坂口班は「ジャングル大帝」の制作途中で急遽「鉄腕アトム」の制作を手助けするということになって揃ってスタジオを移動、「アトム」最終回(’66年12月31日)に向けての半年ばかりを作業することになりました。高校1年の時、試写会で見たのはアトムの誕生。そして、太陽に突っ込んでゆくアトムの最後を、今度は現場で自分が描くことになろうとは…実に感慨深いものがありましたね。(エンディングタイトルに自分の名前が載ったのもこの最終回が初めて!)

次の作品は「リボンの騎士」(’67年4月2日〜’68年4月7日)です。このときから坂口…坂ちゃんと呼ばせてもらいましょう。坂ちゃんは演出に、私は原画になりました。同じ班のままです。いつも一緒。この頃は仕事を離れても年中つるんで遊んでましたね。坂ちゃんが愛車の真紅ホンダS800でジムカーナに参加するのについていったり(もちろん彼がリーダーだから)、お酒や、時にはマージャンなんかも(唯一私が勝てた・笑)。

それでも、虫プロ商事の雑誌「COM」の創刊(’67年1月〜’71年12月)もあって、坂ちゃんは次第にマンガにシフトを始めます。徐々に離れていくのは必然でしたね。だって、彼ほどの圧倒的な才能の持ち主が、アニメの一演出でとどまってるわけがない。ほどなく虫プロを去り、マンガ家坂口尚の誕生となっていくのです。私は恩人をただ見送るだけ。でもその後ろ姿は眩しかったですよ!ありがとう坂ちゃん。(彼とは数年後、私のシリーズ初監督作「まんが偉人物語」(’77年11月18日〜)で再会を果たします。この話はいずれ)彼がマンガ家になったばかりの頃のエピソードが、「すがやみつるの雑記帳」というサイトに最近紹介されています。ちょうど、このつづきのような展開になってますので、是非訪ねてみてください。

http://www.m-sugaya.com/blog/ の11月13日付けです。(私も書き込みしちゃいました)

画像はマンガ同人誌の表紙(’63年8月)。17歳になったばかりの頃の坂口尚三の絵です(これって許諾要るのか?いいよね坂ちゃん・笑)。

STP3STP3 2005/11/20 21:15 名前がはてなのIDになってしまうようですが、坂口尚氏の小部屋のさとぴーともうします。先日は掲示板への書き込みありがとうございました。
鉄腕アトムの最終回。手塚先生が説明しながらその太陽にアトムが向かうシーンを放送していたのを覚えています。1963年アトム放映開始の年に生まれたのでアトムを観ていたのは再放送だったかもしれません。
同人誌若人。掲示板に書き込みがあった時、同人誌若人の方なのかどうか聞こうと思っていました。
たしか追悼文集に若人の名前があり、それが気になっていたのでした。
若人が2005年になってウェブで紹介される…なんだかすごいですね。
西村緋禄司さんがなぜ、「コウちゃん」なのかやっとわかりました。西村宏で、宏をコウと読みかえたニックネームだったのですね。
まんが偉人物語。これも坂口尚さんがどのように参加していたのか、すでに業界人の人も個人的にファンで調べている方がいますね。
はじめておじゃましてつらつらと書きました失礼をどうぞお許しいただければと思います。

manga-domanga-do 2005/11/20 23:17 さとぴーさん、コメントをありがとうございます。坂口尚をこよなく愛されておられる方からのご訪問は私としても嬉しい限りです。私もあなたのサイトには、彼を思い出すために時折り伺っております。こちらこそ感謝です。ここにアドレス入れちゃいますね。好漢・坂口尚をより知っていただくために。
http://homepage3.nifty.com/stp/sakaguchi/
「偉人物語」と彼の関わりは、実際のところラインナップまでは調べられても、それ以外はおそらく分からないでしょうね。私だけが知っている…なんて(笑)。

noraneko22noraneko22 2005/11/21 22:26 こんばんは。
「ノラネコの呑んで観るシネマ」管理人のnoraneko22です。
「日本昔ばなし」の記事へのコメントありがとうございました。
私も映像業界で仕事をしていますので、大先輩に拙い記事を見ていただいてお恥ずかしい限りです。
私も漫画やアニメーションの歴史は大好きで、いろいろ本を読んだりしてきましたが、こちらのブログは私の知らない事ばかりで、とても興味深いです。
今度じっくりと、最初から読ませていただこうと思っています。

manga-domanga-do 2005/11/22 01:18 いえいえ、なかなか真面目な評論でしたので、素通りは失礼かと。これからは私も時々お訪ねさせていただきます。