【第6回】 2008年07月15日
オバマを正当に評価できない差別の国ニッポン
アメリカの人口の白人比率は約7割に達する。そのアメリカが今、白人以外の候補者に国の命運を託すべきかどうかを考えている。選挙戦の当初は人種の観点からオバマ候補をネガティブに見る意見もあったが、今ではすっかり退潮してしまった。むしろ史上初の黒人大統領の誕生を望む声が数多く聞かれるようになった。
もはや人種は争点ではない。候補者の人格、政策、信条、カリスマ性、年齢、経験等から今のアメリカの大統領としてどの候補者が最適かを真剣に検討しているのである。オバマ、マケイン両候補者がテレビに映らない日はない。さまざまな政治評論家が、主要争点に対する両候補者の主張を紹介する。最近では、主張の一貫性、正直さ、パフォーマンスの巧拙、性格的な弱みまで解説している。
大統領選挙までまだ4ヵ月もある。この期間を通じて、有権者はどちらが今の米国に最適な大統領であるのかの判断を固めていく。11月の本選で、オバマ候補が勝つことがあれば、それは選ばれた大統領がたまたま黒人であったに過ぎない。
こうした状況の中で突如として出てきた町村官房長官の発言は、非常に違和感があった。CNNを見ていたアメリカの視聴者は、「日本政府はアメリカの事情をまったく理解していない」のみならず、「日本は人種差別をする国なのか」との印象を持ったのではないだろうか。
立身出世の国と
二世議員の国の違い
米国から見える日本のイメージは、小泉首相の退陣以降、急速に存在感が薄れてしまった。今の日本の首相が誰かを尋ねられて、「Yasuo Fukuda」と答えられる人が何人いるだろうか。小泉首相の時代には、日本を改革する首相として「Junichiro Koizumi」は聞きなれた名前だった。経済大国ニッポンの首相がもっと存在感を持った人物でないと、経済の停滞以上に、国そのものが衰退しているように見られてしまう。
議院内閣制をとる日本では、首相は最大与党の党首が就任する。議院内閣制も民意を反映させるひとつの方法であるが、国民が首相を直接投票して決めるわけではない。安倍首相が自民党内で党首に選ばれ、首相に就任したあとで、国民は安倍首相の「人となり」を身近に知ることになる。国民はこの人が本当に首相として相応しいのかに疑問を持ちながら過ごす。福田首相の場合も同様だ。
第6回 | オバマを正当に評価できない差別の国ニッポン (2008年07月15日) |
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安藤茂彌
(トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO)
1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。 VentureAccessホームページ
シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。