◎全国一斉休漁 漁業の構造改革も待ったなし
石川、富山県を含む全国の漁業者による一斉休漁は、燃料費の補てん措置などを政府に
求める大規模な抗議行動といえる。漁業経営は全経費に占める燃料費の割合が高く、競りで魚価が決まるためコスト増を価格に転嫁するのも難しい。異常な原油高で最も深刻な影響を受けているのは漁業であり、一斉休漁やデモなどで決起せざるを得ない心情は理解できる。
実際、石川、富山県でも廃業が相次ぎ、地域によっては漁業が一気に衰退する恐れも出
ている。原油高で他の産業でも経営が圧迫される中、政府が漁業の直面する危機に対してどこまで特別な事情を認め、緊急性を判断するかが救済策のかぎを握ることになろう。
一斉休漁は漁業の苦境を国民に訴え、理解を促す意味はあるとしても、それだけで窮状
を打開することはできない。深刻さを増す漁業の中で前向きな材料を探すとすれば、効率的な操業を組織ぐるみで探る動きが出始めたことであろう。仮に補てん措置が実現したとしても急場しのぎに過ぎず、燃料費に経営が振り回されやすい体質は改善しない。漁業を将来にわたって持続させるには構造改革も待ったなしである。
燃料費高騰を受け、石川県漁協では能登に拠点を置く五支所が通常の休漁日のほか、一
カ月で一日ずつ輪番で休漁する。富山県漁連でも同様の取り組みを実施する。それぞれ稚魚の放流も行い、資源回復を目指すのが特徴だ。
石川県漁協では九月から金沢、金沢港、加賀、輪島の四支所で省エネ操業の実証事業に
も乗り出す。漁場確保のため速度を上げて出漁するなど競争の弊害も指摘されてきたが、一県一漁協となった今は操業方法で一定のルールを設けるなど漁業の共同化に取り組む環境も整ってきたのではないか。
燃料費高騰は見方を変えれば、高コスト体質からの脱却を漁業に迫っているといえる。
一斉休漁を抗議の意思表示にとどめず、漁業の構造改革に踏み出す大きな一歩にしなければなるまい。消費者もまた、漁業を取り巻く厳しい現実や、ふだん口にする魚食に思いを寄せる契機にしたい。
◎「竹島は日本の領土」 解説書「明記」当然だろう
日韓双方が領有権を主張し、韓国が実力行使で占拠している島根県の竹島(韓国は独島
と呼称)が、中学校の新学習指導要領の社会科解説書に日韓に主張の相違があることに触れ「日本の領土」として明記されることになったのは正当な措置である。
竹島の帰属について、日本は国際司法裁判所への提訴を試みたが、裁判に必要な韓国の
同意を得られず、裁判での決着ができなかった。提訴は韓国にとっても正当性を述べるチャンスだった。応じなかったのはなぜか。自国に不利と判断したと想像せざるを得ない。こうした経過からすると、「固有の領土」という表現を避けるなど、指導要領の解説書の記述の歯切れが今一つとなったのはやむを得ないと思う。
竹島の領有権をめぐる争点は難しいものではない。かいつまんでいうと、韓国側の主張
は以下の四点である。▽韓国が事実上、日本の支配下に置かれた一九〇五年、もともと韓国領だった竹島は一方的に日本の領土に編入されたもので、国際法上無効だ▽太平洋戦争後、連合国が日本を占領したとき、竹島がマッカーサー・ラインの外側に置かれたのは韓国の主張を認めたからだ▽竹島は韓国で「独島」の名で古くから知られていた▽「独島」は李王朝時代の古文書で「干山島」または「三峰島」と呼ばれていた。
日本の主張はこうである。▽日韓併合は一九一〇年。それ以前である一九〇五年の竹島
の島根県編入は国際法の手続きを踏んでなされた▽マッカーサー・ラインは領有権の分離ではない▽韓国は竹島の日本編入以前に自国の領土だったことを立証していない▽韓国の文献に「独島」の名が出てくるのは一九〇六年以降にすぎない▽「干山島」「三峰島」は別の島、ウルルン島のことである▽徳川幕府は三代将軍家光の時代、米子の町人の大谷、村上両家に竹島の支配を許した。
本来は争う余地のない問題だが、戦後の東アジアは極度の緊張下にあり、それが絡んで
複雑化した。韓国は既成事実化よりも国際裁判による決着に応じてほしい。