おかげさまで、「レコード手帖。」は毎日更新。昨日、今日と、とりわけ僕も楽しみにしている執筆者のコラムが続きます。原稿のファイルを開き、更新作業は粛々と。零時を過ぎ、改めてひとりの読者になれば、黙々と。僕はたいへんなしあわせ者です。
昨日更新しました、須永辰緒さんによる人気連載。その本文の第一段落からすこし引用させていただきます。
『DJは裏方なのです。お客さんをいかに気持ちよくさせてあげられるかに一番の神経を使わねばなりません。』
DJでこそありませんが、一介のプロ歌手として、そしてレコード屋として、表現を続けている僕にとって、これは至言でした。そして、アマチュアながら、このサイトをはじめ、各所で文章を書いている立場、としましても。
以前から、複数の友人に、「(前園のレコード屋は)普通のレコード屋と違ってアーティストらしい視点でセレクトされている」という指摘をもらっていたのですが、僕は正直、「アーティスト」としての自覚が希薄なままに、やってきたところがありまして。
それは歌手としても同様で。すなわち、「音楽が好きなら、レコードが好きなら、こんな曲を書くヤツがいてもいいだろう、こんなふうに歌うヤツがいてもいいだろう、そして、こんなレコードを仕入れて、こんな売り口で捌くヤツがいてもいいだろう。」そんなふうに、音楽好きなリスナーとして、或いは、レコード(屋)好き、としての希望から出発し、半ば己のセンスとスタンスを省みることもなく、ひたすら実行してきた「だけ」のような気がします。
こういった視点/スタンスを全否定して、ただビジネスとして音楽をドライに捉えよ、なんて自己ディレクションが作動することはありませんが、それにしても、プロフェッショナルとして生きていくのなら、己を見つめ直さねばならない――今年になって、そんな季節がようやく僕にも到来、真剣に考えなければ明日も見えてこない、そんな状況にあります。マエゾノナオキ、お前はどんな人間で、どんなアーティストで、どんなレコード屋なんだ。
なにをお前は突然、こんなところで恥ずかしげもなく懺悔のようなことを始めて。。いや、僕は自分のことがひじょうに恥ずかしい。
個人的な話が過ぎて、甚だ恐縮しているのですけれど、とにかく、上記引用箇所、須永辰緒さんのコラムにみた言葉に突き動かされている次第です。
須永さんには、先日のオルガンバー「レコード番長」にてお会いすることが出来てたいへん光栄でした。須永さんが「レコード手帖。」にて綴りゆく経歴・事実の凄味はもちろん僕に多くの興奮とスリルを与えてくださっていますが、読後に染み出してきたメッセージを拾っていくことも、毎回ほんとうに楽しみにしています。
それは今日の「レコード手帖。」執筆者、斉藤嘉久さんのコラムにおいても、然り。今回のものなどは、特に僕と同じ世代の人に、何度も読んでいただきたいコラムになっております。
ほかの執筆者の、過去のコラムだって。例えば、大江田信さん。平林伸一さん。akikoさん。中村智昭さん。濱田高志さん。僕がこうして考えを巡らすことが出来ているのは、ほんとうに皆さんのおかげなのです。そして、具体的に、これからどんなふうに活動していこうか、ということを最近、小西康陽さんと一緒に考えています。
この「おはようございます。こんにちは。こんばんは。」のテキストは1日で消えていきますが、「レコード手帖。」は毎日、バック・ナンバーとして蓄えられていきますので、よろしければ、時には皆さんも、読み返してみてください。
それでは、今日も、ありがとうございます。
(前園直樹)