米国人がこよなく愛するビール「バドワイザー」がベルギーの大手インベブに買収されることが決まり、ファンの間には「米国が歴史の一部を失った」とのショックが広がっている。
バドワイザーのメーカーである米最大手アンハイザー・ブッシュは13日の取締役会でインベブからの買収提案受け入れを決め、両社共同で正式発表した。合併により、世界最大のビール会社が誕生する。
「ある意味でわが国の歴史の一部を失った」と語るミズーリ州セントルイス郊外のフィリップ・マクレリーさんは14日、「このニュースを聞いた時も自宅でバドライトを飲んでいた。飲み終えることさえできなかった」とショックが覚めやらない様子。
バドワイザーは「アメリカの歴史の偉大なる一部」だと言うミシシッピ大学の学生P・J・チャンピオンさんは「かつてはバドワイザーを飲むのが誇りだった。でももう誇りに思えない」と肩を落とす。
マクレリーさんはチャンピオンさんの思いを歌にして、動画共有サイトのユーチューブと、バドワイザー買収阻止運動を展開していた「SaveBudweiser.com」のサイトに掲載した。この歌には「アメリカは売り物じゃない、この国のビールもだ。働き者のアメリカ人よ立ち上がれ」という歌詞が付いている。
もっとも、米国人のこのような憤りは予想していたと、アトランタの大学でビール学を教えるビールソムリエのマット・シンプソンさんは言う。「製品や値段に影響が出ない限り、いずれはみんな忘れてしまうだろう」
インベブも、世界で最も売れているビールであるバドワイザーとバドライトを変えるつもりはないと表明している。カルロス・ブリトー最高経営責任者は「バドワイザーは今後も同じビール工場で、同じ人たちにより、同じ作り方で製造される」との談話を発表した。