サポーターからの苦言
参加者からの発言では,グリンピースのサポーターからの苦言もあった。グリーンピースの活動にゆとりや紳士的な姿勢を感じフェアーな活動をする会と思っていたが、今回の鯨肉の件に関して「すごくセンセーショナルな形でなさっている」と言い、窃盗には当たらないというけれど長く見つめ続けてきたグリンピースに、「それはちょっとないだろうという思いと、つまずく気持ちがある」と述べた。その点で釈然としていないといい、それをどう語るのだろうか聞きにきたと言う。
民主主義を発展させた非暴力直接行動の積み重ね
これに対し星川淳・事務局長は、「実は僕自身も釈然とはしてないんです。今回のやり方に問題がなかったかといえばたぶんあると思います。僕が知っていればやらせませんでした」と言う。しかし、科学の観点からとしていた調査捕鯨で、こんなひどいことが行われていたことに対する担当者の憤りがやらせたのだとその背景を説明した。
グリンピースを紳士的と言うのはうれしいが、グリンピースだけでなくいろんな市民運動やNGOが法律を絶対破らないかというとそうでもなく、例えば,軍事基地の反対運動で著名人を含めて何百人もの市民が、意図的に基地内に侵入して大量逮捕されるという形で、一般社会に問題をアピールする活動も世界中で行なわれている。その部分だけをとれば不法侵入で逮捕となるが民主主義国家の場合たいてい一晩くらいで釈放になる、と先進国での不服従の運動について語った。
非暴力直接行動
日本へのMOX燃料輸送阻止を試みて海軍と警察に拘束されたグリーンピース・フランスのスタッフたち
(右下で腹這いにさせられている)
よく知られているように、グリーンピースの活動形態には、市民の反対が大きいにもかかわらず政府や大企業が強引に進めていることを物理的に止める直接行動がある。この場合も生命身体を傷つけたり物を破壊する暴力的なことはしない大原則があり、これを非暴力直接行動という。
今回のことも非暴力直接行動のひとつの形で、歴史の中ではこうしたことの積み重ねで市民や国民の権利が拡大され民主主義が発展してきたという経過があるが、これが日本では通用しないと星川さんは強調した。
判例が維持されれば窃盗にはあたらない
逮捕された2人のスタッフが起訴されたことで、ステージは裁判へと移る。7月2日「くじらどうなの?公開討論会」で池田香代子さんは、「私は今回のことをいい方向にもっていくことができると思います。裁判が始まれば窃盗要件が争われるが鯨肉をどのように処理したかということが裁判の中で明らかになる。ですから裁判が大切です」とのべ、「裁判の過程でも私たちの発信の仕方が大切になっていく。一人ひとりが発信をしながら、裁判を良い方向に持っていければいいと思う」と語った。
裁判になった場合について、只野靖・弁護士は「不法領得の意思
(前回記事参照)が必要だというグループの考え方と、必要ないというグループの考え方があり、学者の中でも大激論が昔の大正4年の判例からある」と言い、もし判例を変えられてしまえば負けだが、判例が維持されればそれは窃盗に当たらないということが十分にありうる、と解説した。
それでは告発の対象になった鯨肉の問題はどうなるのか、と谷岡郁子・参院議員が問題提起。塩漬けの鯨肉が「船員の方の私物だというが、調査捕鯨の結果で持っていた鯨肉ならこの人の私物なのか、だとしたら誰からもらったのか。調査費という形で国が公金を入れてるのだったらこれは国民全体のものであり、私物化すること自身が泥棒じゃないのか? まずグリーンピースの件が窃盗かどうかという問題の前に、そもそも船員さんがこの鯨肉を持ってきたことの告発をするのが先じゃないのか」という。
討論集会に参加した3人の国会議員
左から、喜納昌吉・参院議員(民主党)、谷岡郁子・参院議員(民主党)、保坂展人・衆院議員(社民党)
国政調査権の発動を求める
保坂展人・衆院議員は、今後の対応について「じゃあその(横領)鯨肉はどこに行ったのかなという話ですよね。東京地検にあるのは1箱に過ぎず、200から300kgあるとされる塩漬けの肉は存在したのか否か。水産庁は冷凍肉を土産で配った事実を認めている。塩漬けの肉は、あったかどうか只今確認中ですと私に答えている。そして国際捕鯨条約の規定によれば、無断で鯨肉を持ち去ったり販売することが条約上認められているのか? については認められていない、というふうに答えているわけです」。
そうすると「税金を投下されて、いわば日本を代表する機関(鯨類研究所)が国際世論に抗して続けている調査捕鯨の鯨肉の一部がどうなったのか不明でいっさいわからないということがあってはならない」と言い、これを調査し回答を得ることは国会の仕事だと断言する。この討論集会には3人の国会議員がきているので,共同で調査をかけもっといろいろでてきたら、例えば参議院の決算委員会などで『国政調査権の発動』を求める。今は参議院で与野党が逆転しているので、理事会で承認されて速やかにこれを発動できれば一切の資料は提出されることになる。そこまで持っていけるかどうか問題はあるが、鯨肉流通のアンダーグランドの世界を解明することが一番重要だと述べた。
司会のシキタ純さんが討論会を終えるにあたって、この問題がもっとねじれて行くようであれば公開討論会パート2をやろうと述べ、共同声明の提案を行なった。
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