田辺市と上富田、白浜、すさみの3町が田辺・西牟婁広域連携検討会を設置した。県の2次合併構想に沿った合併について、10月上旬をめどに方向性を出し、広域連携の可能性も検討するという。 平成の大合併は、合併特例法の特例措置が1995年と99年の改正で拡大されたのを機に本格化。全国の自治体数は約3200から約1800になり、県内の市町村も50から30に減った。 合併特例法は、05〜09年度の時限立法(合併特例新法)で継続されており、財政面の優遇措置が盛り込まれている。合併協議会の設置を勧告できるなど都道府県知事の権限も強化された。しかし、1次合併で強力な「推進剤」となった合併特例債はなくなった。 県内では06年2月に、県が2次合併構想として、23の市町村による6つの枠組みを提案したが、そのうち4件が相次いで断念する意向を表明。「田辺市と上富田町」「白浜町とすさみ町」の2つの枠組みだけがまだ結論を出しておらず、関心が集まっている。 この中で、住民に合併の是非を問う具体的な取り組みをしているのは、いまのところ上富田町だけ。10月までに他の自治体でどれだけの取り組みができるかにも疑問符がつく。「物理的に無理」とする見方が当の自治体や議員の間にも広まっており、検討会が形式的なものになる可能性もある。 検討会の設置を呼び掛けた西牟婁郡町村会事務局は「法期限が迫る中、皆さんに分かるよう、意見を示せる場が必要と判断した。今後必要となる広域連携と一緒に話し合う」と説明。会合を月1回は開きたいとしている。 検討会に参加した自治体の財政は細る一方。国からの交付金は年々減っており、合併してもしなくても運営は厳しい。いままで以上に行政の効率化、合理化を進めていくには、広域連携が求められるケースが増えてきそうだ。 昨年9月、県が上富田町で開いたシンポジウムでも、首長らが行政の効率化と住民サービスの維持・向上を図る手段として、広域連携の必要性を強調している。 実際、広域で連携する必要性のある行政課題は多い。例えば白浜町市鹿野地区へは、日置川地域を経由して救急車両が走るより、上富田町の中心街から駆け付けた方がはるかに早い。小中学校の統合でも町の境界を越えて考えた方がよいケースがありそうだ。一度は統廃合された施設が、広域連携で息を吹き返す可能性も出てくるかもしれない。 事務局は、合併問題が一段落した後も、広域連携については検討を続けるという。歓迎したい。 これまでの行政は、市町村の境界にこだわって、施策が内向きになっていた。本来なら近隣の自治体と協力して進めた方が効率的な消防、医療、ごみ処理、観光行政などについても、協力関係が結びにくかった。新たな発想を巡らすことで、成果を期待したい。 ただ、広域化すればするほどきめ細かな施策がとりにくくなる危険性もある。効率を求めるあまり本来の目的を見失うことがないよう、議会も加わって有意義な施策を打ち出してもらいたい。(O)