医療政策「わが党は、こう考える」
市民主体の医療政策の実現を目指すNPO法人(特定非営利活動法人)「日本医療政策機構」は、主要政党の厚生労働分野の担当者に実施した2008年度「政党インタビュー」を発表した。主に、医師不足対策、後期高齢者医療制度への対応、医療財源の確保など、医療政策の重要課題についての各党の見解を紹介している。
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インタビューには、自民党の衛藤晟一参院議員(党厚生労働部会長)、民主党の山田正彦衆院議員(党「次の内閣」厚生労働大臣)、公明党の渡辺孝男参院議員(党厚生労働部会長)、共産党の小池晃参院議員(党政策委員長)、社民党の阿部知子衆院議員(党政策審議会長)の5人が答えた。
衛藤氏は、今の医療の最大の問題は医師不足とした上で、「医師養成については、過去最大の年間8300人まで増員することに今年度から手を付け、来年度から大幅にアップするよう、厚生労働省から文部科学省に申し込んでいる。7、8年かかるが、医師養成を進めていこうとしている」などとした。
財源に関しては、社会保障費の2200億円の圧縮は困難と指摘。そのための財源では、「消費税に関しては、今の状況の中では国民の支持が十分ではなく、今すぐ来年に向けて上げるという議論にはならない。2、3年のスパンで消費税導入などについても考えるべきではないか」などと述べた。
山田氏は、「弁護士ゼロ(不在)またはワン(1人)地帯に、『法テラス』という制度をつくり、国からお金を入れて弁護士を雇い、離島やへき地に送っているのと同じように、医師にへき地や中核病院に行ってもらう形を取ることなどを考えている」と、民主党の医師不足対策を説明。
財源については、「道路特別会計で毎年5兆9億円。ほかにも空港整備特別会計など公共事業だけで、一般会計を入れて35兆円以上使っている。そういった特別会計の財源を一般会計に入れられるものは入れてしまうなどして、医療や介護をしっかり考えていきたい」などと、道路より「命」に財源を使う必要性を語った。
渡辺氏は、医師不足の影響で地域によっては救急医療の受け入れ不能が問題になっていることを挙げ、「党としてドクターヘリなどの推進を図っている」などと発言。後期高齢者医療制度については、「運用の面でさまざまな課題があり、その改善を図るとともに、高齢者に対する所得保障という面で、年金などを充実させる対応を考えている」とした。
財源では、「まず支出の無駄を排除することを徹底させる。医療費増大の原因の一つに生活習慣病と要介護者の増加があり、(受診が)遅くなって多くの医療費が掛かる。介護保険の費用を多く要することのないように、予防に力を入れていこうと考えている」などと説明した。
小池氏は、後期高齢者医療制度を廃止して、どういう制度をつくっていくかが問われていると強調。日本の医療政策は2つの方向で転換を図る必要があるとして、「毎年2200億円の国庫負担の自然増を抑制する社会保障の抑制路線と、医学部定員を減らし続けてきた閣議決定を撤回し、医師を増やす方向に転換すべき」と指摘した。
財源では、「日本の医療費は、サミット参加国で最低。国民医療費は1980年と2005年との比較で、国庫負担の比率が5%減り、事業主負担が4%減っている。これを戻すため、国庫負担を引き上げていく」などとした上で、「国庫負担の財源としては、消費税ではなく、7兆円規模の大企業・大資産家の減税を戻すのが先決」などと主張した。
阿部氏は、1980年代前半に厚生省(当時)が出した「医療費亡国論」ではなく、「医療費立国論」に立つべきとし、「これからの少子・高齢社会をどう生きていくかという時に、医療ほど多くの可能性を秘めている分野はない。大きな飛躍を遂げる時期だと思う」と訴えた。
財源に関しては、これ以上は絞り込めないとして後期高齢者医療制度が出されたと指摘。「国民皆保険制度の破壊で、『命の平等』や社会で一番大事なものを忘れた政策。『医療立国』にするため、どの分野に芽があるか。政治がどう答えを出せるのか。それが今の時代だと思う」などと、医療政策を国としてきちんと位置付ける重要性を語った。
詳細は、同機構ホームページで。
更新:2008/07/15 19:12 キャリアブレイン
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