使用楽曲
「ラップは漢の魂だ!己を信じて天を指差す怒涛の男・カミナ様のテーマを耳の穴かっぽじってよ〜く聴きやがれ!!」
今回の企画があると聞いて、やりたいって言ったのは、原画が思う存分描けそうだからですね。その前にやっていた自分の監督作品とかでは忙しくてあまり原画が描けなかったというのもあったし、それに原画マンの気分になって考えると、作画監督チェックや演出チェックってストレスなんですよ。今回はそういうのがなくて伸び伸び原画が描けるっていうことだったから、それはやらない手はないだろうって。
最初はカミナを主人公にしたものを考えていたんですよ。それで俺の考えている本物の男の生き様をちゃんと描きたいなと。でもカミナというキャラクターをちゃんと描こうとするとPVの尺ではどうにも足らない。ところがギミーを主人公にしたら、わりとスルスルッとできてしまった。ギミーは子供ですけど、ちゃんと一人前の男のつもりで描いてるんですよ。
ギミーは全裸で登場して、カミナのマントとかいろいろとアイテムをゲットしていくんですけれど、股間を隠そうとはしていないですよね。これは描きながら気付いたんだけれど、これはつまり、自分一人でやっていこうと思ったら、着飾ったりするとかそういうことじゃなくて、素の自分自身――つまり裸で勝負するしかないってことなんですよ。これはずっと自分にとって大きな問題で考えていることが無意識のうちに出たんですね。
たとえば大会社でアシスタントみたいな仕事をしてる人と、小さい会社でそれでも自分の仕事と呼べる仕事をしている人を比べたら、俺はやっぱり後者のほうが立派だと思うんですよ。だからどんなにマントとかゲットしても、自分が自分であることを隠そうともしない、ギミーをそういうキャラクターとして描きたかったんですよ。
ギミーの武器が指だけ、というのも同じことです。あれはつまり、自分の武器なんて、しょせんは1つだけなんだっていうことですよね。だけどその武器って、案外巨大なもんでも相手にできるよっていう。最初はギミーがグレンラガンを乗っ取っちゃう展開も考えていたけど、それは途中で「いや、違うな」って。最後まで指1本でいいんだ、って考え直して。
だから最後も単なる夢オチというよりも、夢から覚めても、現実でもやっぱり素っ裸で、やっぱり自分の武器である指1本はちゃんとあるんだから、もしかするとグレンラガンだって倒せるかもよ、ってつもりなんです。分かりづらいかもしれないけど、何回か見てもらってそういう部分を感じてもらえればとは思いますね。
原画作業は日曜日にやったんですよ。日曜返上でも全然惜しくない、というか本当に楽しかった。こういう仕事は、ガイナックスならではで、ガイナックス以外ではありえない仕事でしたね。だからそこはすごく感謝しているし、ああ、面白い仕事だったなって今も思っていますね。(談)
(プロフィール)
いたがき・しん
主な仕事に『砂ぼうず』(副監督)、『BLACK CAT』(監督)、『Devil May Cry』(監督)など。『天元突破グレンラガン』では第6話の絵コンテ・演出、第7話の絵コンテを担当。
(C)GAINAX・中島かずき/アニプレックス