消費不況の足音がひたひたと近寄ってきている。百貨店、大手スーパー、外食の業績が軒並み悪化。とどまるところを知らない物価高騰で、消費マインドの冷え込みが鮮明になってきた。
低迷が続く百貨店業界の数字は厳しい。08年3―5月期の連結業績は減益のオンパレードだ。大丸と松坂屋が統合して昨秋発足したJ・フロントリテイリングは、営業利益が14%減。西武百貨店とそごうを運営するミレニアムリテイリングは15%減、高島屋は7.9%減、店舗改装に踏み切った松屋にいたっては74.5%減だった。
イオンは20%の営業減益で、10年2月期までに総合スーパーの約1割に当たる40店を閉鎖する。外食はサイゼリヤやロイヤルHDが減益。米国の本家が大リストラを発表したスターバックスジャパンは、08年3月期決算は増収増益だったが、2月以降、既存店の売上高が4カ月連続で前年割れだ。
明らかに消費者の生活防衛が強まっている影響だ。さすがに内閣府の統計でさえ、消費者心理の基調判断を8カ月連続で「悪化している」とし、先行きについても「好転する要因はない」としている。
不動産不況の深刻化が騒がれるなか、GDPの約6割を占める個人消費の落ち込みが進んだら大変なことになる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミスト内田俊宏氏がこう危惧する。
「自動車関連の外需好調で潤ってきた名古屋圏でさえ、百貨店売り上げは7カ月連続でマイナスです。ガソリン、食料品の高騰で、それ以外に回すお金が確実に減っている。ブランド品、衣料品の落ち込みはその象徴です。問題は、この先。輸出環境が好転する兆しが見えないうえ、株価も低迷です。住宅関連も冷え切っている。景気後退局面に歯止めがかからない状況です」
しかも、頼みの米経済も個人消費にかげりが出ている。
「戻し減税効果で低価格を売りにしたチェーン店各社は売り上げを伸ばしましたが、百貨店や衣料品店は苦戦続きです。新車販売の落ち込みも深刻だし、ダウも再び暴落している。先行きに明るい展望はありません」(経済ジャーナリスト)
「日米同時消費不況」という最悪のシナリオが現実になりつつある。
【2008年7月12日掲載記事】