旅行

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

しずおか・バスゆらり旅:寸又峡 秘境の橋で願懸け /静岡

 以前、この企画のバス旅で出会った横浜在住の女性が「静岡に来たらぜひ行ってみたかった」と言っていたのが寸又峡。秘境の温泉、つり橋……。夫婦旅行の様子を話す表情を見て、「次に行くならここ」と決めていた。

 大井川鉄道の千頭駅前からバスで約40分。山深い静かな温泉地だ。温泉街の奥にある遊歩道を約30分歩くと、下につり橋が見えてくる。深緑の中、エメラルド色の川にかかるのが「夢の吊(つ)り橋」だ。大間川と寸又川の合流地点にかかり、高さ8メートル、長さ90メートル。

 1人分ほどの足場しかなく、汗が引いていく。金網でカバーされているとはいえ、下は見られない。そして、揺れる。だが真ん中まで来ると、悠々と流れる川と、取り囲む寸又峡谷の緑の風景に息をのんだ。冷たい風が吹き抜けて気持ちいい。

 渡り終えた地点にはこうあった。「吊り橋の真ん中で若い女性が恋の成就を祈ると夢がかなう」。当日は、雨が降った後のせいか少し川が濁っていたが、きれいなエメラルドグリーンなら、橋に願を懸けると夢がかなうという。引き返す橋の上で、必死で祈った。

 汗をかいた体を町営露天風呂「美女づくりの湯」で流し、ぽかぽかとして外に出ると、「なつかしいパチンコ台あります」の張り紙。店内には30~40年前のものという約30台のパチンコ台が残っていた。看板の「さくら園」という店名も字が読めないほど古くなっている。手動で打つタイプで、景品も駄菓子。遊び感覚で楽しめる。静岡市に住む会社員、望月隆好さん(60)の父が営んでいた店で、今は望月さんが土日だけ来て開く。店内には望月さんが撮影した奥寸又峡の写真が飾られている。「温泉が始まってすぐに出来た店。今のパチンコはギャンブル性が強いけど、昔は庶民の娯楽。ここでは思い出作りにね」と手作りの観光マップをくれた。見どころや注意点が細かく書き込まれていた。

 ひっそりとたたずむ寸又峡には、土日ともなれば県内外から観光客が訪れる。その歴史を、垣間見た気がした。【望月和美】

==============

 ◇明細書(片道)

千頭駅前-寸又峡温泉 860円

毎日新聞 2008年6月29日 地方版

関連記事

6月29日しずおか・バスゆらり旅:寸又峡 秘境の橋で願懸け /静岡

旅行 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報