通行量は1.5倍、売り上げは3倍になったという。高松市の丸亀町商店街の成功物語は、今や全国モデルである。地権者としての商店主自身による定期借地権方式による再開発は、行政頼みの「活性化プラン」とはひと味もふた味も異なっている。中心となる円形広場はジャズや琴の演奏など、自薦、他薦のパフォーマーによって、半年前からスケジュールが埋まっている。
全国の景況感の悪化が伝えられているが、丸亀町の街角で立っていると、どこの国の話か、といった気分になってくる。地元の人たちは知恵を出すのに無数の調査と議論を積み重ねている。
「生産性向上と地域活性化への挑戦」と題した「中小企業白書」(2008年)を読むと、全国の中小企業と地域の努力が紹介されている。
中古住宅をリノベーションして付加価値をつけてから販売する北海道の従業員11人の会社。建設業全体の落ち込みの中で、建材の卸売り・資材販売を行っている米子市の118人の会社は、管理会計システムのIT化により、営業担当者1人あたり売上高を、1.8倍に伸ばしたという。山口市では、大学と地域の共同で受注生産の衣料品のプロデュースなどを成功させている。
労働生産性は、技術革新や新たなサービスの開発で付加価値をつけるか、設備の切り替えや業務の効率化によって、労働投入量を減らすことで向上する。しかし、労働投入量の減らし方が、「非正規社員」や低賃金で長時間労働という「名ばかり正社員」への代替では意味がない。それでは人材が育たない。
短期的な利益確保ではなく、長期的視野で知恵を絞る人材の育成が会社や社会あるいは地域の礎をつくるのだ。(遠雷)