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社会

ハンセン病問題基本法 成立後に残る課題 

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ハンセン病問題基本法について語る高瀬重二郎さん=岡山県瀬戸内市、長島愛生園

 ハンセン病の元患者が暮らす全国十三カ所の療養所を、地域に開放することなどを定めた「ハンセン病問題基本法」が今国会で成立した。隔離生活を長年強いられ、偏見や差別に苦しんできた元患者は「施設丸ごとの社会復帰」と喜ぶ。一方、兵庫県出身者が多い療養所、長島愛生園(岡山県)の平均年齢は八十歳。高齢化が著しく、地域の協力が欠かせない。来春の施行に向け、元患者は「法への関心が広がってほしい」と訴える。

(中島摩子)

 基本法は議員立法で、十一日に成立。約九十万人の署名が後押しした。隔離政策を撤廃しつつも療養所の利用を入所者に限った「らい予防法廃止法」(一九九六年)に代わり、地方自治体や住民が療養所の土地や設備を利用できるとする。

 兵庫県出身の四十三人を含む三百六十八人が生活する長島愛生園。自治会長の高瀬重二郎さん(85)は「隔離政策がなくなった後も、家族に受け入れられないことや、高齢を理由に、個人で社会復帰できた人はほとんどいない」と語り、基本法を支持する。

 「園では毎年約二十人が亡くなる。残された時間は少ない」。今後、自治体などと協議会をつくり、老人保健施設の誘致などを進めたい考え。しかし、交通が不便な立地など条件は厳しい。

 また、基本法は療養所での十分な医療体制の確保もうたうが、長島愛生園では入所者の約三分の二が看護や介護を必要としているという。

 さらに、元患者が懸念するのが、なおも残る「心の壁」だ。基本法は、「国の隔離政策が被害をもたらした」と明記し、名誉の回復に努めるべきとする。約七十年間を療養所で過ごす加西市出身の谷川秋夫さん(84)は願う。「故郷からハンセン病に対する正しい理解が広がり、この地が愛される島となってほしい」と。

ハンセン病 らい菌による感染症で、皮膚や末梢(まっしょう)神経が侵される病気。視力障害、手足の知覚麻痺(まひ)などの後遺症がある。感染力は弱いが、治療法の確立後も、国の隔離政策や元患者への差別が続いた。2001年、国の隔離政策は違憲とする国家賠償請求訴訟で、熊本地裁が原告勝訴の判決を下した。現在、全国の療養所で計約2700人が生活している。

(6/20 09:56)

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