民主党代表選の日程が決まった。自民党との総選挙決戦を前に、指揮官を決める「予備選」の意味合いは、かつてなく重い。無投票では物足りない。変革のエネルギーを実感させる論争を期待する。
民主党は十四日、結党十周年記念も兼ねたパーティーを開いた。旧民主党など四党が結集したのが一九九八年。偽メール問題などで、しばしば屋台骨が揺らいだものの、政権交代の最大目標に近づいていると言っていいだろう。
昨年の参院選圧勝で与党を過半数割れに追い込み、今年四月の衆院山口2区補選でも勝利。民主党支持率は参院選後も自民党と拮抗(きっこう)する異例の高さを誇っている。
代表選は九月八日告示、二十一日投開票となった。首相候補を決める選挙−。民主党は従来こう位置づけてきたが、初めて現実味を帯びてきている。
執行部は小沢一郎代表の三選で足並みをそろえている。一部幹部は無投票が望ましいと公言する。確かに自民党内には、代表選の激化に伴う民主党分裂を期待する向きもある。敵を利してどうするとの懸念も分からないではない。
しかし私たちは堂々と選挙で代表を決めるべきだと考える。政権を目指す野党第一党が代表選でがたつくようでは、十年たっても寄り合い所帯の弱点を克服できていないことになる。それでは困る。
“有資格者”である鳩山由紀夫幹事長、菅直人代表代行は不出馬の意向だ。他には岡田克也、前原誠司、野田佳彦各氏らの名が挙がる。彼らが出るかどうかは分からないが、無投票は避けた方がいいというのは共通認識のようだ。
小沢民主党は参院選で、農家の戸別所得補償などを打ち出し、経費一五・三兆円は行政の無駄削除で捻出(ねんしゅつ)するとした。前原氏は雑誌などで異論を唱えている。安全保障政策でも小沢氏の「国連絶対主義」に懐疑的だ。それなら、前原氏が出馬したらどうか。
民主党に高い支持率を与える人たちは、こうした論点をめぐる攻防を聞きたがっている。分かりやすい政策論争が民主党の総選挙公約の成熟にもつながる。それが国民の共感を得られるものであれば、安心感を呼び、変革への機運を高めるのではないか。
小沢氏には党支持率が高い一方「小沢首相」待望論が低い現状への打開策も求められよう。摩擦を恐れず徹底的に予備選を活用すべきだ。代表選まで二カ月余。土俵づくりを急いでもらいたい。
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