朝鮮半島は果たして安定化に向かっているのだろうか。疑いと不安を感じざるを得ないのが現実だ。
北朝鮮が提出した核計画の申告書をどう検証していくか。先週開いた6カ国協議の首席代表会合では、検証体制の大枠を決めた。核施設の無能力化と、見返りのエネルギー支援を10月末までに終えることも合意した。検証の手順など具体論は非核化作業部会で詳細を詰めるという。
技術的な検証方法や手順は専門家に委ねざるを得ないが、せめて検証日程は決めてほしかった。米政府が議会通告したテロ支援国家指定の解除が発効する見通しの8月11日以前に検証作業を始め、矛盾があれば直ちに指定解除を撤回する構えがなければ、厳しい検証は期待薄だ。
要は肝心の検証問題で多くのあいまいさを残し、対北朝鮮支援の日程だけを明確にしたのではないか。
折から北朝鮮の景勝地・金剛山では、軍の立ち入り禁止区域に入ったとされる韓国人観光客が北朝鮮兵士に射殺される事件が起きた。冷え込む南北関係の新たな難題である。
韓国政府は観光事業を中止するとともに、現地調査を要求した。だが北朝鮮は要請を拒否、「責任は韓国側にある」と逆に謝罪を要求する始末だ。理由はともあれ、貴重な人命を奪った事件である。南北が共同で真相究明するのは当然だ。
世の常識が通じない北朝鮮を相手にどう交渉を進めていくか。拉致問題を抱える日本の立場も厳しい。本来頼りにすべき米国は、ブッシュ政権下での「核」の成果を急ごうと北朝鮮に譲歩を重ねる。北京五輪を控えた中国も北朝鮮問題で波風を起こしたくないのが本音だろう。
日韓の連携に期待したいが、両国間でも竹島(韓国名・独島)を巡る対立が浮上。文部科学省は14日、中学校の新学習指導要領の解説書で、「我が国の領土・領域」として竹島に言及すると発表した。
竹島は日本の領土である。領有権を守る大原則は譲れないが、日本側は「韓国との主張に相違がある」との表現を盛り込み、韓国側に配慮した。竹島を巡る対立を大きな政治問題にしないよう、日韓政府の努力を望みたい。日韓対立の激化は北朝鮮を喜ばすだけである。