関西テレビKTV NEWS/スーパーニュース アンカー スーパーニュースアンカー
関西テレビKTV NEWS/スーパーニュース アンカー
番組バックナンバー
目次 > 2008年7月14日放送の番組バックナンバー


特集/「奈良妊婦死亡 遺族の取り組み」
おととし8月、奈良県の大淀病院で起きた妊婦死亡事故。
夫・高崎晋輔さん「子供の顔も一回も見れてない」
出産中に脳内出血を起こした母親は、19の病院に受け入れを拒否された末、死亡しました。深夜0時過ぎに、激しい頭痛を訴えて意識を失った実香さん。主治医は、痙攣発作が起きる「子癇」と診断し、CTなどの検査は行いませんでした。脳内出血が見つかったのは、大阪の別の病院に運ばれてからでした。

大淀病院の会見「結果から見れば判断ミスがあったと考えております」
主治医は最善を尽くしてくれたのか。
妻の命はどうしても救うことができなかったのか。
高崎さんは病院に説明を求めましたが、2度の話し合いのあと、対話は途絶えました。
病院から送られた文書「説明会の開催はお断りいたします。担当者への個人攻撃になる可能性が極めて高いからであります」
夫・晋輔さん「隠されてるというか、話するのも拒否されるというのは何か隠されてるんじゃないかと、どんどん不信が大きくなってきて」

真実を知りたいと願う遺族に残された道は、損害賠償を求める形での裁判しかありませんでした。晋輔さんは「診断ミスが実香さんの死亡につながった」として、去年、主治医らを相手取り提訴。幼い奏太君も裁判の原告になりましたが、そこに待っていたのは、医療界の冷たい現実でした。
病院側の答弁書「子どもを救った人(医師)に対し、命を救われた子供が、母親を救わなかった判断は誤りだと主張している。原告らの誤った認識、誤った主張に対しては、医療界を挙げて断固正していく」
いつの間にか、遺族と医療界の対立の構図ができあがっていたのです。
対立の構図は、裁判以外の場でも遺族を苦しめました。医療関係者専用の会員制サイト「エムスリー」。その掲示板に、遺族を誹謗・中傷する書き込みが飛び交ったのです。
掲示板の書き込み「治らなかったら文句言う。医療はこんな単純なことではないはずです」 「国民が悪いのです」 「この夫には、妻を妊娠させる資格はないッ!」

さらに、実香さんのカルテ情報までもが流出。書き込みは一般のサイトに転載され、遺族の目に触れることとなりました。
義父・憲治さん「自分の立場に置き換えるとか、そういう考え方できないんですかね。その人たちにも守るべき家族や愛する人がいるはずなんだから」
晋輔さんは、つらい思いを抱えながら、患者と医者のあるべき姿を探ってきました。裁判と併行して、医学生などに向けた講演活動も行っています。
晋輔さん「転送先の先生はすごい熱くて、助けてくれるっていう勢いが、必死さが伝わってきたんですね。結果的に亡くなりましたけども、全員その先生には感謝してますし、今でも…」「誰でも優しく握れる手、そんな手を持ってるお医者さんになってほしいんです」

先月、一人の医師が、高崎さんとともに取材に応じました。
40歳代の男性医師「僕自身もちょっと軽率だったなと思います」
「この夫には妻を妊娠させる資格はない」と書き込みをした医師です。医師は侮辱罪で、罰金9000円の略式命令を受けました。
医師「医療関係者全体に、あるいは介護とか療養とかも含めて、やっぱりこう鬱積したような感じはここ数年で強くなってるのがあるんじゃないかと」「どこからかはわからないけれども、(掲示板が)だんだん何かこう鬱憤晴らしみたいなふうな話になっちゃったんで」
憲治さん「こういう医療のトラブルがあったときでも、やっぱり患者と医師がしっかり向き合って話し合えば理解しあえるものだっていうふうな、きれいごとかもしれないけれども、僕はそういうことを信じたいと思ってるんですよ」
医師「病院ってわかりづらい言葉が飛び交うところなので、丁寧に説明して差し上げても、非常にやっぱりあの、怒られる方もあるし、なかなかそのへんは難しいかと思います」
憲治さん「対立軸を置いて見てるわけじゃ決してないんです」「でもあの行為そのものというか、ああいうことは世の中からなくしたい。私もそう思うし、先生もよくなかったと思うのなら、一緒になくすような形で何か活動できたらいいなと思ってるんですけど」
医師「だから今日から、あるいは明日から、何か具体的にこうしますというふうにはなかなかできないですけれども、自分にできることから、診療を続けていきたいなと思ってます」
カルテを流出させた医師もまた、今月、謝罪に訪れました。

「母親の命の意味を息子に伝えたい」、そう願う晋輔さんを周囲も支えてきました。しかし、母親の柔らかいぬくもりだけは、教えることが叶いません。
奏太君「ママ〜!」

迎えた、きょうの証人尋問。争点となるのは、「脳内出血をもっと早い段階で診断していれば、命を救えたかどうか」。あの日、現場にいた内科医と主治医が法廷に立ちました。
当直の内科医「CTを撮るよう助言しましたが、主治医に『動かしてはいけない』と言われました」
主治医「CTを助言された記憶はありません。いろいろな検査は必要だと思いましたが、まずは高次の病院に搬送して、処置した方がいいと考えました」
晋輔さんはつらい記憶をたどり、証言台で語りました。
晋輔さん「『大丈夫です、しばらく様子を見ましょう』という先生の言葉を信じて待っていました」「意識がなくなった0時過ぎの段階で、早く検査して何とかしてほしかったです」
あの日の真実は法廷で明らかになるのか。「母親の死はムダではなかった」と奏太君に伝えられる日まで、晋輔さんの道のりは続きます。
2008年7月14日放送

戻る



Copyright(c)2006 Kansai Telecasting Corporation All Rights Reserved.関西テレビ