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【ゆうゆうLife】医療 勤務医が辞める理由(上) 厳しい労働に評価低く (1/3ページ)
■厳しい労働に評価低く
全国の病院が医師不足にあえぐなか、医師増員の必要性が指摘されています。しかし、1人の医師を育てるには長い時間がかかります。「まず、医師が何を求めているかを知るべきではないか」との声が上がっています。(北村理)
「大学病院をやめて、開業しようかと考えてます」。ある地方大学の病院勤務医(40)は言う。
同じ診療科の同期生らは、多くが開業した。開業した仲間の年収は勤務医時代の2、3倍。開業医が休みを取れ、外車に乗るのを横目に、この勤務医は「医師不足に悩む地域医療のため」と、踏ん張ってきた。
大学病院では現在、月5回の当直がある。子供が生まれたばかりだが、休日は月に2、3日取れればよい方。年収の総額は1000万円と、勤務医の平均レベルだが、収入の半分以上を他病院での非常勤の外来などが占め、不安定だ。
このまま勤務しても、大学病院での給料の伸びは見込めず、退職金もない。教授ポストをめぐる医局の人間関係の煩わしさや、日々の業務の精神的負担を考えると、時間の喪失感を覚える。「今後は患者さんにじっくり接し、患者さんの喜ぶ顔が見たい」と言うが、現状は研究も臨床も中途半端で、将来に不安を感じるという。
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医師には一般に“高給取り”のイメージがあるが、日医総研のデータによると、勤務医の収入は決して多いとはいえない。しかも、医師が一人前になるには、長い時間と費用がかかる。この医師は6年の医学部教育を終え、医師免許を取り、30代半ばまで大学院や留学先の研究施設などで研鑽(けんさん)を積んだ。医療が高度化、多様化する今は、なおさらこうした機会が必要だ。