島根県の医師招聘、情報提供に重点
島根県では現在、県内の医療機関で勤務する即戦力の医師を大々的に募集している。医師確保を担当する健康福祉部医療対策課医師確保対策室が重視しているのは、地域事情などに関してできるだけ詳しく情報提供すること。実際に生活することになる地域についてよく知ってもらった上で、長く勤務してもらうのが狙いだ。同室では、「島根は住みやすい所。まずは地域の状況をよく知っていただいて、地域医療のために力を発揮してほしい」と呼び掛けている。
■費用は県が負担、地域視察ツアー
医師確保対策室によると、島根県の人口10万人当たりの医師数は263人で、全国平均の218人を上回っている。ところが、二次医療圏単位で全国平均を上回っているのは、7圏域のうち出雲、松江、益田の3医療圏。典型的な医師偏在地域だ。 新医師臨床研修制度がスタートした2004年以降は、大学による医師引き揚げの影響で、勤務医不足に拍車が掛かった。
特に離島、中山間地域や、産科、精神科など特定の診療科の医師不足が、より深刻になっている。
こうした中、県が04年にスタートさせた医師確保対策事業は、▽島根で働く医師を呼ぶ(勤務医の招聘=しょうへい=) ▽島根で働く医師を育てる(医学生と研修病院支援) ▽島根で働く医師を助ける(「しまね地域医療の会」の開催など)―の3つが柱。地域で勤務する医師を長期的な視点で育てつつ、医師不足解消という喫緊の課題に対応するため、即戦力の勤務医を県外から確保しようという試みだ。
県外の医師から連絡があれば、専任の担当者(医師)がすぐに全国各地へ出掛け、勤務条件、地域の状況などさまざまな相談に応じている。
また、県内での勤務を検討している医師とその家族を対象に実施する「島根の地域医療視察ツアー」も特長の一つだ。ツアーは、具体的に情報を提供することで、地域の雰囲気や医療事情に関するイメージを持ってもらうのが狙い。費用は、2泊3日(2人)分までを県が負担する。
視察先のプランは、応募者の希望を踏まえて医師確保対策室で組み立てて提案する。例えば隠岐島を希望する応募者には、病院や診療所の視察に島めぐりを組み込んだプランを提案する、といった具合だ=例=。
医師確保対策室の木村清志室長は、「せっかく赴任していただいても、定着できなかったら双方にとって不幸なこと。島根県内での勤務を検討してくださっている先生方には、不便なところも含めて地域の実情を事前に知っていただきたい」と話している。
■勤務医のフォローにも注力
また、医師確保対策室では「しまね地域医療の会」も開催している。島根県内の公立医療機関を中心に、島根の地域医療を支える医師で構成され、地域医療研究・研修などの推進、交流・親睦を目的にしている。
木村室長によると、しまね地域医療の会の開催は、卒業後に出身都道府県で地域医療に従事することが事実上、義務付けられている自治医科大出身の医師や、地域の医療機関で働く有志らへのいわばフォローアップ対策。これまでには、呼び掛けに応じてせっかく来てくれたものの、地域になじめずに去って行ったケースもある。県内で勤務する上で障害になりかねない要素を早期に取り除き、定着率の向上につなげるのが狙いだ。
年に2回開く会合には、地域医療を支える医師40人程度と、医師確保対策室からもスタッフが参加。行政サイドとして対応できる問題があれば、すぐにでも施策に反映させる。木村室長は「ざっくばらんに指摘していただかないと意味がない。問題があれば、どんどん出していただきたい」と話す。
同室によると、「島根の地域医療視察ツアー」に06、07の両年度には計20人が参加。昨年度は、視察ツアーや同室の運営する「赤ひげバンク」を通じての医療機関とのマッチングの結果、医師11人が県内で活躍中という。木村室長は「赴任してくれる先生一人の力で、地域を大きく変える可能性を秘めている。都市部では考えられないことだ。地域医療の発展のために存分に力を発揮してほしい」と呼び掛けている。
更新:2008/07/14 15:40 キャリアブレイン
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