東京都清瀬市に住む島澤さんの自宅は、聞こえない人の暮らしやすさをとことん追求して作られた家。自身は聞こえるが、聴覚障害がある妻、美保さんにとって快適に暮らせる家を作りたいと、4年前現在の家を新築した。
専門の建築家ではないが、「天気の変化に気づかず洗濯物をぬらしてしまった」「別の部屋で子どもが泣いていても気付かない」など美保さんが直面した困難をこまめに記録し、それをもとに建築家と議論を重ね、理想の家を完成させた。
最大の特徴は、一般的に壁で仕切ってしまうそれぞれの部屋をできるだけ壁やドアを取り払いオープンスペースしたこと。そこに「スキップフロア」と言われる段差を付けて空間分けするアイデアを取り入れたことで、それぞれの視線がずれ、互いの気配を心地よく感じながら、安心して自分の時間を過ごすことができる空間が実現した。
さらに、随所にミラーを付けて死角をなくし、天候の変化にもすぐ気づけるよう大きな窓をつくるなど、どこにいても視覚情報が得やすいように配慮されている。
聞こえない人の暮らしを考えた生活用品の開発はかなり進んでいても、暮らしやすい建築についての研究はほとんど手が付けられていない。
聴覚障害者にとっての理想の家とはどの様なものか考える。
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