週刊アクセス
 
 
平成14年7月31日 第119号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
離婚後に残る住宅ローン別れた夫婦直撃
土壌汚染情報開示に向けて
住宅公社の財務実態 新しい会計基準で赤字に
 
     
離婚後に残る住宅ローン別れた夫婦直撃
  (日経夕刊 H14.7.26)  
   かつては愛の巣、今や足かせ――。結婚した夫婦の三組に一組が離婚する中、別れた夫婦が残る住宅ローンに頭を痛めるケースが多くなってきた。不動産市況の低迷が響き売却損を被る可能性が高いためだ。売却できず離婚後も同居するといった事例もある。

 〜中略〜

 「今や住宅は別れた夫婦の不良債権」――。東京家族ラボを主宰する離婚カウンセラーの池内ひろ美さんは断言する。「損を覚悟で売る人はもちろん多いが、売りたくても売れない人々が、家庭内別居を続けるケースも目立つ」と打ち明ける。
 池内さんが相談に乗ったある三十代の夫婦は、マンションの売却額が住宅ローンの残高よりもかなり下回り、多額の差損が出ると分かった。このため、離婚届は出したものの、一緒に住み続けた。おのおのの部屋にカギを付け、居間にロープを張ってお互いのスペースを分けたほか、入浴時間も決めて鉢合わせしないようにするなど異様な状態だったという。

 〜中略〜

 売却を困難にしている理由の一つに、「夫婦共有名義の問題がある」と指摘するのは「はじめての離婚」の著書がある中村久瑠美弁護士。
 住宅を夫婦で共有登記すれば、税金の軽減や優遇措置に加え、妻の持分も明確にできる。共働き夫婦はもちろん、妻が専業主婦でも頭金を出せば共有名義にできるため、共有登記の夫婦は多い。しかし離婚に際しては夫婦の同意なしでは家を売れない点が、意外な足かせになる。

 〜中略〜

 不動産市況の低迷が続く現状では、いったん買ってしまった物件の処理をめぐり、別れた夫婦双方が得をする妙案はない、というのが関係者の一致した意見だ。となると、買う前のリスク判断が重要になる。
 リスクは様々で、夫の失業などもあり得る。もちろん、離婚のリスクもある。離婚問題に詳しい渥美雅子弁護士は「住宅を買う前に、夫婦の間で何かリスクが起こっても住宅ローンを返せるのか、今一度問い直しておくべきだ」と忠告する。

いわせてんか! 上記のようなケースは、我々も相談を受けることがある。夫婦のどちらか一方がその住宅に残るケースにおいて、例えばその住宅に残る方を夫、出ていく方を妻とした場合、その住宅を第三者に貸した場合に得られるであろう賃料を不動産鑑定士の鑑定評価により求め、その賃料相当額のうち妻の共有持分に応じた額を夫が妻に支払うというのが一つの解決方法となりうる。但しこれは、得られるであろう賃料が住宅ローン、固定資産税、マンションの場合は管理費等を上回っている場合の話であり、現実には上記の記事のように住宅は別れる夫婦にとっては単なる不良資産であるというのは偽らざる事実である。
 では一番の解決方法は、離婚しないで済むような配偶者を得ることであろうが、あれだけラブラブだった夫婦が別れたなんて話はよくあることだし、将来の離婚のリスクを正確に計るなんてことは誰にもできない。そもそも隣にいる配偶者と何時まで一緒にいるかすら分からないのに30年とか35年とかの長期のローンを組もうとするのがバクチなのである。





土壌汚染情報開示に向けて
  (日経 H14.7.31)  
   国土交通省は不動産の売り手が土壌汚染の有無を買い手に通知することを義務付ける方針を固めた。宅地建物取引業法を見直すほか、不動産業者が順守すべきガイドライン(指針)を策定する。また消費者が不動産関連の情報をインターネットで検索できるシステムの開発に乗り出す。不動産取引の透明性を高め、土地の流動化を後押しする。
 現行の宅建業法は開発規制や抵当権の有無などの情報開示を義務付けているが、土壌汚染は含まれていない。宅地に転用される工場跡地が増えるにつれて土壌汚染が問題化しているため、国交省は2003年1月までに関連省令を改正し、土壌汚染の有無を情報開示項目に追加する。

いわせてんか! 土壌汚染の情報開示に受けて、徐々に制度が整備されつつある。これによって、関連情報が広く公開されることにより、鑑定評価においてもより精度高い評価が期待出来ることになる。特にインターネットにより不動産関連情報を検索できるシステムは興味深く、かつ魅力的である。早期実現を期待する。





住宅公社の財務実態 新しい会計基準で赤字に
(日経 H14.7.27)
 
 (住宅公社等の)外郭団体は経営実態がとらえにくく、総じて財務状況はベールに包まれている。・・・問題は赤字にならないような独特の会計基準ある。

 (住宅供給公社の独特な会計基準の例)

売れ残った宅地にかかる毎年の維持費用を「費用」と見ずに貸借対照表の「資産」に計上。分譲資産を予定通り販売できなくても決算上は損失が生じない
複数物件の分譲価格を平準化するため、「団地間調整」と呼ぶ操作で後から原価を変える
特別修繕引当金、団地整備引当金などの「引き出し」を取り崩したり、繰り入れたりして期間損益を調整する

 ・・・自治体の住宅供給公社については2002年度から全国で(上記のような処理を許さない)新しい基準の採用が義務づけられることになった。・・・さらに新会計基準でも、もっと大きな問題である不動産価格下落による資産の不良化状況は必ずしも外に出てこない。

いわせてんか!
 公的会計の適正化が叫ばれて久しい。

 住宅公社の財務実態開示のための会計基準変更は軌を一にするものだが、まだまだ途についたばかりで、記事にある如く、地価下落の反映には至らない。

 地価の下落によって“総額”による購入可能な地域的範囲が都心へ回帰しているため、バブル期を中心とした郊外ニュータウンなどの人気のかげりが著しい。民間デベの場合は、そのあたりの購入者の意図を敏感に感じ取って、郊外という立地に見合った、価格的にも魅力的な開発を行っている。公社はその点、動きが鈍い。

 公的な資金を持って運用されている団体なら、本当にその使命を果たすべきだ。公表財務諸表の適正化を端緒として、魅力ある住宅供給を目指していただきたい。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年7月31日号・完―  
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