地域医療を考える集い

大曲仙北医師会

過剰な労働、医療現場の危機を訴える(7月14日・月)

  大曲仙北医師会(山下榮敏会長)主催の「第1回地域医療を考える集い」が12日、大曲交流センターで開かれた。医師不足や医療崩壊など地域医療の危機が問題になっているが、大曲仙北地区もその例外ではなくなったとして、その実情を市民に知ってもらい、意見交換の場としたいと企画。約50人の聴衆が詰めかけた。

  集いでは仙南診療所の照井哲所長が「地域医療の現状と今後の動向について」、仙北組合病院の佐々木順孝医師は「勤務医の現状について」、最後に山下医院の山下榮敏医師会長と高津内科医院の高津洋院長、それに伊藤内科医院の伊藤良院長が「休祭日救急医療、在宅医療、後期高齢者医療制度、特定検診など」をテーマに語った。

  照井所長は04年から始まった新しい臨床研修制度で研修医は、大学に残らず自由に研修先を選べることになったため都市部へと流出、地方では深刻な医師不足が生じ、仙北市の田沢湖病院が「診療所」になる方向にあるなど地域医療の深刻さを説明。

  さらに過酷な労働から兵庫県丹波市の県立柏原病院の小児科閉鎖の危機を知った地域住民が、小児科を守る会を立ち上げ、子どもの病気に知識を持ち、特別なことがない限り夜間診察は受けないようにしようなどと運動を始め、成功した例を紹介、地域医療を守るには行政を含めた住民のサポートも必要だなどと訴えた。

  続いて仙北組合総合病院で脳外科医として勤務している佐々木医師は外来だけで1日100人前後を診察し、病棟の回診、注射指示、コンピューターへの処方箋の入力、加えて病状の説明や同意書の作成などの多忙さ。そして当直勤務を終えてもそのまま仕事、さらに救急外来に備えての当番などもあって「医師自身の健康と医療の安全性を考えると勤務体制の改善が必要であり、夜間・休日外来は患者さんの側で受診が必要かどうかを吟味してほしい」と訴えた。

  山下院長は「昨年の医療費は32兆円だったが、国や自治体が出しているのは1兆円だけで、残り32兆円は皆さんが窓口負担の保険料で出しているのであって、国が医療費のために出している金は世界の先進国の中でも最低だ」と国の医療行政に対する認識の低さを数字で示した。

  そして少ない医師、少ない医療費で過剰な労働を求められ、日本を視察したアメリカの医療関係者は「クレイジーだ。これで医療事故を起こさないのはおかしいと驚いている」と訴え、過剰な労働で辞めていく医師が多くなるのも当然で、その分が残った医師の負担となっているなどと医療現場の過酷さを強調。そして「このまま医療費が削られては病院はつぶれるしかない。医療行政の改善を求めて皆さんも声を出してほしい」と訴えた。

  最後に大曲仙北広域市町村圏組合が設置している大曲栄町の「休祭日救急医療センター」が大病院志向による患者減で、9月末までに廃止、10月からは開業医らが仙北組合総合病院に出向いて休日診療し、勤務医の負担を軽減したいと同センター廃止への理解を求めた。

 栗林次美市長も厳しい医療の現場に理解を示し、「どう取り組むべきか考えさせられた。移転改築が求められている仙北組合総合病院もいいところまで行っているが中々、前に進まない。県も何らかの手だてを打たないと地域の中核病院は崩れてしまう。これからの地域医療を皆で考える機会を市として持ちたい」とあいさつした。