日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
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この情報の最も新しい更新日は7月14日(月)です。 |
武装勢力が攻撃、 過去最大級 アフガンで 米兵10人戦死 北東部クナール州の 米軍基地を襲撃 (時事通信 7月14日 電子版) |
[概要]アフガニスタンに駐留する北大西洋条約機構(NATO)指揮下の国際治安支援部隊(ISAF)は13日、北東部クナール州の前線基地が同日、武装勢力の攻撃を受けて戦闘になり、ISAFの兵士9人が死亡したと発表した。ロイター通信によれば、全員が米兵だった。
[コメント]今朝のNHK朝のニュースによれば、襲撃を受けたのは米軍基地で、タリバンは迫撃砲やロケット砲(RPG?)で攻撃を仕掛けてきたという。そのニュースで驚いたのは、タリバンの攻撃に応戦して始まった戦闘が8〜9時間に及んだという点である。 米軍やISAFであれば、当然ながら攻撃ヘリやAC−130攻撃機の支援を受けている。また、基地の周辺には警戒センサーが設置され、タリバンが基地に接近したり、基地を包囲することを封じているはずだ。 だから米軍が襲撃を受ければ、友軍に空からの対地攻撃支援を要請し、基地内の米軍部隊の一部が外に出て、攻撃しているタリバンの背後や側面を突く作戦をとる。戦闘が8〜9時間ということは、米軍にそのような反撃がまったく出来なかったことを意味している。すなわち”やられっぱなし”。 米軍やISAFによほどの油断があって、タリバンの奇襲が大成功して、空からや砲兵の対地支援が出来ないほどの至近距離で撃ち合ったのか。 ともあれ、今回の戦闘状況は米軍内でも厳重に分析されることになる。やはりタリバンは一般に推測されている以上に、勢力を盛り返し、北東部にまで影響を強めていたことになる。 このニュースはアメリカばかりか、ヨーロッパでも大きく報じられて、今後のアフガンの治安回復戦略に大きな影響を与えることが考えられる。 |
海自艦内で異物混入 隊員数人から聴取 警務隊が詰めの捜査 (産経 7月13日 朝刊) |
[概要]海自の掃海母艦「うらが」の艦内で、ペットボトルのミネラルウオーターを飲んだ海曹長(44)と2曹(40)が、吐き気と腹痛を訴え、病院に搬送されたことがわかった。 事件は6月18日午後2時頃、硫黄島沖合の太平洋で、機雷処分訓練中に起きた。警務隊の調べでは、冷蔵庫保管中に異物が人為的に混入されたとみて捜査している。神奈川県警科学捜査研究所がミネラルウオーターを分析したところ、アルカリ性洗剤の成分が検出された。事件直前に行動が不審だった隊員数人が浮上しており、警務隊は詰めの捜査を急いでいる。 [コメント]これは典型的な海自の”イジメ返し”である。いつも上官からいじめられている隊員が、報復に行う”フケメシ”や”ママレモン”という仕返しのひとつだ。艦内の食事で、配膳を受け持つ下っ端の隊員が、厳しい上官やいじめられている先輩に、自分の頭髪のフケを振り掛けて出すのが”フケメシ”で、飲み物にいろいろな洗剤を混ぜるのが”ママレモン”である。食事のスープにタンやツバを吐きかけることもあると聞いた。おそらく警務隊は今回のことを、海士クラスが上官を恨んで報復した”嫌がらせ行為”として捜査しているのだろう。 海自では7月6日に、青森県の東通村・尻屋崎の東南東沖の約25キロを航行中の護衛艦「さわゆき」(排水量 2950トン)で、海士長による「放火」事件が起きている。「さわゆき」に転属してきた海士長が、仕事が忙しく、自由時間がなくなったので、不満を持って放火したと公表されている。 イージス艦「あたご」の衝突事故は、当直士官の過失として送検されたが、最大の過失は右ブッリジ外の「見張り員」(通常は海士クラスが担当)を、ブリッジ外に出さなかったのことが衝突原因に大きく影響している。ハワイ帰りで外気が寒く感じても、見張り員をブリッジの外に出して、右舷前方を警戒しておれば、あの衝突事故は防げたという者は多い。 しかし海自は業務が増えたのに定員は増えていない。新隊員は募集難でなかなか集まらない。乗艦勤務は若い隊員に敬遠されるという。だから、ついつい艦内では若い海士クラスに甘くなっていたと聞いた。甘くなるとは規則や規律を緩めるという意味である。 「あたご」事故では、そのような甘やかされが大きな事故の要因になることがわかった。そこで海士クラスの訓練や乗艦生活を厳しくしつけると、今回のような事件が起きたのではないか。 ところで私事で恐縮だが、宝島社で出ている「裸の自衛隊」(文庫版)が6月初めに増刷(新装)になった。内容はすでに過去のものと思っていたが、自衛隊を知る上で歴史的な名著(総刷部数が70万部オーバー?)になっているために加筆・訂正ができなかった。ちょっと強烈に、当時の自衛隊の内部事情をルポしている。 発刊当時、この本を熱狂的に支持したのは現職の自衛官や自衛隊OBたちだった。きれいごとの自衛隊解説本を嫌い、この赤裸な自衛隊内幕(うちまく)本を絶賛した。「裸の自衛隊」を読んだ隊員から、「うちの部隊はこんな馬鹿なことをやっている」、「うちの隊員にこんな恥ずかしいヤツがいる」と、全国の部隊から”笑える葉書”が編集部に殺到した。その中の1枚に”ママレモン”があった。 「裸の自衛隊」が発刊された時、防衛庁(当時)は”この本のため”に新隊員の応募が激減すると心配したが、応募者数の結果は逆で、「こんな自衛隊は面白そうだ」と、翌年の新隊員・応募者数は大きく増加した。 その後は、不況と公務員人気で、優秀な人材が自衛隊に集まり、「裸の自衛隊」は過去のものと思っていた。しかし最近は再び募集難となり、「裸の自衛隊」の世界が再現していると聞いた。そんな変化を感じさせる事件である。 |
自衛隊 アフガン追加支援 「P3C哨戒」有力に 政府配慮 公明党の懸念 (産経 7月12日 朝刊) |
[概要]政府は8月下旬からの臨時国会で、最大の焦点になる自衛隊のアフガン支援策では、海自によるインド洋での哨戒監視活動などの任務を追加する方針で検討に入った。現在のテロ対策特別措置法改正が来年1月に期限が切れることから、現在の給油活動に加える「追加支援」として盛り込む方向で調整している。 政府筋によると、6月8日〜18日にアフガンに派遣した政府調査団は、陸海空3自衛隊の支援内容を検討した。その結果、陸自はCH47輸送ヘリを使い、首都カブールに近いバグラム空軍基地から北部の国際治安支援部隊(ISAF)拠点空港への人員・物資輸送を担当。空自はバグラム空軍基地からタジキスタンにある米軍基地との輸送任務を行う。海自はインド洋の米軍基地ディエゴガルシアとオマーン、ジプチを結ぶ三角形でP3C哨戒機による警戒監視飛行をする案が残った。 しかしCH47輸送ヘリは治安が安定している北部派遣でも機数が不足しており、空自の活動とともに憲法が禁じる武力行使と一体化などへの懸念から、公明党などから強い懸念が示されている。海自P3C機の哨戒では、不審船を発見した場合でも米軍に通報し、多国籍軍艦船が対処することになるので、安全性の面で理解が得やすい。 福田首相は11日の閣僚懇談会で、「洞爺湖サミットではアフガンの重要性が共通認識だった。日本国内の認識とギャップがあることを再認識させられた」と指摘。町村官房長官は同日の記者会見で、「日本が行っている給油支援活動だけで本当にいいのか。いかなる対応が可能か。政府内部で多方面的に検討している最中だ」と語った。 [コメント]産経新聞の防衛関連記事で、「00案が有力に」とタイトル(見出し)で書かれたものは、その後、まったく姿を見せないで消えていったものが少なくない。例えば、「陸自のアフガン派遣案、政府内で有力に」などという記事である。あとで考えると、あれは政府が”世論や野党の反応”を探るための”観測気球”記事で、国民が強く反発したものは自然消滅させたような気がする。 今回もそのような政府の意図を感じる記事である。陸自のCH47輸送ヘリと、空自のC130輸送機の派遣が、戦闘中の米軍(ISAFを含む)と一体化する懸念があるというなら、米軍の中東向け軍事拠点であるディエゴガルシア島に海自のP3Cを派遣しても一体化しないという理屈は通用しない。 通常の戦闘はまず偵察任務から始まる。敵状を調べる偵察活動が終了して、次の段階の攻撃が開始されるのである。直接戦闘に加わっていないし、偵察だけだから戦闘と一体化していないという理屈が通用するだろうか。 それにジプチ(アフリカ)にある米軍基地は、半分はソマリアなどアフリカのテロ組織(アルカイダ系)に向いている。アフガン(及びその周辺)での対テロ作戦を支援することを定めたテロ特措法の枠を越えることにならないか。 また北朝鮮の不審船の様に、船体後部に高速小型艇を隠したために、高熱のエンジンが船体中央に置いてあったため、上空のP3Cの赤外線探知機で容易に不審船の識別が可能だった。しかしインド洋を航行する漁船や貨物船の中から、どのようにしてテロに使われる不審船を上空から発見するのか。単に、インド洋での定期哨戒と称して、毎日、決められた飛行コースを飛ぶだけで、対テロ作戦を支援していると言えるだろうか。 私はこのP3C案に、恥ずべき卑怯者の思考を感じてしまう。まず派遣ありきで、次ぎに安全な方法を探る。そんな姿勢では日本人が国際社会から信頼と尊厳を得て、名誉ある地位を占めることは出来ない。これでは日本人がサムライの心を失ったことと思わないか。外務省に”もののふ”の心を期待しないが、日本を偽善国家に作り直すことには反対する。 |
米空軍・次期空中給油機 欧州機の発注撤回 ボーイング社の異議を支持 (読売 7月11日 朝刊) |
[概要]ゲーツ米国防長官は9日、次期空中給油機(KC−X)の選定問題で、欧州航空宇宙大手(EADS)と米ノースロップ・グラマンの企業連合への発注を撤回し、再入札すると発表した。 米議会の政府監察院(GAO)は、受注争いに敗れた米ボーイング社の「選考課程に問題がある」との異議申し立て支持し、空軍に契約を撤回するように勧告した。空軍は年内に再入札を行う方針。 米軍が主要装備で外国機種を導入するのは極めて異例で、国防族議員や保守派勢力が米国の安全保障を損なうと強く反発していた。 [コメント]米空軍のKC−Xではノースロップ・グラマンとEADSの企業連合体が、KCー45(A330がベース)を179機(総額350億ドル 約3兆8000億円)ほど受注したと報じられていた。あの時は米空軍の欧州機採用のニュースに驚いたが、さらに逆転して、今回はその受注を撤回するというニュースにも驚いた。 再入札でボーイング社の機種が決まれば、空自が空中給油機として導入中のKC−767になることは間違いない。ベースになっているのは旅客機のボーイングB−767機で、空自の早期警戒管制機AWACSもボーイング社のE−767を採用している。 米空軍のKC−XにKC−767が決まれば、米軍と空自の一体化はさらに強まることになる。そのうち、日本の周辺では、米軍のKC−767と空自のKC−767が飛び回り、日本ーアラスカ、日本ーハワイ、日本ーグアム、日本ー米本土と、戦闘機や攻撃機が空中給油しながら、日米軍用機の無着陸の緊急機動移駐訓練が日常化するだろう。 ところで昨日、NHKニュースが報じていたが、洞爺湖サミットの開催中に、何者かにハイジャックされた旅客機を、サミット会場圏内まで1分(48キロ)圏で、空自の戦闘機が撃墜するシミュレーションを行ったという。これは7月2日に行われた図上演習で、官邸ー防衛省ー空自基地を結んで、連携して演習に参加したそうである。この演習では洞爺湖まで飛行時間が1時間のところで、ハイジャックが官邸に報告され、防衛大臣が航空自衛隊に治安出動を命令している。この治安出動・発令段階で空自・戦闘機の武器使用は許可されたが、旅客機の撃墜命令は「そのまま放置すれば重大が被害が明確に予測される事態での武器使用」(自衛隊法 第90条1項か?)が適応されたという。 今回は図上演習であったが、このような事態になれば空自のKC−767はCAP(戦闘空中待機)の戦闘機のために出動したと思う。戦闘機の攻撃後か攻撃前に空中給油して、飛行時間を延長させるためである。戦闘機はそばにKC−767がいることで、燃料切れを心配しないで作戦を継続することになる。 昨日のNHKニュースでも報じていたが、ドイツではハイジャックされた旅客機を空軍の戦闘機が撃墜できるという新しい法律に、憲法違反の判決がでたという。日本でも旅客機がハイジャックされてテロ犯が操縦している場合でも、空自・戦闘機が撃墜することの法律根拠が曖昧という指摘もある。もし治安出動の発令が遅れた場合、空自・基地司令官や戦闘機パイロットの判断で、ハイジャックされた旅客機を撃墜できるのか。これは都市周辺に配置されている空自の防空ミサイル部隊でも同じである。例えハイジャック機であっても、空自部隊が撃墜するには強い決心が必要になる。 このような議論や訓練は防衛省や官邸でコソコソやらないで、最前線に立たされている者(自衛官)を考えて、判断を迷わすようなことは慎むべきと思う。堂々とやってほしい。ドイツでの違憲判決は現場の兵士に強い不安感を与えていると思う。 |
イスラエル射程圏・ハシャブ3 イラン ミサイル実験 ペルシャ湾岸で緊張高まる (毎日 7月10日 朝刊) |
[概要]イラン国営通信が報じたところ、イランの革命防衛隊は9日、中距離弾道ミサイル「ハシャブ3」を含む9発のミサイル実験を実施した。ハシャブ3は射程が2000キロでイスラエル全土を射程に収める。イラン核開発をめぐり、イスラエルと米国による対イラン軍事攻撃論が再燃しており、それにイランが対抗する形でミサイル発射実験を行った。ペルシャ湾岸で軍事的緊張が高まった。 ペルシャ湾では4日、米英の艦船が軍事演習を始めている。イランも7日から湾岸一帯で軍事演習を開始している。ミサイル発射はこの演習の一環。革命防衛隊幹部は「(演習は)イランを威嚇する敵にイランの反撃する意志と威信を示すものだ」と述べた。 革命防衛隊のジャファリ最高司令官はイランが攻撃された場合、報復攻撃に加え、中東産の4割の原油を輸送するルートにあるペルシャ湾のホルムズ海峡を封鎖すると発言した。イランの最高指導者ハメネィ師の側近は8日、イランが攻撃された場合、「最初の報復攻撃は(イスラエルの)テルアビブとペルシャ湾の米艦船だ。世界中の米国の利益も攻撃する」と発言した。 [コメント]アメリカとイランの攻撃合戦ならぬ口撃合戦がエスカレートしている。一人が「テメィ、殺すぞ」と言えば、相手も「オメェこそ、ぶっ殺す」と凄んでいる。そばで見ている人は、本当に殺す気があるなら、さっさと刺し殺すなり撃ち殺せとヤジりたくなる。それでも誰も110番しないのは、この喧嘩が殺人事件に発展しないこと知っているからだ。 これが街のチンピラの喧嘩なら、バケツで冷水を浴びせれば済むことである。しかし軍事組織の挑発合戦は時として深刻な事態を招くことが少なくない。私の軍事の恩師である軍事評論家の小山内宏氏(故人)は、そんことを天気予報と比較してよく話されたていた。 天気予報が「明日は雨」といっても、それが外れて「晴れ」であっても問題は深刻でない。しかし軍事の世界では意図的な挑発であっても、その危機感を繰り返し煽ることで、次第に現実化する危険が多々ある。また、挑発や脅威を打ち消すために、相手が軍事的な対応手段を講じるて危機がさらに高まることもある。それがエスカレートすることで、本物の軍事脅威となって戦争が始めることになる。軍事危機のエスカレーションは虚偽や幻の脅威が原因でも、事態をさらに危険な状態に進める要因なるなると説明された。そこが天気予報と軍事の違うとこである。 先日、出演したラジオ番組で北朝鮮の核兵器保有のことが話題になった。私は、「北朝鮮が核兵器を保有している可能性は極めて低い。個人的には保有していないと思っている」と話すと、「世界中で北朝鮮が持っている核弾頭は4個〜6個と騒いでいる。それなのに持っていないというのですか」と言われた。世界中(特にアメリカ)が言っているのは、北朝鮮は核爆弾に使用できるプルトニュームが4個〜6個分ほど抽出されたというもので、核弾頭が出来たというものではない。 北朝鮮を核兵器保有国と認めるのは、核実験を3〜7回程度行って、すべての核実験に成功して信頼性がある核弾頭という証明が必要だ。さらに核弾頭の小型化を証明できる実験を行い、最終的に核弾頭の運搬手段である弾道ミサイル(弾頭重量が1トン程度)の発射実験(特に射程と命中精度が重要)を成功させなければ核兵器保有国(核武装国家)として認められない。(ウラン原爆を弾道ミサイルに搭載しない場合は例外)。 それなのに北朝鮮は、未完成(失敗)な核実験を1回だけ行い、それで核武装国家としても対応を求めている。さらに6カ国協議では「核軍縮交渉」として扱いを要求している。これは核兵器の常識でバカげている主張として論外なのである。このように北朝鮮は虚偽の脅威を演出して、軍事危機を高めるる戦略をとっている。その緊張醸成の目的は、それをエサにして外国に経済援助や食糧支援を迫るためである。 私が北朝鮮に騙されるなと強く主張するのは、小山内先生から虚偽の脅威でも戦争開始の要因になり得ると教えられたからである。危機が高まって北朝鮮と戦争になれば、ソウル市民や在韓米軍は生物・化学兵器で大被害を受けることになる。北朝鮮に核兵器はなくとも、そのことが怖いことも事実である。 イランとアメリカの口撃合戦を見ていると、イラン攻撃など起きるはずがないと確信しつつも、危険な領域に踏み込む可能性がゼロではないから不安を感じる。ホルムズ海峡で巨大石油タンカーを爆破して封鎖する、あるいはホルムズ海峡に感応機雷を仕掛けて封鎖する。もし戦争が始まれば、そのようなことをイラン革命防衛隊が行うことは間違いない。 |
豪主催、「カカドゥ 08」に参加 海自、初参加 多国間共同訓練へ 「集団的自衛権に当たらず」 赤星海幕長が説明 (朝日 7月9日 朝刊) |
[概要]海上自衛隊は今月21日から8月8までの期間に、オーストラリア海軍が主催して行う多国間共同訓練「カカドゥ 08」に、初めて護衛艦1隻を参加させる。この訓練はオーストラリアのダーウィン周辺海域で行われ、対空戦闘訓練や対潜水艦戦、災害救助訓練が行われる。 共同参加するのは、フランス、マレーシア、ニュージランド、パキスタンなど9カ国から18隻の艦艇が参加する予定。 赤星海幕長は8日の記者会見で、「特定の国、地域に対する防衛を目的としたものではなく、基本的な戦術訓練であり、集団的自衛権の行使にはあたらない」と説明した。 [コメント]この記事では肝心なアメリカと中国が、この演習に参加するかどうかが書かれていない。米中の艦船や航空機が参加しなくとも、軍関係者が視察(ゲスト)に招待されているか気になる。 また、「基本的な戦術訓練は”集団的自衛権の行使”にはあたらない」という海幕長の説明は明らかに間違い。日米の両軍(陸自と米陸軍)が日本の演習場で始めた共同演習でも、初めは基本的な戦術を相互に確認する訓練から始まった。海自の共同演習であれば、通信に使用する無線の周波数や、お互いに呼びかける「コール名」を設定することから始める。基本な戦術訓練だから集団的自衛権の行使に当たらないという意味が全く理解できない。 特に海自は昔から、憲法が禁じた集団的事件権の禁止を積極的な”なし崩し”できた。今までの海自にとって、米海軍と一体化することが至上命令のように思えた。海自が4隻(当時)のイージス艦を配備したのも、米空母機動部隊を陸上攻撃から守るためであることは誰でも知っている。対潜哨戒機(当時)P3Cがとらえた潜航中の潜水艦の音紋は、米海軍に録音を送って照会しなければ国籍や艦名がわからなかった。海自は米海軍の一翼を担うことが日本の防衛戦略と信じてやってきたのだ。 そのアメリカ海軍が海賊や密輸(武装集団)などの比較的小さな海上の脅威を、オーストラリア、フランス、日本などが担うことを求めている。そこで米海軍の主任務は、沿海から地上にある敵の大規模な軍事施設などを攻撃することである。この米海軍の新戦略が「カカドゥ 08」を拡大させる背景にあると思う。(米海軍の特殊部隊と海兵隊は、フィリピンのアブサヤフのような対テロ作戦も実施) ところで日本に集団的自衛権の解釈を変更しようとする動きがある。この解釈変更とは、”禁止から解除”に変化させることである。それを担ったのが安倍前首相が設置した「安保懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」であった。しかし安倍前首相の突然の辞任で、昨年8月30日の第5回会合以降は開催されていない。その安保懇の座長である柳井俊二氏(元駐米大使)が、ただ一人で、6月24日に最終報告書を首相に提出した。〔産経新聞 7月9日 朝刊 「正論」欄にコラム) 福田首相は集団的自衛権の見直しに消極的といわれ、このため、この最終報告書はそのままお蔵入りした。しかし、この安保懇が実は集団的自衛権の解釈変更を大きく妨害したことを知る人は少ない。柳井座長が軍事をまったく知らずに、メチャクチャな論理展開で解釈変更を正当化したので、日本の集団的自衛権の行使禁止の解釈変更は不可能になったのだ。本人はうまくやったと思っていても、軍事無知が災いして、報告書の効果はまったく逆の意味を発揮している。 なぜ、軍事を知らないかといえば、検討した4つの想定が軍事的な間違いだったからだ。例えば、北朝鮮からアメリカに向かう長距離弾道ミサイルを日本上空で撃つ落とさなければ、日本はアメリカの信頼を得ることができない。ところが日本では集団的自衛権の行使が禁止され、アメリカに向かっているミサイルを撃ち落とすことができない。そこで集団的自衛権を解禁するか、今までの解釈を変更しろと報告書で迫っている。 残念!。北朝鮮からアメリカに向かう長距離弾道ミサイルは、間違っても日本の上空を飛んでくれない。北朝鮮からアラスカやカリフォルニアを狙っても、その弾道は北海道のはるか北のロシア上空を飛翔する。JAL(日本航空)やANA(全日空)のように、弾道ミサイルはハワイのホノルル経由でアメリカに向かってくれないのだ。海上自衛隊のイージス艦に搭載しているSM−3対弾道ミサイルでは、迎撃したくとも出来ない。 また、北朝鮮からグアムの米軍基地を狙った場合、弾道ミサイルが日本上空を飛翔しても、高度が1000キロ以上で、SM3の射程では迎撃できない(届かない)。なにより、北朝鮮がそのような弾道ミサイル実験に成功したことはない。このように、いかに安保懇が”結論ありき”のもので、同時に、いい加減な議論が行われたかを証明されている。 その想定の中には、すでに行使が認められているのに、日本が行使を認めないと日米の信頼が揺らぐというものがあった。それは艦船でも兵士でも同じだが、自衛隊と米軍(同盟軍)が一緒にいて、米軍(同盟軍)が攻撃されても自衛隊が攻撃されていなければ反撃できないという部分である。日本は集団的自衛権の行使が禁止されているので、隣の米軍(同盟軍)を助けることができないという想定だった。 残念!。このような場合、集団的自衛権ではなくとも、自衛隊は”正当防衛”として共通の敵に反撃することが許されている。米軍(同盟軍)を襲っている敵が、次は自衛隊を襲うことが十分に予測できるからである。いい加減な柳井論のために、自衛隊がどれほど迷惑を受けたか本人は気がついていない。 もし安保懇に軍事のわかるものがいれば、適切なアドバイスをしたかも知れない。しかし適切なアドバイスをすれば、「結論あり」の最終報告書は出来ないことになる。あるいは、適切なアドバイスがあっても、それを握り潰してメチャクチャ報告書でも誤魔化せると考えたかもしれない。 ともあれ、柳井座長が提出した最終報告書で、日本の集団的自衛権禁止の解禁や、解釈変更は致命的といえるほどのダメージを被ったのは間違いない。軍事知識をバカにした報いにせよ、自らが墓穴を掘ったのである。 |
自衛隊佐官級12人が訪中 中国軍演習 、日本側に披露 南京、歩兵179旅団 (朝日 7月8日 朝刊) |
[概要]日本の自衛隊佐官級訪中団12人が7日、南京の中国軍歩兵第179旅団(約4000人)を訪れて交流した。日本の報道陣にも軍事演習を公開した。 これは笹川平和財団などが主催し、今年で8回目になる。金川・旅団長が装備や訓練内容などを解説し、機関銃や無反動砲の実弾訓練を実施した。自衛官らは兵舎の食堂で中国軍兵士と会食し、訓練や生活ぶりについて意見交換した。 7日は日中戦争が始まった盧溝橋事件の71周年目で、南京は旧日本軍による虐殺事件があった所だが、日本側の小田光登1等海佐は「反日的な雰囲気は感じられず、できることはすべて話してくれた」と話した。 [コメント]これが軍事で言うところの信頼醸成措置のひとつである。軍の信頼醸成には、高級幹部の相互表敬訪問、軍艦の相互訪問、軍事演習への視察招待、軍人による留学生の交換、国防(防衛)白書の情報公開などがある。 日本人や中国人が意外と思うだろうが、日本(自衛隊)と中国(人民解放軍)はこの信頼醸成がうまくいっている方である。 また歩兵179旅団は外国向けの”展示部隊”と指摘する人もいるが、それでも中国がまったく何も見せないよりはマシである。陸上自衛隊でも演習を外国人に見せる機会があれば、富士(静岡県)の教導団あたりを見せるのと同じである。 昔、朝霞駐屯地で行われた中央パレードのときに、招待された中国大使館の武官(2名)の写真を、望遠レンズで狙っていたら、後ですごく睨まれたことがある。私は珍しい中国軍の制服や徽章に興味があって、かなりの枚数を望遠レンズで撮っていた。そのことが癪にさわったらしい。まだ自衛隊と中国軍の交流が行われる前で、日本に勤務しているロシア大使館の武官や大使館員が盛んにスパイ活動をやっていた時代である。 ところで軍事といえば、何でも隠したがる国がある。かつての中国もそのような国だったが、今朝の北京オリンピック関連のTVニュースでは、メイン会場の近くに配備された地対空ミサイルの映像を流していた。あれほど秘密主義に徹した中国軍であっても、情報公開の荒波(潮流)から逃れることができないと思った。それに中国軍の装備が充実してきて、外国に見せても恥ずかしくない自信が生まれたのではないか。 ともあれ、これれからも日本(自衛隊)と中国軍やロシア軍との信頼醸成措置が広まることを願っている。将来、スーダンで出会った中国軍の国連PKO兵士に、笑顔で話しけるのを楽しみにしたい。 |
北朝鮮で宣伝 「米からの食糧は 戦利品」 金正日が勝ったと強調 (読売 7月7日 朝刊) |
[概要]韓国の民間人権団体「良き友だち」が発行するニュースレター「今日の北朝鮮便り」の最新号では、北朝鮮当局が米国からの食糧支援を、「金正日総書記が勝ち取った『戦利品』と国内で宣伝している」ことを、平壌の高官の話しとして伝えた。 それによれば、金総書記の戦略的方針として、「(経済)封鎖には自力更生、戦争挑発の脅しには戦時準備態勢で強硬に立ち向かって戦ってきた」結果、米国がテロ支援国指定解除に着手し、食糧を支援するようになったと、各地の集会で宣伝しているという。特に食糧は「戦勝で得られた物品」と強調している。米政府は07年の洪水の影響で、北朝鮮の食糧難に対して50万トンの食糧支援を表明し、すでにその一部が北朝鮮に到着している。 [コメント]日本人の一般的なクセで、初対面の人と握手するときに、軽く頭を下げて、相手に挨拶する習慣がある。しかし、これは公式的な場所では絶対にしてはいけないスタイルである。もし、相手方のカメラマンが、その様子を横から写真にとれば、日本人が頭を下げて従う様にうつむき、相手は偉そうに見下ろして握手をしている構図になるからだ。その写真を政治宣伝に使われると、日本人が不利になることは間違いない。相手より数ランク下と格付けされることになるからだ。 このHPでは、小泉首相(当時)が平壌を訪れる際、金正日と握手する時に、うっかり頭を下げないように厳重に注意した。だから今でも、小泉首相と金正日が初めて握手したときの映像を見ると、小泉首相が緊張した顔つきながらも、全く頭を下げていないことに安心する。無論、私の注意が小泉首相に伝わったわけではないと思うが、同じようなアドバイスを誰かがしたのだろう。 もう20年以上も昔のことだが、韓国の特戦師団を訪問(私は取材)した時、同行した自衛隊幹部全員が、特戦師団の師団長と初対面の握手をした。すると日本人側が頭を下げて握手している一人一人の写真を、帰りぎわのお土産に頂いた。そのカメラマンは特戦師団が手配した広報カメラマン(背広だった)で、あらかじめそのような教育を受けていると感じた。幸い、私は握手するのが最後の順番で、そのカメラマンの立ち位置が気になっていたので頭を下げずに、笑顔だけで握手をした。その結果、私だけ互いに笑顔で握手している記念写真になった。悪意がなくともそのような効果が生まれるのである。 それよりもはるかにしたたかな、北朝鮮という国と拉致問題などで交渉する際、相手を信頼するとか善意に期待するといった性善説はまったく通用しない。金正日は貧しい自国民を餓死させても、それを交渉道具にして、アメリカや韓国などから北朝鮮の裕福な支配層のために食糧支援を求めてくる国なのである。 アメリカのブッシュ大統領やライス国務長官を手玉に取ることは朝飯前である。冷戦時代にも北朝鮮という国は、ソ連と中国を手玉にとって、交互に北朝鮮への援助を競わせていた。それこそが北朝鮮が存続できたサバイバル・テクニックなのである。 |
イラン政府 ウラン濃縮活動継続 「見返り案」に交渉の用意あり (毎日 7月6日 朝刊) |
[概要]イランのエルハム政府報道官は5日、米欧などが求めるウラン濃縮活動の停止について、「我々の姿勢は変わらない」と述べ、独自の核燃料サイクル機構に向けた向けた動きを継続することを表明した。一方、国連安保理常任理事国とドイツを加えた6カ国が先月提示した、「濃縮活動停止の見返り案」については、イラン政府が見返る案の前に提示した包括案との「共通性」を土台に交渉する用意があると述べた。 [コメント]つい数日前のことだが、イスラエルがイランの核施設を年内にも空爆することを検討しているという記事を読んだ。その記事を読んだ時の感想は、「どうしてこのようなバカげたことを真顔で話すのだろうか」と思った。イスラエルのF−16戦闘機がF−15戦闘機に護衛されてイラン領空に侵入しても、ウラン濃縮が行われて地下施設(トンネル)を空爆できないからだ。核施設は空爆の被害が及ばない固い岩盤の中に、地下工場が複雑に作られている。投下された爆弾の直撃(爆風)から施設を守るためである。 ちょうどこれは北朝鮮が非武装地帯に沿って配備した大量破壊兵器の地下陣地と同じである。空爆したくとも迷路のようになっているから出来ないのである。そこでイスラエルの特殊部隊を投入して、空地共同作戦で地下施設(トンネル)内部の破壊作戦が考えられるが、その場合は侵攻したイスラエル兵に多くの犠牲者を出すだろうし、施設周辺にロシアから購入した最新鋭・地対空ミサイルが威力を発揮する。特に特殊部隊をヘリボーンさせるヘリ部隊に大きな被害が考えられるのだ。 またイスラエルの秘密作戦が事前に漏れることはない。イスラエル軍は極めて秘密保全能力が高いからである。”イスラエルが年内にもイラク空爆を秘密裏に検討”などという最高機密の情報が漏れることが不自然なのだ。 それにである。もしイスラエル軍の空地共同の奇襲作戦が成功しても、イランが報復にレバノン南部のヒズボラを使ってイスラエルに大攻勢を加えることが必至だ。2年前の夏、イスラエル軍がレバノン南部に侵攻した時、ヒズボラの非正規作戦で痛い目にあってひどい被害を受けている。まだその傷が癒えたとは思えない。 私は万一でも、イスラエル軍のイラン攻撃はないと確信している。イランはイスラエルが空爆に来ることを想定して、地下施設を建設して対抗している。 だからイランの核問題は、見返りを含めて「話し合い」によって解決できると推測する。しかしその時期は、今のブッシュ政権が次の政権と交代する来年以降になると思う。 イランへの制裁解除になれば、高騰を続ける国際原油価格が下がる可能性が高い。イランへの制裁解除は心理的な影響が極めて大きい。 もともと原始的なウラン原爆は重量が大きく、重量が1トン未満が絶対条件という核弾道ミサイルには適さない。あくまでイランでウラン原爆が完成しても、イランでは核爆弾や核地雷で使われる核兵器である。北朝鮮が目論んだプルトニューム核弾頭と弾道ミサイルの組み合わせではない。だからイラン側にも話し合う可能性が高いのである。 |
すいません。 本日、更新休止です 明日(5日)も休みます。 (7月4日 金曜日) |
これからラジオの仕事(生放送)で浜松町に向かいます。雨が上がったので、自転車かバイクで行くつもりです。そのあとも雑誌の取材や打ち合わせが入っています。すいませんが、今日の、この欄の更新は休みます。明日も朝から横須賀に出かけて少年工科学校で同期会です。毎年恒例の「同期を偲ぶ会」です。
もうあの水死事故から40年がたちました。
でも今日の、「メールにお返事」のコーナーに、ちょっと長めのお返事を書きました。「サミット警備」に関するものです。時間がある方はそちらをご覧ください。 せっかくアクセスして頂いたのに、すいませんでした。 |
多用途支援機 首相、空自U4機で 北京オリンピックへ 5輪開会式、効率性全面に (産経 7月3日 朝刊) |
福田首相は開会式当日の8日午前にU4機で日本を発ち、北京入りして、同夜の五輪開会式に出席する。翌9日の未明か早朝に北京を発ち、長崎・大村空港に向かい、午前10時40分から長崎市で行われる原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に到着する予定。 今回の訪中は、首相が6日の広島原爆慰霊式に出席することが外せないことから、日程が極めて窮屈となった。そのため北京では、ブッシュ大統領や胡錦涛主席との会談は見送る方向だ。 政府専用機は何らかの事故に備え、予備機とペアで運行する慣例があるので、今回もU4機を2機飛ばす方向で検討している。同行する随員も2機に分かれて搭乗する。 空自が保有するU4機は5機で、1機の輸送可能人員が19人と小さいが、小回りが利き、使用燃料などの諸経費も少なくて済む。 U4機の政府活用は、17年6月に小泉首相(当時)が硫黄島(東京都小笠原村)での戦没者追悼式に使ったほか、19年6月に麻生外相(当時)が韓国・済州島での日中韓外相会議参加のために閣僚として初めて海外出張に利用した。 福田首相は環境問題や行政の効率化について「無駄遣いゼロ」を訴えているので、自らそれを実践してアピールする意図もある。 写真は航空自衛隊のホームページより。 [コメント]空自のU4機は、米ガルフストリーム社のビジネスジェット機であるガルフストリームW型機を採用した。確か、海保もガルフストリーム機X型(※)を2機保有しているはずだ。U4機は航続距離は約6600キロだから羽田〜北京間なら問題はない。日本という国力のある国の首相が、各国首脳が集まるオリンピックの開会式に、空自機とはいえビジネス機で乗り込めば「省エネ」をアピールする効果は十分にある。また小型ビジネス機の使用は、日本は中国の隣国という関係を世界に印象づけることもできる。 それに、U4機は大量の物資を空輸することは無理だが、スーダンに派遣されるPKOの司令部要員を日本から送り届けたり、迎えに行くことは可能だ。すなわちU4機なら、アフリカ(スーダン)と日本の間で、PKO活動の指揮・連絡や小型軽量貨物の空輸に使えることである。今回の国際舞台での登場で、これから空自のU4機が世界の空を飛びまわるドアを開くことになる。 福田首相がU4機で北京に行くのなら、長崎に帰る途中で、東シナ海に浮かぶ尖閣諸島を低空で見てくるといい。尖閣諸島を地図で見るだけと、空からでも自分の目で見ることは、認識の深まりに大きな違いがあるからだ。U4機が低空に降りてくれば、対空ミサイルの脅威があると言っても、U-4機の高度が5000メートル程度で、海上に海保の巡視船や海自の護衛艦が展開すれば問題ない。当然ながら東シナ海上空では空自・戦闘機の護衛がつくし、中国の領空に入れば中国空軍機の護衛(出迎え・見送り)がつく。 日本が首相の外国訪問に、空自の小型ビジネス機を使う時代になったのか。やはり自衛隊はこれから大きく変わると思う。北朝鮮に代わって中国の軍事脅威論が使えないからだ。自衛隊が変化しなければ生き残れない。 ※海保が運用する「ガルフX型機」は、搭乗可能人員が22名で、航続距離が1万2000キロと性能が向上しています。 |
北が申告 プルトニューム 核実験で2キロ使用 「総抽出量は30キロ」 (読売 7月2日 朝刊) |
[概要]北朝鮮が6カ国協議の議長国・中国に、6月26日に提出した核計画の申告書で、核爆弾の原料になるプルトニュームの量について、これまでに約30キロ・グラムを抽出し、うち2キロを06年10月の核実験に使ったと言及していることがわかった。6カ国協議関係筋が1日、明かした。 核爆弾1個には通常、4〜8キロのプルトニュームが必要とされ、北朝鮮が説明する2キロという数値は、高度な技術力がない限り、核爆弾の製造は難しい。また核実験は未熟な起爆装置によって小規模な爆発しか起こせず、失敗に終わったとされている。北朝鮮はその失敗を隠すために、2キロと言及している可能性がある。今後、「2キロ」の妥当性をめぐり、6カ国協議などで突っ込んだ議論が展開されるのは確実だ。 米国は5月に北朝鮮が米側に差しだした核計画文書を分析した結果、寧辺の核施設内に保管されている「未処理の使用済み燃料棒」から約8キロのプルトニューム抽出が可能で、さらに、核施設の部品内部に2キロ程度のプルトニュームが残っているとみられる。米国は総量を約44キロに上ると推定している。 [コメント]北朝鮮と核技術で結びついているイランが、自国でプルトニュームの精製を断念してウラン濃縮に絞ったのは、プルトニューム原爆の起爆装置の難しさが影響したと思っている。北朝鮮が2キロ程度のプルトニュームで核爆弾を完成させる高度な技術を持っているとは思えない。また06年10月の核実験の失敗(不完全爆発)を隠すために、核材料のプルトニューム量をわざと少なく申告することは考えられる。 すなわち、その辺りに北朝鮮の核計画申告の最大の矛盾と、誤魔化しが隠されていると思う。 北朝鮮は横田めぐみさんだという遺骨を、2度も火葬して、日本に送ったことがある。2度焼けば、DNA鑑定は出来ないと思っていた。(北朝鮮に火葬の習慣はない)。しかし日本の犯罪捜査の最先端技術で、あの遺骨はめぐみさんのものではないという鑑定結果が出た。(この遺骨は北朝鮮の返還要求を拒否して、日本側が保管中)。 その程度の国なのである。まさかウソがばれないと思って、ニセの資料を出して墓穴を掘る。今回の核申告の検証では、この2キロの点を厳しく追及して、矛盾点を暴いて欲しい。制裁解禁はそれからでも遅くない。 ※今日はこれから横須賀の少年工科学校に向かいます。40年前の今日、同期13人が渡河訓練を行っていた池で水死した日です。学校で行われる”顕彰行事”に参列するためです。もしかしたら、今回が最後の学校行事になるかもしれません。そして私が学校行事の”顕彰行事”に出席するのは初めてです。実に40年ぶりの7月2日です。 今週の土曜日(5日)には、毎年開催している「同期を忍ぶ会」を同じ少工校の公園で開催します。池を埋め立てて作った公園です。その日には同期20〜30人が参加します。 |
スーダンに自衛官「数人」 首相、潘基文事務総長に表明 迷走PKO戦略 派遣ありき 防衛省反発 (朝日 7月1日 朝刊) |
[概要]福田首相は30日、潘基文(バン・ギムン)国連事務総長と会談し、スーダン南部の国連平和維持活動(PKO)の司令部に自衛官を派遣すると表明した。石破防衛相は1日にも統合幕僚長らに派遣準備を指示。早ければ7月中にも準備チームを現地に派遣し、首都ハルツームの司令部を視察して、9月に数人の自衛官派遣を目指す。 PKO参加は首相が唱える「平和協力国家」の具体策のひとつ。潘氏は会談で「非常に勇気づけられる。評価したい」と歓迎し、「今後、専門的な分野での自衛隊の貢献に期待している」と述べ、司令部要員にとどまらず、輸送などの後方支援での協力を期待した。 福田首相はこのほかに、マレーシアにあるPKO訓練センターに約100万ドルを支援し、アフリカの同センターに初めて自衛官を講師で派遣する考えも表明した。 官邸、外務省は当初、スーダン南部の中心都市ジェバに陸自部隊の派遣を模索したが、陸自はアフリカのモザンピークPKO派遣で、厳しい現状を体験したことから、防衛省では「派遣ありき」の姿勢に最後まで抵抗した。「アフリカは風土、文化が違い、自衛官が生命をかける国益が見つからない」(自衛隊幹部)、「サミットを控えた外務省の都合だけで、危険地帯に部隊を派遣するわけにはいかない」(防衛省幹部)といった具合だ。 司令部要員の任務は、自国の部隊と参加各国との連絡調整にあたるのが一般的だ。「司令部要員だけを派遣しても、国際的にどれほど評価されるか疑問」(防衛省幹部)と冷めた見方が強い。 日本が迷走する中で、中国はPKO派遣や途上国援助(ODA)を通じてアフリカでの存在感を急速に増している。国連のPKO全体の国別派遣人数でも、中国はフランスに次ぐ2位の1977人(5月末現在)で、一方、日本の36人はG8の中では最下位。 派遣をめぐる政府内の議論は、国際政治の中での日本の役割や現地のニーズより、とにかく「貢献先」を探すことが重視された感がある。日本のPKOの戦略性のなさを如実に示している。 [コメント]今朝の新聞各紙を読むと、スーダン南部のPKO司令部要員に自衛官数名を派遣することと、外務省主導のアフリカPKO派遣に、防衛省や自衛隊が怒っているという記事が掲載されている。あえて陸自部隊の派遣を避けて、司令部要員とアフリカのPKOセンターに講師として自衛官を派遣するだけにとどめたという書き方である。 こんな言い方をしては申し訳ないが、なんとも防衛省や外務省担当の記者さんたちは、お人好しの人ばかりだと感心する。単にPKO司令部に要員だけ派遣して済むわけがないと言いたいのだ。司令部に派遣される自衛官は、情報収集のための先遣隊で、現地の事情を探り、陸自にどのようなニーズと可能性があるかの情報を取るのが任務である。偉そうに司令部のデスクに座り、会議だけに出てくるような軍人(自衛官)を誰も受け入れるはずがない。やがて日本から実動部隊が派遣されてくることを確信してPKO司令部に要員を受け入れたのである。 またアフリカのPKO訓練センターに派遣される講師(自衛官)は、アフリカ各国のPKO部隊の要員(将校)たちに、日本の憲法や自衛隊活動が制限(特異性)されていることを説明して、これからの自衛隊活動の理解を得るためである。すなわちスーダン南部のPKO司令部要員派遣と、PKO訓練センターの講師派遣は、日本がアフリカでのPKO活動に実働部隊を派遣するための胎動が始まったことである。中国が本格的にアフリカに出てきたので、日本の”アフリカは遠すぎる”という理屈(国益論)は通らなくなった。 これが世界標準の”軍事常識”なのだ。 なぜ防衛省や自衛隊はそのことを隠すのか。それはこの記事にもあるが、かつて政府や防衛省は十分な準備や調査を行わず、アフリカのモザンビークのPKO活動(1993年 48名※)と、ルワンダ難民支援(1994年)に陸自部隊(260名)を派遣し、特にルワンダでは非常に怖い体験がトラウマになっている。(空自もC−130輸送機と118名の人員を派遣)。もし再び、陸自部隊をアフリカに派遣することは、このルワンダでの失敗(恐怖)を克服する必要があった。(一例、ルワンダの自衛隊宿営地周辺では、夜になると略奪や襲撃の銃声が止まず、いつ宿営地が襲撃を受けるか緊張した。これはモザンビークの出来事ではない)。 また政治家たちも、次の選挙までに”陸自部隊のスーダン派遣”を強引に決めれば、自衛隊票を失うばかりか、戦争好きの”タカ派”として落選する危険も十分にあるからだ。まさにその洗礼を受けたのが北海道出身の町村官房長官(現在)である。イラクのサマワに陸自部隊の第1陣として、旭川の第2師団を中核に編制したため、ちょうどその時期の選挙で自衛隊票を失い、有力ベテラン議員ながら、危ないギリギリ当選という怖い思いをしている。そのような悪い印象を避けたいという政治家の都合もある。石破氏は次の選挙でその再現を恐れている。 今後、スーダン南部に派遣する陸自部隊は、道路整備の施設部隊にするのか、輸送を担当する後方支援の輸送部隊にするのか。そのことが次の焦点になってきた。 ※モザンビーク派遣の人数を45人と記述していましたが、読者の方から48名と指摘されました。改めて調べたところ、48名が正しいので訂正しました。(7月7日) |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。