小高い丘を上った住宅団地の一角に、分譲を始めた四棟の建売住宅があった。温暖化防止が最大テーマの北海道洞爺湖サミット開催と時を同じくし、「地球と共生する最先端のすまいを提案した」と温暖化対策をアピールしている。
大手鉄鋼メーカーの関連会社が川崎市に建設した。4LDKの二階建てで、一見しただけでは一般の住宅とさほど変わらない。だが、温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を居住時に64―32%も削減できるという。
年間の風向きを調べ、風通しがよいよう窓を配置した。高気密・高断熱化し、エアコン一台で各部屋に空気を循環させる。太陽光発電や壁面集熱パネル、太陽熱の給湯システムなどで自然エネルギーを利用し、屋上や壁面の緑化なども取り入れた。
特別な仕様ではなく、汎用性のある技術を活用したのがミソだ。ちょっとした工夫の積み重ねで、大きな差が出ることに、あらためて気付く。
温暖化防止に配慮した住宅への消費者の関心は確実に高まっている、と関係者は言う。住宅メーカーが商品開発を競うようにもなってきた。
二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を60―80%削減するのが、政府が打ち出した方針だ。日々の暮らしの中心である「わが家」の排出量の抜本的な見直しは、避けて通れないだろう。