米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)21日付の6面(企業ニュース面)左側下端には、韓半島周辺地図とともに「東海(トンへ)は韓国の海(East Sea: Sea of Korea)」というタイトルの白黒広告が載せられた。大きさは縦14センチ、横10センチ。広告費は1万ドル(およそ1000万ウォン)。

　広告主は誰だろうか。それは独島(トクト)いや、韓国に熱中している男、ソ・ギョンドクさん(31)だ。

　彼はここ3か月間、ウォール・ストリート・ジャーナル本社を足繁く訪ねて広告局長を説得した。最初は、「なんと荒唐無稽な広告だ」と眉を潜めた広告局長も、彼の粘り強さに負けた。ソさんはニューヨークのタイムスクエア広場に集まったおよそ400人の米国人に数種類の広告案を見せて「どちらが目を引くか」というアンケート調査まで行なった。

　広告費はどうやって工面したのだろう?　実はファストフード店などでアルバイトをして溜めたお金を全部注ぎ込んだ。

　「過激な民族主義者ではありません。ただの韓国人です」

　人一倍旅行好きのソさんは、ここ10年間米国、英国、トルコ、UAE、メキシコなど30か国のおよそ150都市を歩き回った。しかし、旅に出た彼に外国人たちは、「中国人?日本人なのか?」と聞いた。そのたびにソさんのプライドは大いに傷ついたと述べた。

　「ワールドカップなどで、韓国が広く知れわたったと思いがちだが、実際はそうではありません。ふと、外国の普通の人々に韓国のイメージをしっかり持ってもらわないといけないと考えました」

　その後、ソンさんは「韓国民間広報大使」を自任した。2002年には、米国の「芝のジャケット」専門家を噂に頼って捜し、サッカー試合場の芝で作ったジャケットを着て、ワールドカップを広報したし、フランス・パリのエッフェル塔広場で大学生の旅行者およそ200人とともに光復節(独立記念日)記念行事を行なったこともある。

　全世界を駆け回って各国の韓国広報状態を点検したこともやりがいのある出来事だった。東京大学インターナショナルセンター、オーストラリア国立大学韓国学研究所、ヨーロッパの有名図書館を訪ねた。

　「結果は無惨なものでした。図書館に備え付けられた韓国関連の本は一様に1970年代から1980年代のものばかりでした」

　その時からソさんは、さらに1個のトランクを用意した。10キログラムのトランクには下着、カップ麺の代わりに、最新の韓国語辞書、韓国広報ビデオなどがぎっしり詰め込まれた。ソさんは、この資料を図書館や韓国語文化院を訪ね回っては寄贈した。

　経費は、その時々に働いて稼いだ。英国では、若い旅行者たちに宿舎を紹介して紹介費を受け取った。フランスではファストフード店でバイトをした。お金を節約するため、一日一食を抜いたこともあった。

　今年7月27日には、米紙ニューヨークタイムズ(NYT)に、「独島は韓国の領土だ」という広告を出した。この広告は、国内・国外を問わず大きな反響を呼んだ。

　英国の放送局BBCは、「こんな広告は初めて」としながらインタビューを要請した。米国のニュージャジー州のある大学では、アジア研究所の客員研究員として働くことを提案したこともある。ある小学校2年生は、「ブタの貯金箱を割ってお金を送るから、頑張って独島を守ってください」というメールを送った。

　「よくやった」という3000通の激励のメールをもらった。しかし、ソさんはその気持ちだけを有難く受け止めたいという返事とともに丁寧に断った。日本語で書かれた抗議のメールも数十通送られてきた。

　「海外で知り合った外国人の友だちに説明すると、みんなが驚きますね。どうして国の支援を受けないのかと。しかし、私はこう答えます。国がすべきことがあれば、国民がすべきことがある。これからは国が何かをしてくれることだけを待つのではなく、自ら行動に移さなければ、とね」

　ソさんは、「少し恥ずかしいこともありますが、広報大使として働く以上、やるべきことが山積みしています」と述べた。

　最近ソさんは、ニューヨークの主要な博物館、美術館を頻繁に訪ねている。「文化の中心地であるニューヨークのメトロポリタン博物館、現代美術館に行くと、韓国語のオーディオ説明や案内パンフレットがありません。日本語、中国語はあるのにです。これは一種のプライドの問題です」

　ソさんは、「韓国を全世界に知らせることも重要だが、韓国と世界をつなぐことができる連結役も必要です。私がその役割を果たしたいと思います」と述べた。