米軍占領下の沖縄には高等弁務官という軍人のポストがあり、琉球列島米国民政府のトップとして絶大な権力を振るっていた。「沖縄の自治は神話にすぎない」。こう発言して県民の反発を買っていたのが、政治・経済面でさまざまな強権を行使したキャラウェイ高等弁務官だ。
半世紀近くも前の話を持ち出したのは、ほかでもない。最近、かの「悪代官」もかくや、と思わせるような人物が現れている。時代錯誤的な言動が目につくケビン・メア在沖米総領事のことだ。
米軍普天間飛行場の危険性に関して、総領事は11日「滑走路近くの基地外になぜ、宜野湾市が(住宅)建設を許しているのか疑問がある」と、従来の持論を繰り返した。つまり「基地の近くに後から勝手に住宅を造る住民と、それを許可している宜野湾市が悪い(だから騒音があろうが危険があろうが、米軍に責任はない)」などと、こう言いたいのだろう。
爆音訴訟で日本政府が主張している「危険への接近」理論と同じ理屈だ。普天間飛行場が米軍内部の安全基準に違反しているとする伊波洋一宜野湾市長の指摘にも反論したつもりかもしれない。何と独善的な考え方なのか。普天間基地がどういう経緯でできたのか知らないわけでもあるまい。単なる無知なのか。知っていながら知らないふりをしているのか。
宜野湾市伊佐浜では戦後、米軍がブルドーザーと武装米兵による銃剣で住民を脅し追放した。抵抗する住民を暴力で退けて家屋や農地を破壊、その後にキャンプ瑞慶覧を強引に建設した。先祖伝来の土地を追われた住民は、うち10家族がブラジルへの移住を余儀なくされた。何もない原野に基地が造られたわけではない。普天間飛行場も似たようなものだ。戦後、住民が避難先から戻ると、すでに基地が建設されていた。
総領事が責任逃れの根拠とする「危険への接近」論。6月の普天間爆音訴訟の判決でも「沖縄本島において居住地を選択する幅が限られており、普天間飛行場周辺の歴史的事情が地元回帰意識を強いものとしている」と明確に退けられている。土地を収奪された歴史的な背景を理由に、基地周辺に住宅を建設した住民に責任はないとしているのだ。
あらためて考えてみたい。総領事(館)の役割とは何なのか。赴任地の住民との友好親善が第1の目的と理解する。いたずらに挑発を繰り返し、地元との摩擦を大きくすることではないはずだ。
「外交官の基本はうそをつかないこと」。メア氏はあるインタビューで述べている。だが無知を基礎にした正直さほど始末に負えないものもない。平成のキャラウェイ気取りはやめてもらいたい。
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