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「男三人麻帆良ライフ 第二十八話(GS+ネギま!)」

宮本 (2007-08-10 19:06)
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金曜日の朝、伊達雪之丞は学園都市を歩いていた。
目の下には大きなくまができ、足元はふらついている。

「・・・今回は、しつこいな」

はあっとため息をつきガックリと肩を落とす。
火曜日の夜に追い回されて以来雪之丞は横島から逃げ回っているのだ。
最後などアーティファクトまで使って追ってきた横島。文珠を使われたり麻酔を使われたりしたらお終いだ。・・・おもに雪之丞のポークビッツが・・・

「ポークビッツってなんだ!!アナコンダとまではいかなくてもそれなりにある!!」

・・・どうやらポークビッツ以上アナコンダ未満らしい。

「とにかく何とか横島の執念を別の方向に持っていかねば。このままでは捕らえられてしまう。・・・ん?あれは・・・」

ナレーションに突っ込むという高度な技を見せるほどに憔悴した雪之丞は自分の進行方向でネギがなにやら愉快な踊りを踊っているのを発見して首を捻る。
そこに黒い車が走ってきて横付けした。
地面にいたカモが車にはねられ、車から見覚えのある少女が降りてくる。

「おはようございますネギ先生」

「いいんちょさん!」

車から降りた雪広あやかがにこやかにネギに声をかける。

「ここ数日程元気が無いとお聞きしましたが・・・」

「えっいえ・・・」

「先日のGWはどこかへ?」

「いえどこへも・・・」

「まあ!いけませんわ!!いかがでしょう?せっかくの週末ですもの私が『南の楽園』へ御招待させて頂きたいのですが・・・」

「え・・『南の楽園』・・・?」

「はい、南の島の海ですわ」

「え・・う・・海・・・ですか?」

ニッコリと笑って言うあやかにネギは戸惑っている。

「やっぱり海か」

「うんうん、情報は本当だったね。いいんちょわかりやすすぎ」

二人の話を聞き入っていた雪之丞の隣から少女二人の声が聞こえて来る。
早乙女ハルナと朝倉和美がそこにいた。

「ああ、おまえら確かネギのクラスの・・・」

この二人には散々ネギの事、薔薇疑惑でからかわれたので雪之丞は警戒心でいっぱいだ。

「まあまあそう構えないで・・・」

「そうそう、いい話を持ってきてあげたんだから」

「いい話?」

雪之丞は首を傾げる。

「そ、いい話。いいんちょは南の島のリゾートを貸し切りにしたらしいんだよね〜。3−Aの子達でそれに便乗しようってわけ。
そ・れ・で、女の子ばっかで男がネギ君だけじゃちょっと味気ないじゃん?雪之丞さんとピートさんと横島さんも来ないかな〜って思ったんだけど、どう?」

しししっと笑って朝倉は雪之丞にたずねる。
もちろん断られたらピートや横島を当たって結局は三人とも来させるつもりだ。
なぜならネタになりそうだし面白くなりそうだからである。もちろんハルナも同じような考えで二人は一致している。
・・・ハルナの場合はそこで得たネタを己のマンガに反映させる気満々だ。

そんな二人の考えをよそに雪之丞は頭から電球が飛び出て光り輝かんばかりにひらめいた。
今の状況を変えるにはこれは絶好の機会だ!!とばかりにニヤリと笑って口を開く。

「よし!分かった!!必ず二人も連れて行こう!!・・・おまえらのクラスのスタイルのいい奴らは全員連れて来てくれ!!」

声高らかに頼む雪之丞。

3−Aの規格外な者達を知っているし目の前の二人にしても中学3年とは思えないほど胸がでかい。
ならばあと一年で彼女達は高校生なのだからと横島を煽って彼の興味の対象を嫉妬からの怒りの行為(雪之丞へのちょん切り)から3−Aの面々へとむけさせればいい。
もし耐え切って中学生だからダメだとか言ったとしてもネギがあの少女達に囲まれるのを想像した横島が怒りと嫉妬をネギにむければいいのだ。

素晴らしい考えだとばかりに雪之丞はいい顔で笑う。

だが彼の内心など朝倉とハルナには分からない。
この人誘ったのちょっとまずかったんじゃね?誰か襲われちゃうかもよ?とばかりに顔を見合わせる。

「う、うん。頑張ってみる」

「そだね。じゃあ雪之丞さんも絶対残りの二人を頼むよ!!」

ピートと横島も連れてくるようにと念を押す。
流石に誰か一人はまともだろう・・・と。
・・・奇人警備員三変人に根拠の無い妙な期待をかけて二人は雪之丞に手を振ってその場を後にした。

「・・・なんか妙な態度だな。まあいい。これで助かる・・・はずだ!暴れる獣には餌を与えりゃいいんだ」

雪之丞はつぶやくと歩き出した。
・・・餌にされる方はたまったもんじゃないだろう。


           男三人麻帆良ライフ 第二十八話 


「雪広グループのリゾート島を一日貸し切りにいたしましたわ」

「へー、す、すごいですいいんちょさん」

青い空、白い砂浜、コバルトブルーの海・・・。
まさに南国、南の島。
飛行機でこの場所にやって来たネギが嬉しそうに笑うのを見てあやかは上機嫌だ。
来る途中の機内ではネギとずっと話していられたことだし夢のような休日だ・・・が!!

「よおおおーーーっし!!海だーーーっっ!!!!」

水着姿の3−Aの生徒達が海に飛び込む。
そして騒がしく遊び始めた。
それを見てあやかは冷や汗を流す。

「うぐぐぐ、これは一体・・・ネギ先生との二人っきりのパラダイス計画が。な、な、なぜこんなことにしかもクラスの半数以上が・・・!?」

「和美とハルナさんにもれたのはまずかったわね、あやか」

「あなた達もですっ!!」

穏やかに言う那波千鶴にあやかは突っ込む。
そんな様子に気づいた朝倉は海の中から声をかけた。

「いやーお金のない中学生にこんなすてきな御招待ありがとーいいんちょ」

止めとなったのかあやかはムキーッとわめき、千鶴になだめられる。

その近くの浜辺で明日菜はため息をついた。
着ているのは紺色の水着。

「なんで私までこんなとこ来なきゃいけないのよ」

「まあまあちょーど新聞配達もお休みやったしえーやん」

木乃香ははしゃぐわけでもない明日菜の様子に苦笑する。

「・・・どうだ横島、来てよかっただろう?」

「おお!素晴らし・・・じゃないけしからん!!中学3年生とは思えん体の子がいっぱいだ!!」

雪之丞が横島に言うと海の方をじっと見ている横島が鼻息も荒くうなずく。
ピートは雪之丞のあからさまな誘導に苦笑する。まあその誘導に引っかかって完全に雪之丞への追求を忘れている横島も横島だが・・・。
結局横島は南の島で美少女達の水着姿を見る事によって目を潤す事にしたようだがナンパなどのアプローチはしないというようにと自分に言い聞かせてここにやって来た。

ちなみに三人ともトランクスだ。・・・男の水着の事など聞きたくないだろうが念のため。
アナコンダのポロリありは脅威なのである。

そんな男どもの横ではまだ仲直りできていないネギが明日菜に逃げられてショックを受けていた。

そちらを見ていたピートは表情を引き締め、雪之丞を肘で小突きつつ口を開いた。

「じゃあ僕は泳いできますよ!!」

「ん?あ、おお!俺も泳ぐ!!せっかく海に来たのに泳がなきゃ損だからな!!」

雪之丞はなんだ?とばかりにピートを見るが彼が言わんとしている事に気づき、慌ててピートに続いた。
そう、彼らの友人のそちら方面の事には関わり合いたくはないのである。

横島はなんなんだ?とばかりに二人の後を追って海に行こうとする・・・。

「あ、あの・・・横島さん・・・」

だがか細い声で呼び止められて足を止める。

横島を呼び止めたのは赤い顔をした刹那。
彼女の水着は黒のビキニ。
雪のように白く、鍛えられ引き締まっていながら折れてしまいそうなほど細い肢体が眩しい。
その彼女の後ろの方にある木の陰では刹那を送り出した木乃香が見守っている。
横島も来ると聞いたので木乃香は昨日急いで刹那と一緒に刹那の水着を選んで購入した。そして現在。横島にこの水着どうですか?と聞いて来いと刹那を後押ししたのだ。

刹那は思い切って水着について口にしようとするが普段着るワンピースタイプのものと違い、布の面積の小さいビキニはやはり恥ずかしく、顔が赤くなるばかりでなかなか口に出せない。

「よう、刹那ちゃん。水着似合ってるぞ」

「え?あ・・・ほんと・・ですか?」

「うん。黒い水着で肌の白さが強調されて綺麗だ」

自分がアプローチする前に横島の方から言われて刹那は真っ赤になりうつむく。
そして木陰では木乃香がガッツポーズ。そして刹那にむけてサムズアップした。
刹那は恥ずかしがりながらも会話を続けようとする。そして横島の訝しげな視線に気づいた。

「う〜む、しかし刹那ちゃん・・・やっぱりありのままがいいと思うぞ」

「は?」

刹那は首を傾げた。
木陰では木乃香が侮り難し横島忠夫!!と慌てる。
まさか、まさか着用者である刹那も気づいていなかったあの水着の秘密に気づいたのか!?

「・・・おそらく五センチ。うん、底上げされているな。確かに五センチ底上げすれば引き締まったウエストラインと相まって素晴らしいバランスのボディーラインだ」

横島の視線の先は刹那の胸・・・。
その水着の装着は試着の際も今回も木乃香がやった。
『ちょっと大きくなってるように見えるやろ?寄せてあげてるんやえ』と言っていた木乃香。
しかし神鳴流の厳しいトレーニングを積み、運動はしっかりとしている刹那に寄せてあげるほど肉はない。
と、いう事は・・・。

「パットか〜。最近のはよくできてるから・・・いてっ!?誰・・・」

決定的な事を口にした横島だがこめかみに衝撃を受ける。
そして横を向いて自らに突きつけられているトンカチが視界に入り、冷や汗を流した。
そこには、鬼・・・いや、木乃香がいた。
顔は笑顔、顔は普段通りに笑顔なのだ。だが立ち昇るオーラに横島だけでなく刹那も怯える・・・。

「横島さん?ウチ、人には色々大事なものがあるとおもうんや・・・」

「は、はいい!!」

横島は右手でビシッと敬礼。
木乃香は思いやりとかその辺りの事を言いたかったのだが怯える横島は左手では自分が大事だと思うところ、某アナコンダ的箇所を押さえている。

「よかったなあ、せっちゃん。綺麗やって言われたえ」

「は、はひ!お嬢様!!」

刹那も思わず敬礼だ。
そして木乃香のオーラが消え、横島と刹那はホッとした。

「おーい!!横島さーん!ビーチバレーしよー!!」

その時、桜子がビーチに立てたネットの辺りから声をかけてきた。
横島はちらりと木乃香を見てオーラが出ていないのにホッとするとそちらに向かう。

「おーう、バレーボーラー忠の異名を持つ俺の実力を見せてやるぜ!!」

「ボーリングの時も似たような事言ってたじゃん。その実力をちゃんと使えたことあるの〜?」

「うぐ・・・。仕方がないやろ!女の子と遊びに行く事なんて滅多にないんやから!!」

釘宮円がくすくす笑って言うと横島は言葉に詰まり、女なんか〜っ!!と叫び始める。

それを見てニコニコ笑っている木乃香に刹那は恐る恐る声をかける。

「あ、あの〜お嬢様・・・パットって・・・」

「・・・五センチほどな〜。」

木乃香は答えると刹那から目をそらした。
ビキニのためにはほんの少しの底上げが望ましかったのだ・・・。
何の事だか詳しくは明らかにならなかったが・・・五センチほどらしい。


白い砂浜をタンッと蹴り、体を弓なりにそらせる。
161センチとクラスの中では真ん中くらいの身長のわりにはクラスでも大きい方の胸が揺れる。
そして番人の位置を確認、範囲内でターゲットがカバーしにくいであろう場所を検索、そしてニヤリと笑った。

「ッシャーーー!!!」

右腕を振りぬく。
バスケ部で鍛えた跳躍力、そして高い身体能力によってコートに打ち込まれた白いボールは白い砂浜へと吸い込まれていく・・・

「甘いわ〜〜〜!!」

だが、甘かったようだ。
番人は地を蹴り一気にボールの着地点に接近、そして砂浜との距離をすごいスピードで縮めるボールと砂浜の間に右手を差し入れた。
微妙な力加減と手の甲の角度によりボールは最高の位置に上がって行く。

「ちい!また止められたか。やるね横島さん。あんた最高だよ!!」

「ふ!裕奈ちゃんこそ。素晴らしい一発だぜ!!」

ボールを叩いた裕奈はニヒルに笑い、砂浜に転がっていた横島は立ち上がって笑い返す。
そして横島は己が上げたボールを仲間に託すべく声を張り上げる。

「風香ちゃん、史伽ちゃん!!今だ、やれ!!」

「「了解(ですー)!!」」

横島の声を受けて小柄な二人が砂浜を駆け、そして飛ぶ。

「「甲賀忍群!!分身アタック(ですー)!!」」

横島チームのエースアタッカー、鳴滝姉妹が空中でクロスするようになる。
まさに分身。どちらがスパイクを放つのか分からない!!
だが、敵チームの明石裕奈と大河内アキラは慌てない。ブロックにも行かずレシーブの構えをしている。

「えいー!!」

打ったのは姉の風香の方。
だが、致命的に身長が足りない・・・。
ボールは山なりにネットを越えて相手コートへと入っていく。
苦笑しながらアキラがそのボールの落下点に回り込んだ。

鳴滝姉妹がビーチバレーを二人同じチームでやりたいと言ったので苦肉の策で同じチームに男であり何かと芸達者な横島を入れたのだが・・・他のチーム相手では横島はその運動能力を存分に生かしてスパイクを一発も決めさせなかったのだ。
素晴らしいのは無駄に高い身体能力!!
そしてついに裕奈とアキラのスポーツウーマンチームとの対決になったのだ。
ひたすらスパイクを打ちまくる裕奈とアキラ、ひたすらレシーブしまくる横島。
時たま裕奈やアキラの強力なスパイクが決まったり、鳴滝姉妹の山なりスパイクが決まったりもしているがなかなかお互い点が入らない。

「ゆーな!」

アキラがレシーブしたボールを裕奈の方へあげた。
普段寡黙で大人しいアキラだがやはり運動部の性なのか本気になっている。

「アキラ!行け〜!!」

裕奈がトスを上げる。
見事に上がったボール。まさに絶好の位置。
アキラが跳躍すると胸から上までネットからでるほどの高さになる。
下で『ブロック〜〜〜』と言って手を伸ばしている鳴滝姉妹では届くはずもない。

「ふっ・・・!!」

鋭く息をはいてアキラは右手を振るう。
しかし、それはフェイント!右手は空振り、敵コートの横島がたたらを踏んだのが分かる。
アキラは今だ!!とばかりに準備していた左腕で右腕で狙うと見せかけていた方と逆の方を狙い、コントロールを重視してラインぎりぎりに打ち込んだ。

「ぬ、ぬうおおおおおおおお!!!!」

不意を突かれた横島は焦って飛ぶ。
だが、無情にもボールは横島の手の指先に当たったものの、ネットの方には上がらずコート外に転がる。
そして勢いを殺しきれなかった横島はゴロゴロと砂浜を転がり、うつ伏せになりピクピクとうごめいた。

「よ、横島さーん!!」

「しっかりするですー!!」

ヤバ気な動きを見せる横島に鳴滝姉妹が駆け寄った。
裕奈とアキラはハイタッチをして横島の防壁を打ち破った事を喜んでいる。


そんな光景を離れたところで座って見ていた雪之丞とピートは顔を見合わせた。

「・・・芸が細かいね」

「ああ。しっかし横島が女に囲まれているのをみるのは不自然なものがあるな」

雪之丞はつぶやく。
しかしピートはそのつぶやきを聞いて首を傾げた。

「・・・そうかい?そうとも思えないけど」

それを聞いて雪之丞は考え込む。
女性率が高すぎる・・・というより女性ばかりの美神女性事務所。
学校にいる机妖怪と横島の家の隣に住んでいる少女とも仲がいい、そして知り合いの神魔族は女性が多いし・・・。

「自然だ」

「うん。僕の場合先生は男だし、Gメンの事とか色々教えてくれた西条さんも普通に男だよ」

「おれは・・・まず白龍会で・・・」

つぶやいて雪之丞はガクガクブルブルと震えだす。
男ばっかりだった・・・が!!
『雪之丞が望むなら女になってもいいわよ?』
などとほざいてウインクをかましやがった筋肉質の友人が思い浮かぶ。

「・・・言いづらかったら無理やり言う必要はないよ。今の君には、弓さんがいるだろ?」

「そうだな!そしておまえにはエミの旦那がいるし、なによりおまえは普通にそのへんでもててるよな!!」

ピートのフォローを受けて明るい顔になった雪之丞は逆にピートをフォローしてやる。
二人はがしいっと握手をした。
そう、二人ともそれなりに幸せなのだ(ピートはエミと付き合っているわけではない)。だからこそ横島を羨ましいとは思わない。
と、いうより横島のところのアレをよく知っていたらたとえ女に囲まれていても羨ましいなどとは思えない。
普通ならばいくつ命があっても足りない気がする事だし・・・。

「まあ別に横島さんが女の子に囲まれててもいいんじゃないかな?・・・たまにはまともに」

「ああ、たまには命の危険の無い状態で囲まれてもいいかもな。
あいつも動き回ってるせいか変な事しようなんて感じじゃないし・・・」

「うーん、横島さんはいつも年下が相手だと積極的に出てない気がするからね。おキヌちゃんといい小鳩さんといい。積極的に行くとすれば同級生か、もしくは年上・・・。彼女達は中学生だからね。
それよりも今問題なのは・・・」

ピートはちらりと足元を見る。
つられて雪之丞も視線の先に目をやった。

「問題なのはこいつだな。腐ってやがる・・・」

「・・・雪之丞の兄さん、ピートの兄さん、そりゃないっすよ」

某○の谷で復活しきれなかった巨○兵を評するような雪之丞の言葉に木の実を両手で持ったカモが文句を言う。
その隣では浮かない顔をしたネギがため息をついた。
少し前までは海で3−A生徒達数人の胸でサンドイッチされていたネギだが、明日菜に無視されている事がかなり効いているようで凹んでいる。

「ふんっ、男らしくねえな」

「こらこら雪之丞。なんだかんだ言ってもネギ君は十歳なんだよ。それに明日菜さんもまだ中学三年生。少しくらいうまくいかないことがあっても仕方がない」

鼻を鳴らす雪之丞をピートがなだめる。
そんなピートにカモが声をかけた。

「ピートの兄さんも理由分かってるんなら教えてくださいよ」

「う〜、ピートさん〜・・・」

ネギが捨てられた子犬のような目でピートを見る。

「色々考えて諦めず明日菜さんとちゃんと話してごらんネギ君。友人同士や恋人同士だってぶつかり合う事はいっぱいあるんだ。
だけどそれを乗り越えて絆は深まるんだと思うよ。僕と雪之丞なんて最初は敵だったしね。
ほんと、一緒に戦うなんて嫌だったし雪之丞の考えなしの行動でまずい事になったから余計大っ嫌いになったよ」

「・・・おい」

じと目で見るピートを雪之丞はしつこいぞとばかりに睨み返す。

「君と明日菜さんは少しお互いの考え方がすれ違っているだけじゃないかな?今ちょっとした喧嘩をしていても、話し合ってすれ違いがなんとかなれば今まで以上にお互いを分かり合えると思うよ」

ピートが苦笑して言うのをネギはしっかりとうなずいて聞く。
なんだかんだ言って警備員三人の中で一番言葉に説得力があるのはピートだとネギは思っている。
熱血系の雪之丞の言う事は勢いがあり、男としては格好良いと思うのだが優等生で頭のいいネギには少し受け入れられない部分もあるがピートは丁寧に、比較的論理的に話すのでネギには合っている。
非常に感覚的で感情的な横島の言葉は横島には悪いがネギとしては分かりづらい・・・。

「・・・まあそういう事だな。向こうも気にはしているだろうし焦らなくていいと思うぜ」

雪之丞はそう言ってネギの頭をがしがしとなでた。
すると遠くから声が聞こえてくる。

「ああ!ネ、ネギ先生に再び悪い虫が!!」

雪広あやかの声だ!
彼女の後ろには那波千鶴、村上夏美、朝倉和美の三人もいる。
なにやらこちらをライバル視しているらしいあやかの登場に雪之丞とピートはまた薔薇扱いされてはたまらないとばかりにうなずき合う。

「海だ!泳ぎに行くぞ!!」

「そうだね!泳ごう雪之丞!!」

「そう言えばさっきから俺達こればっかだな!!」

「何でこんなことになっちゃったんだろうね!!」

雪之丞とピートは余計な誤解はごめんだとばかりに再び海に向かって走り出した。
その後姿はちょっと悲しげだった。

そんな二人を訝しげに見たあやかはネギに近づき、声をかけた。

「ネギ先生、先程は申し訳ありませんでした」

「いえ・・・そんな・・・」

「ネギ先生まだ落ち込んでいらっしゃいますの?何が原因で・・・」

「それは、あのええと・・・」

心配そうなあやかに聞かれ、明日菜の親友のあやかにならば話してみてもいいかとネギは口を開いた・・・。


その頃、横島と鳴滝姉妹の甲賀忍群+αチーム対裕奈とアキラの体育会系スポーツウーマンチームの戦いは佳境に入っていた。

「はあ、はあ、やるね横島さん!!」

「そっちこそな!!」

熱血している裕奈とそれにつられて熱血している横島。

「ううう、負けないよー!!」

「おねーちゃん疲れたですー」

疲れた様子の風香と史伽。
負けないと意気込む風香だが息の荒さとふらつきは隠せない。
結構泳いだし、ビーチバレーはなかなか体力を使う。

そんな二人をアキラは心配そうに見ていた。

「アキラ!サーブ!!」

裕奈の指示が出る。
これを決めれば勝ちなのだが守備範囲が異常に広い横島が決めさせるとは思えない。
アキラはとりあえずこれで決めるよう頑張って無理だったらそろそろ降伏するよう横島に進言しようと思った。

そしてボールが上がる。
予想通り難なくレシーブする横島。
スパイクするには絶好の位置、ネット際に飛んで重力に従い落下してくるボール。
それを見上げて鳴滝姉妹は再び奥義を放つべくうなずき合う。

「「甲賀忍群!!分身アタック(ですー)!!」」

叫んでジャンプしようとする。
だが疲れた足がもつれ、二人は空中でぶつかった。
当然ボールはそのまま地面に向かい、裕奈とアキラは喜び横島は「あ〜あ」とばかりに苦笑する。

しかし、空中でぶつかった鳴滝姉妹がそのままネットに突っ込んだ。
慌てて横島は駆け寄るが、危ないのは鳴滝姉妹ではない。
ネットに小柄とはいえ人二人の重さが加わったのだ。当然ネットはポールごと倒れる。
上部に力を加えられたポールは倒れていき、砂浜に突き刺さっていた二本のポールの片方が砂浜から無理な抜け方をした。
ポールはその力の方向に従い、抜ける時の力を使って飛んでいく。

「ゆーな危ない!!」

アキラが叫ぶ。ギャラリーの何人かも思わず叫び、気の弱い者は決していいものとは言えない未来予想図に思わず目を瞑る。

だが、決していいものとはいえない未来予想図は当たらなかった。

ビーチバレーの時の動きなどよりさらに速い動き。
横島はポールが抜ける瞬間に一気に加速、そしてポールと裕奈の間に割り込んだ。

「ぬがっ!?」

そして裕奈を庇うようにして飛んできたポールに代わりにぶつかった。

「おお!さすが横島さんアル。素晴らしい動きアルよ」

古菲の声が響き、目を瞑った者も目を開く。

「大丈夫か?裕奈ちゃん」

背中に手を回し、裕奈を軽く抱き寄せるようにしていた横島は一歩離れてたずねる。

「あ、ありがと・・・って、大丈夫かはこっちのセリフだよ横島さん!!『ぬがっ!?』とかって言ったじゃん!大丈夫なの?」

「おう。慣れてるからな!この程度じゃ大丈夫なのだよ。それに将来有望な美少女が傷物にならなかったからOKだ」

横島がそう言って笑うのを見て裕奈はホッとする。
しかし次の瞬間横島の表情が固まり、血を噴き出した!!
目の前で噴き出す血に裕奈は焦る。

「ちょっ!?大丈夫・・・って倒れる!誰か手伝って!!」

顔面からブシーッとばかりに大量に血を噴き出した横島の肩を裕奈は正面からつかんで支える。
駆け寄ってきたアキラが後ろから横島を支えた。

「ゆーな・・・前」

そしてアキラは裕奈に注意をしてやった。
「前?」とばかりに裕奈は横島の肩を支えたまま下を見る。
視界に入って来たのは最近大きくなってきて運動するのに邪魔になってきたけしからん箇所、黒の水着で包まれていたはずなのだが水着が無くなっている。
そしてその頂点には綺麗なピンク色の果実が・・・。

「きゃ、きゃーーー!!!!」

慌てて裕奈は両手で胸を覆い隠す。そして砂浜に落ちていた水着を慌てて装着しなおした。
横島を後ろから支えていたアキラは支えがなくなりたまったものではないが椎名桜子と釘宮円が駆け寄ってきて支えるのを手伝ってくれたのでなんとか横島を砂浜に寝かせる事に成功する。

「・・・かっこよく助けたんだけど」

「うん、ポロリを見て鼻血を出したってわけだね?」

「「裕奈狙った?」」

「狙ってない!!」

桜子と円がにやっと笑って同時に言うと裕奈は赤くなって突っ込む。
しかしまさか胸を見て鼻血を大量に噴出などと漫画のようなリアクションが見れるとは・・・。

「ちょっとごめんよ、お嬢ちゃん達!!」

「大量出血だね?たまにあるんだよ横島さんは。女性になれていなくてね。応急処置が必要だから連れて行くよ!!」

そこにやって来たのは雪之丞とピートの二人組み。
なにやら慌てた様子の二人に裕奈達は「はあ・・・」と言う事しかできない。

「「じゃっ!!」」

二人はシュタッと手を上げると二人がかりで横島を担ぎ上げ、猛スピードで走り去って行く。

少女達は顔を見合わせ、首を傾げた。


「・・・ここまで来れば大丈夫だろ」

「ああ。彼女達に見せるには忍びない・・・っていうか見せたら大変な事になる」

雪之丞とピートは横島を砂浜に転がすとゴクリと喉を鳴らした。

いつもこの瞬間は恐ろしい。
彼ら二人にもたらされるのは圧倒的な敗北感と絶望なのだから・・・。

横島の鼻から一気に血が出る。
ここまではいい。しかし、このような事を何度か行っている横島の肉体はそれに慣れた。
そして排出された血の代わりの血が彼の体内で急ピッチで作られる。
そして血は巡るべき場所へ一気に勢いよく流されるのだ・・・そう、後回しにされていた部分にまで・・・。

――― ぶちんっ!!
ゴムが切れる音がする。
この恐るべき瞬間を回避するために奴を封印するべく購入された拘束具。
それが、破壊された・・・。

「来るぞ、雪之丞!気をしっかり持て!!」

「おまえもな、ピート!!精神を破壊されるな!!」

うおお!と気合を入れつつ声を掛け合う二人。
だから二人は近づいてくる人物に気づかなかった・・・。

二人の視線の先では拘束から逃れた『奴』がその威容を誇るべく立ち上がる。

その姿、まさに威風堂々!!

「ピートさん、雪之丞さん・・・応急処置とは一体・・・。横島さんは大丈夫なんですか!?」

「師匠は、師匠は大丈夫っすよね!?」

「怪我かなんかならなんで移動させたん?」

聞こえて来た三人分の声。
押し寄せるプレッシャーに耐えていた二人はハッとして振り返る。

「な、なんで来たんだ!?」

「刹那さん、木乃香さん・・・見ちゃダメだーーー!!!」

叫ぶ二人。
だが刹那とその肩に乗ったカモ、そして木乃香の視線はすでに『奴』を捉えている・・・。
誰が鳴らしたか知らないがゴクリと喉が鳴る。
雪之丞とピートは最早手遅れか・・・と目頭を押さえた。

「あ・・ああ・・・」

刹那の口から言葉がもれる。

「・・・一応言っておくが、これは異常だ。日本人の平均サイズではない」

弓かおりとその友人達とともに海に行った時、水着ごしとはいえそのサイズを比べられた時の悔しさ、敗北感を思い出しつつ雪之丞はなるべく冷静に言う。
そんな彼の肩を気持ちは分かるとばかりにピートがポンッと叩いた。

「「ア、ア・・・アナコンダーーーーーーー!!!!!」」

「うわ〜・・・・お父様と全然違う・・・」

真っ赤な顔の刹那と、尊敬の念からか平伏したカモが久しぶりに登場した『奴』の名を叫び、赤い顔の木乃香も思わず声をもらした。

こういう事態に備えてトランクスの下にはいた拘束具・・・ビキニタイプの水着によって封印されていた完全体・アナコンダは開放された喜びからか雄々しく、そして猛々しくトランクス越しに存在を主張していた・・・。


「確かにねー最近の男子は情けないってゆーかかっこ悪いってゆーか元気ないところはあるよ」

「まーねー」

3−A生徒のうち数人がテラスでトロピカルジュースを飲みながら話している。
普段ならばリゾート客で賑わうであろうこの場所も今日は貸し切り・・・。
最高の休日をプレゼント(と言っても勝手についてきたのだが)してくれた雪広あやかに感謝だ。
日が沈み始めた空、そしてそれを反射する海は昼とはまた違った美しさを見せる。

「やっぱり男は戦ってないとね。目標に向けてさ」

「目標・・・夢か・・・」

ハルナが笑いながら言うとアキラが比較的真面目につぶやく。

「てことは付き合うなら年上ってことかにゃー」

「でも先輩とか兄貴も将来何になりたいかわからんとかよー言ーてたけど。
その点ネギ君は元気あってかっこいいと思うよ」

裕奈の言葉に和泉亜子がつぶやく。
そして照れたのかストローに口をつけ、ジュースを飲む。

「お、亜子もよーやくネギ君のかっこ良さに気づいたかなー?」

「てゆーてもネギ君10歳やし・・・」

「明日菜さーん!!」

嬉しそうなまき絵。
亜子はそれを聞いて苦笑するとその話の種のネギの声が聞こえて来た。

「まってー、明日菜さん話を聞いてくださいーっ!!」

「うるさいわねっ!ついて来ないでよ!!」

「あーん待ってー」

ダッシュで逃げる明日菜を泣きながら追いかけるネギ。
那波千鶴が作戦を立てて明日菜と仲直りをさせようとしたのだがそれが完全に裏目に出てしまい、心配したぶん明日菜は逆に怒ってしまったのだ。

そんなネギを見て少女達は苦笑した。

「ま、まあ10歳だしね・・・」

「情けない時もある・・・かな?」

「かわいいけど」

まき絵、亜子そしてアキラが言う。
そんな中修学旅行でのネギの事を知っているのどかは浮かない顔で口を開く。

「・・・でも、戦わなくて済むならほんとはそれがいいと思います。平和が一番・・・」

「ん?何言ってんだよ本屋。別に悪人と戦ったりする訳じゃないし夢のためにがんばるとかそーゆーことだってー」

「あうう」

突っ込まれてのどかは赤くなる。
そしてふと桜子が口を開いた。

「じゃあさ、横島さんとかは?ビーチバレーの時とかかっこよかったじゃん」

「うーん、鼻血出したのはマイナスだけどね。だけどいざと言う時頼りになって、運動神経よくってスポーツもできる。それに歌も上手いし芸達者!何より面白い!!顔も別に悪いってわけでもない。・・・って事でどう?ゆーな?」

「って何で私に聞くの〜〜〜!!」

釘宮円が適度に評価し、そして裕奈に話を振った。
振られた裕奈は文句を言うが桜子と円はニヤリと笑う。

「だって・・・」

「ねえ?」

「「ポロリしたし?」」

「ポロリって言うな!!」

桜子と円の悪戯っぽい笑いに裕奈は突っ込む。
そんな中、亜子が口を開く。

「あの三人って・・・警備員なんやろ?」

「うん、ネギ君もそう言ってたよ」

「警備員って、やっぱりあんなに傷だらけになるんかな〜」

亜子は顔をしかめる。
亜子の言わんとする事を察してアキラも困ったような顔をした。
喧嘩や暴力の嫌いな二人からしてみれば警備員三人の結構傷だらけの体は少し怖かったのだ。特に横島の胸から腹部にかけての部分と背中には大きな傷がある。
それは彼にとって忘れることの出来ない戦いでついた傷なのだが彼女らが知る由も無い。

「うーん、でも三人ともいい体してたよねー。かなり鍛えてると思うよ」

運動部の裕奈はうんうんとうなずく。

「一番鍛えてますって感じなのは雪之丞さんだったねー。背がちょっと低いけど腹筋とかボコボコだったよ」

「イケメンなのはピートさんやろ?やっぱ外国の人は目が違うな〜。でも女好きって自分で言ってたし・・・外国の人ってみんな女好きなんかな〜」

チャラい男は嫌いで野生的な感じの男の方がタイプな円が言い、正直顔にはドキッとしたがピートが言った女好きという言葉が大きくマイナスだと考えている亜子がそれに続く。

「この前カラオケ行った時の横島さんやっぱり目茶苦茶うまかったし意外に筋肉あるし・・・高得点じゃないかにゃ〜」

「へ〜、バスの中でもカラオケうまかったしね・・・って!桜子カラオケ行ったの!?」

桜子が言うと裕奈がたずねる。

「行ったよ〜。このまえ私と円と美砂で。代金おごってもらったし晩御飯もおごってもらっちゃったよ。あれ?ゆーなヤキモチ〜?」

「ないない」

裕奈は苦笑して手を振った。
確かにビーチバレーは楽しかったし庇ってくれた時の顔は格好いいとは思ったりもしたが自分には大好きな父親がいる。
裕奈のファザコンっぷりを知っている面々は裕奈を見て肩をすくめている。

「おーい、トロピカルジュース俺らにもくれ〜」

その時、雪之丞の声が聞こえてきた。
彼の隣にはピートと横島もいて近づいてくる。
話していた内容が内容なだけに少女達は笑った。

「ちょっとはしゃぎすぎてね、ジュース余ってないかい?」

笑いながらピートがたずねる。

「ありますよー」

まき絵が答え、手のつけられていないトロピカルジュースをあいている机に三つ並べてやる。
そこに男三人は座ってストローを口に含んだ。

話の流れの関係などから少女達の視線は自然に男三人の体に向かう。

「ん?なんだ?」

一番視線に敏感な雪之丞が気づき、首を傾げる。

「え?あ・・・さっきまで周りの男の人とかに目標とか夢とか持ってる人いないな〜って話してたからそっちの三人はどうなのかな〜と思って!!」

円が慌てて当初の会話の内容を言う。
周囲もいい体をしているなどと話をしていたため凝視してたなどと言えないのでぶんぶんと首を縦に振る。

「夢、目標・・・かあ。雪之丞はどうなんだい?」

ピートがたずねる。
すると雪之丞は分かってるんだろう?とばかりにニヤリと笑う。

「強くなる事だ。心も、体も、誰よりもな。」

自信満々。文句あるか?とばかりに言う雪之丞の目は本気だ。
そしてそれだけの訓練をしているからこそ、それだけの自信が出るだろう。

少女達はホーッとうなずいた。

「ピートはどうなんだ?」

多くの視線を集めてしまった雪之丞はピートに話を振る。

「そうだね。雪之丞と横島さんは知っていると思うけど国際的な警察組織・・・のようなものに入りたいんだ。
貧富の差に関わらず人のために働きたくってね」

ピートはそう言って照れくさそうに頭をかく。
だがそれは決して先程の言葉の本気さを損なうものではない。

最近の男子は情けない、かっこ悪い、元気ない・・・。
これらの言葉は彼らには当てはまらないのだと少女達は『大人の男』を感じさせる二人に感心する。

そしてふともう一人を見る。
もう一人の男はジッと空を見上げていてこちらの会話を聞いていたのかどうか定かではない。

「じゃあ横島さんは?」

「ん?ああ、悪いぼーっとしてた。何だ?」

裕奈がその男にたずねるとほんとにぼーっとしていたらしくたずね返してきた。

「横島さんの夢とか目標とかって何かにゃ〜ってさ。聞きたいんだけど〜」

桜子が首を傾げる。
すると横島はふっふっふっと笑った。

「美人の嫁さん手に入れて退廃的な生活を送る事だな!!」

「うわ!欲まみれだ!!」

「ある意味期待通りってゆーか・・・」

横島のあまりといえばあまりな夢に少女達は笑う。
雪之丞とピートも顔を見合わせて苦笑した。

「じゃあ三人とも体にある傷は?雪之丞さん強くなりたいって言ってたけどそれでついたの?」

「あー。修行とか、後は仕事とかでな」

「じゃあ横島さんは?かなり大きい傷がついてるけど・・・」

円が横島にたずねる。
それを聞いて雪之丞とピートはその『大きい傷』がついた時の事を思い浮かべた。
その場に自分達がいたら・・・とは何度も考えた。
何も出来なかったかもしれない、しかし何か出来たかもしれない。今となってはそんな事を考えることしか出来ない。
だが・・・

「これか?これはな、男の勲章だ」

横島は心の中では『最高の女』を助けるためについた傷なのだとつけくわえ、胸を張った。
雪之丞とピートは自分達の方がよっぽど引きずっているのだと苦笑した。
あの時なんの助けにもなれず、全ての中心にいた友人に色々背負わせてしまったのは今でも悔やまれる。

「おお、そろそろだ!すまんが俺はちょっと席をはずすぞ!!」

横島はそう言って立ち上がり、走り出す。
宮崎のどかと綾瀬夕映も少し用事があると言ってその場から横島が向かったのとは逆の方向へ歩いて行った。

「・・・ねえ、横島さんどこに行ったと思う?」

円がにやっと笑う。

「え?どこにって?」

裕奈が首を傾げた。
桜子がわかってるくせにーと肘で裕奈を小突く。そして小指を立てた。

「多分コレ!!」

「こ、これって彼女!?」

「正確には逢引き・・・。修学旅行をきっかけにクラスの子の誰かと仲良くなっていても不思議じゃないしね!!」

「そうそう。風香と史伽・・・ってのはないと思うけど、桜咲しゃんとか・・・怪しいにゃ〜」

桜子がわくわくしながら言うと他の少女達もそれぞれ考える。
そして一斉に立ち上がった。

「追跡するよ〜〜〜!!」

「「「「おーーー!!」」」」

拳を突き上げる少女達。
それを見たピートと雪之丞は止めても無駄か・・・とため息をついた。


「・・・っと、この辺でいいか。アデアット・・・と」

横島は仮契約カードを取り出し、アーティファクトを身にまとうと白い砂浜に座り込んだ。
その視界に映るのはコバルトブルー海の向こうの水平線、そしてそれに浮かび、沈んで行く赤・・・。

「昼と夜の一瞬の隙間・・・か。こっちでも、最高だぜ?」

そう言って横島はカードを掲げる。
中に写るかつての恋人。この昼と夜の一瞬の隙間、短い間しか見れない美しい光景を愛した少女。
彼女にむけて微笑む。
自分らしく、彼女が好きだと言ってくれた自分のままで真っ直ぐ前を向いて生きると決めた。
だけどたまに感傷的になるくらいはいいだろう。
そう、この短い昼と夜の一瞬の隙間くらいは・・・。


少し離れた建物の陰に一団はいた。

「・・・なんか、誰かに会うとかじゃないみたいだけど」

「うん、なんか近づきがたい感じ」

彼女達の視線の先ではプロテクターを着てマントを身につけた横島がカードを掲げ、夕日を見ている。
その表情は優しげで、それでいて儚い。
今まで見た事が無いような、様々な経験からくるであろう大人っぽい深みのある笑みに少女達は思わずほうっとため息をついた。

その横では雪之丞とピートがホッとしていた。
横島が夕日を見るだろうという事は分かっていたので彼女達がその時間を邪魔しそうになったら止めようと思ったのだが彼女らは横島の雰囲気のためか近づこうとはしていない。

「それにしても、やっぱりさっき言っていた夢とか目標って嘘っぽいよね〜。横島さんの本当の夢ってなんなんだろうね?」

「そーだねー。雪之丞さんとピートさん知らない?」

たずねられた二人は顔を見合わせる。

惚れた女と一緒にいる。
そんなありふれた夢も見られなかった。だが世界を救うという大それた事は結果的に行った。
あの男は何を夢みて、何を目標として生きるのだろうか?
想像もつかない。
しかし、一つだけ彼の心がけている事だけは知っている。
自分らしく、前向きに・・・。

あれだけの事があってもそれを忘れようとするでもなく、引きずるでもなく、しっかりと受け止めて前向きに生きる親友。
二人はそんな強さを持つ親友を誇らしく思う。

「さあな。あいつの夢や目標なんて知らねえ。とりあえず今はそんな事考えてねえんじゃねえか?まああいつには関係ねえからな」

「そうだね。そんなものなくても彼はしっかりと自分を持ってるから・・・」

「ほ〜、横島さんの事ちゃんと理解してるんだね〜。男の友情って感じ?」

二人がうなずき合うのを見て桜子が首をかしげた。
それを聞いて二人は笑い、横島は最高の親友なのだと答えると横島にならうようにして夕日を見上げる。

今にも水平線の向こうに沈もうとしている夕日は最後の輝きとばかりに海を真っ赤に照らしていた。


あとがき


まずはじめに・・・皆さん、ほんっとーにすみませんでした(土下座)

リアルでの忙しさがかなりやばいものになっています。
一時は理由を書いて続編を断念しようかという無責任な事も考えてしまったのですが、続編を待っていますというコメントをちらほらと見ましてこれは頑張らなければ・・・と復活した次第です。

今後はこれほどの間を空けずにチマチマと更新を続けていきたいです。
これからもよろしくお願いいたします。


さて、内容についてですが・・・

久しぶりに投稿した復帰作なのに中途半端(汗
ギャグも、ちょっと入れてみた男の友情も、そして刹那の出番も・・・中途半端になっちゃいました。
まあ話的に盛り上がるとこじゃないんでその辺はご容赦下さい。


マガジン本編でネギとかがえらい事になってる(涙
え?なにあの最強主人公?みたいな感じで、もうちょっと子供らしさがあってもいいかな〜と思いましたのでこの男三人麻帆良ライフでは最強ネギになりすぎないようにしていきたいです。


で、久しぶりのコメント返しです。
皆さんのコメントがあったから頑張らねば!という気持ちになりました。ありがとうございます。
これからも温かいコメントをお待ちしております。


>海鮮えびドリアさん
刹那の会話に求められるのは意外性です(笑
そして薔薇之丞は今回は薔薇な活躍っぷりがありませんでしたが麻帆良祭では活躍する・・・と、思います。
次話、遅くなって申し訳ありません

>黒鼠さん
チョンギリマル・横島バージョンはいつかだそうと思っていたネタでしたのでうけたようで嬉しいです。
コメントありがとうございます。黒鼠さんも頑張って下さい!

>藤堂尚也さん
ユッキーはなんとか逃げ切りました・・・裕奈の乳が犠牲になりましたが(笑
ありがとうございます。遅くなって申し訳ないです。

>ナニハナクトモさん
踏み込んではいけない領域雪之丞バージョンを今回はちょっと出してみました。
・・・悪夢の白龍会(笑
蛇神さまが数ヶ月の時を経て復帰です。
雪之丞、ピートに大ダメージを与えつつ・・・。

>遊鬼さん
明日菜は原作でも読者から好き嫌い分かれそうですね〜。
刹那にはとりあえず今後も頑張っていただきたいのですが・・・決まっちゃうとそれはそれでネタに困るんで着かず離れず(笑
間が空いて申し訳ないです。駄作ですが今後もお付き合いいただけると嬉しいです。

>念仏さん
漢・雪之丞は以外に女性の押しに弱そうですからね〜。弱みがいっぱい(笑
霊波刀の腹の部分で叩かれたのシーンは念仏さんの以前のレスを参考にさせていただきました。
レスが色々あると勉強になるものや、参考になるものがたくさんあります。

>冬8さん
堕ちていくユッキーはガンガン堕ちております。
この調子で高畑先生とともに堕ちていってもらおうかと・・・(笑

>ヴァイゼさん
暴走せっちゃんと暴走このちゃんがタッグを組んでいつか横島を落とすことがあるのでしょうか?
ネギ、明日菜などなど横島達が来た事で変わった事をもっとかければな〜と思っています。
最終目標は原作からの脱皮!!です(笑

>ジェミナスさん
木乃香が多少煽ったのですが・・・横島アイにはばれておりました。しかし最近のパットは凄い・・・(笑
知りたくも無いトリビアを今後も増やすように連載継続を頑張りますのでよろしくお願いいたします

>九頭竜さん
煩悩が崩壊してきている横島を止めたのは意外な事に裕奈でした(笑
蛇神さまが復活いたしました。蛇神様を崇拝する某おこじょは感涙したそうです・・・。

>アイクさん
諸葛孔明が持っていたという羽扇をもって満面の笑みを浮かべる木乃香が策士木乃香のイメージですな!
・・・今回の策は横島に見破られましたが(汗

>黒帽子さん
素晴らしい次回予告をありがとうございました。そして続きをお待たせして申し訳ありません。
少女セツナが性剣を発見したようです(笑
そして私も女性が大好きです!!(笑

>鋼鉄の騎士さん
男度がぐんぐん落ちていたユッキーでしたが最後に少し回復・・・かな?といった感じです。
横島の年齢なら別に中学生くらいならいいと思うんですが、やはり横島が逮捕されると連載完全終了なので自重していただきたいです(汗

>DOMさん
DOMさんがもとめるお約束をいつか実現するために戻ってまいりました!!
刹那が横島を押し倒すシーンを・・・ぜひ!!
横島によって形作られたチョンギリマルはいつかネギを・・・(涙

>名前がな(略さん
その突っ込みは予想していませんでした!!(笑
妄想が膨らんでしまった・・・

>ミアフさん
せっちゃん、エヴァ、鳴滝姉妹あたりも怪しいですね・・・
ちなみにチョンギリマルは瀬流彦先生辺りをこっちの世界で餌食にした後で西条をも餌食にするために元の世界へと帰還するかと

>HAPPYEND至上主義者さん
宮本流料理術お待たせいたしました。駄作ですがお納め下さい。
南の島で隆々と立ち上がった魔獣。やつは大切なものを奪っていきました、刹那の・・・心です。

>HOUMEIさん
刹那の暴走、チョンギリマルの暴走がありませんでした(汗
代わって現れたのが蛇神様でした。
いつか蛇神様VS初代チョンギリマルのリターンマッチを!!

>yujuさん
笑っていただけて幸いです。
前話は結構ギャグテイストが多かったので笑っていただけると嬉しいです。

>玖幻麒さん
ちびせつな・・・(笑
いいですね〜。ちびせつなとの仮契約!!
いつかちびせつなの活躍を描いた短編を書きたいです・・・ちょっと暇が出来たら(涙

>23さん
ブランクがありましたのでギャグの切れがいまいちかと思いますがお納め下さい。
南国の島で意外に横島は大人しく終わってしまいました▄█▀█●

>mimizukuさん
幼馴染のために・・・と頑張ってパットの大きさを調整するこのちゃん・・・いい子です(笑

>ヘタレさん
南の島編はキャラが多すぎてあんまり人々を動かせませんでした(汗
残念です。
エヴァとの訓練シーンや咸卦法など今後書いていきたいと思います。お待たせしてすみません。

>ウィルさん
初コメントへのコメント返しが遅くなって申し訳ないです。
おもしろいと言っていただけると嬉しいです。
千鶴さんの事については多少考えております。小太郎と千鶴さんとの絡みは捨てがたいので・・・(笑
今後もよろしくお願いします。

>powerLさん
横島がこの調子で木乃香の策にはまりつづけていったら・・・いつか、いつか異世界でカップリングが可能に!?

>hiroさん
横島のポジションはある意味羨ましいですよね〜。原作でも・・・。
しかし傍で見ているユッキーやピートにとっては恐怖でしょうな〜(笑
高畑先生のキャラはもっと飄々としたものだと思いますが、まあネタということで。

>Cynosさん
すみません、久々に更新です。
リアルの方が非常にやばい事になっていました。申し訳ないです。

>hiroさん(二回目)
更新いたしました。遅くなって本当にすみません。
皆さんのレスが見たくて投稿しました(笑
と、いうのはまあ少しありますが・・・やはり途中で投げるというのが嫌なのと、それとなんとか少し時間が出来たということ。それから久しぶりに見てみたら皆さんのコメントがついていたのを見て更新しようと思いました。
心配をおかけして申し訳ないです。

>黒帽子さん(二回目)
リアルが忙しかったです。申し訳ありません。
遅くなりましたが更新です。これからもちょこちょこと更新していきたいと思うので今後もよろしくお願いします。

>紗那さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
初めてこの作品を見て、面白いと思ってくださった方々が途中で止まってるのに気づいてがっかりするのはやはり作者として申し訳ないです。
これからもよろしくお願いします。

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