May 2007

May 24, 2007

バードストライクってなに?

バードストライク=直訳すると鳥・当たるですが、
飛行機に鳥が当たってしまうことをいいます。
鳥は同じ空の大先輩ですが、こういう事故は後を絶ちません。

鳥は高くても3000M程度までしか上がらないそうですから、
(それよりも上にいける鳥はごくわずかのはずです)
飛行機が巡航中にぶつかることはないでしょう。
空港への離着陸の際にぶつかることがほとんどです。

そもそも、空港とは広大な芝生が広がっており、鳥のえさである昆虫類も数多くいます。
当然、それを狙って多くの鳥がやってくるわけです。もともと空港とは鳥の多い場所です。
加えて、海や川に近いと、また鳥の餌場が多いことになり、さらに多くの鳥がやってきます。


このバードストライクは、日本国内だけで年間千数百件発生しています。
ぶつかってしまった鳥がかわいそうなのはもちろんですが、
実は飛行機にも大きなダメージになることがあります。

特に、エンジンの中に吸い込まれたときや、
操縦席の窓ガラスにぶつかったときはたいへんで、
飛行を続けられなくなる場合もあります。
海外ではバードストライクがもとで航空事故が起きたこともあります。

エンジンの中に吸い込まれた場合、エンジンに無数についているタービンブレードという
非常に繊細な金属の羽根をいためている可能性があります。
もっとも、鳥一羽程度を吸い込んでも大丈夫なように設計され、テストもしていますが、
最悪の場合にはエンジンの機能が停止することもあります。
どちらにしてもエンジンの精密な検査が必要となります。

また、エンジンが吸い込んだ空気の一部は燃焼以外にも、
機内の空調装置につながっています。
機内にほんのりと焼き鳥の香りがすることも・・・

操縦室の窓にぶつかっても緊急事態となりえます。
窓自体は頑丈に作られていますのでめったなことで割れたりしませんが、
割れなくても鳥の血が血のりのようにべっとりとガラスにつくことで、
視界がさえぎられて飛行が難しくなる場合もあります。

あとは、機体の先端部にある気象レーダーのドーム部分や、
翼や関連するフラップなどの部分、胴体などにもぶつかります。
構造が大きく破壊されなければ問題ありませんが、
ワシなどの大きな鳥とぶつかると、このあたりも問題になります。


また、飛行機に直接ぶつかる以外にも、ぶつかったあと滑走路にと鳥の死体があると、
それがさらに後のの飛行機の車輪で巻き上がって、
その飛行機のどこかにぶつかる可能性があります。

こういうわけで、管制事務所はバードストライクがあると
滑走路を閉鎖して鳥の死体を取り除く作業をします。
羽田など忙しい空港はは飛行機の便数が多いので、
この作業の間の10分程度、離着陸を待たされる場合があります。


また、管制事務所の仕事は他にもあります。
バードパトロールといい、鳥たちが滑走路に近づかないように、
広い空港を1日に何回もパトロールしています。

鳥を滑走路付近から追い払うには、散弾銃の空砲や
競技用ピストルを使って大きな音を出すのが普通です。
他にも、火と煙を出す花火みたいなものを使ったり、
鳥の嫌いな音を出す装置を使ったりと様々な工夫をしています。
最近は、鳥の嫌いなにおいを出す薬剤などというのも実験されているようです。


人間よりも鳥の方が空に関しては大先輩。
だからバードストライクは減らしたいものです。

May 17, 2007

空も「渋滞」!?

さて、空が渋滞するとどうなるのでしょうか。


というより、「なぜ」渋滞するのかといえば、
羽田空港のように全国から飛行機が集まってくるところ、
なんとなく混む感じがしますよね?

もうちょっときちんと言うと、
結局ボトルネックになっているのは、途中の空の高速道路は何車線分もあるのに、
着陸するときにはまた一車線に合流しなければならないからです。
地上の道路でも、合流する前後って、渋滞しますよね。

ですが、空を飛んでいる飛行機に、
「ちょ、ちょ、ちょっと止まって!」とは言えないので、
後続の飛行機が前の飛行機に追いつきそうなときには、
管制官が予め「スピードを落としなさい」と指示をしたり、
あるいはルート上にある「ホールディングポイント」という場所で
ぐるぐると飛行機を旋回させて順番を待たせたりします。

飛行機に乗っていて、たまに「空域混雑のため、旋回を指示されております」
といったアナウンスがあるかもしれませんが、こういったケースなのです。


最近では、通常よりも遠回りをさせることで時間をかけさせ、
スピードを落としたのと同じことをする、なんてこともやるようです。

たとえば、羽田空港に北向きに着陸する場合を考えましょう。
(風向きは当然北風ですね)
西日本方面から帰ってくると、たいていは静岡県上空あたりで
すでに高速道路を下りるように指示があり、高度を下げ始めています。

そして最短経路の場合、伊豆半島上空を通過して、伊豆大島、
千葉県の館山を通って、房総半島の山の中までやってきてから
羽田空港に向け降下します。伊豆半島上空からおよそ15分です。

これが混雑時は伊豆半島上空からちょっと南に回されます。
房総半島の外から大きく回りこんで、ちょうど鴨川のあたりから
まっすぐ羽田空港に向かって降下します。
これだと25分くらいかかることもあります。


しかし最近は、地球環境のことが話題になるようになりました。
つまり、上空で飛行機を待たせていると、その分、燃料を余計に消費し、
二酸化炭素が多く排出されてしまいます。

そういったことにならないよう、最近では
福岡にある航空交通管制センター(以下ATMC)という機関が、
空の交通量を制限します。

航空会社各社からは、あらかじめある飛行機が何時に出発して、
経路はどこを通って、という飛行計画が提出されていますので、
ATMCはぜんぶ計算してしまいます。
つまり、特定の時間の空の混み具合をすべて再現してしまうのです。
そして、混雑が予想される場合には、それぞれの飛行機に、
離陸の時間を指定して、交通量を規制するわけです。
ギョーカイでは「フローコントロール(Flow Control)」といいます。

羽田空港へ向け出発する飛行機などでたまに
「この時間帯、目的地羽田空港での混雑緩和のため、
管制機関より離陸時刻を指定されております。
当機の離陸時刻は○時○分です。」
というアナウンスがありなかなか出発しないことがありますが、
この場合はそういったケースなのです。


特に渋滞しやすいポイントを特別にお教えしましょう。
まず、国内線では羽田へ向かう飛行機。ほぼこれのみでしょう。
ただ、天候の関係で、天気がよくなり着陸に問題がなくなるまで待つ、
ということはあります。

国際線でも、そういうポイントがひとつ。
それは中国へ向かう飛行機。
中国と日本の上空ではそれぞれ管制機関が違います(当たり前ですね)。
日本から中国へ向かう航空路は、なんと実質2つしかありません!
(ただし、香港とマカオだけは特別で、そちらには別のルートがあります)
長崎から上海へまっすぐ向かうルートと、韓国から北京へ向かうルートです。
しかも車線数も10車線もなく、片側3,4車線しかない場所もあります。

日本、韓国、中国。それぞれの航空管制を担当する機関が違うことと、
韓国では軍事独裁政権があった時代に中国との航空路を拡張しなかったこと、
中国のほうでも、レーダーの配備が遅れ、
航空路をたくさん設定することができなかったなど
それぞれ事情があってこうなってしまいました。
今後数年のうちに、とりあえず車線数だけは増やしていくようです。

昨今中国の経済発展に伴い、JALやANAに限らず、世界中の航空会社が
日本上空を通って中国へ行く路線をたくさんつくっています。
するとどうしてもこの部分がネックになります。

そして成田空港発の飛行機がとばっちり(?)を受けて、
さきほどのATMCの交通量制限、フローコントロールを受ける場合があるのです。



乗客の皆様にはいつもお待たせして申し訳ありませんが、
空の渋滞につきましてもご理解をいただければ幸いです。

May 10, 2007

空の「高速道路」?


飛行機は空を飛ぶとき、自分の好き勝手、あちこち飛べるというわけではありません。

特に旅客機の場合、ほとんどの場合「管制官の指示に常時従って」飛んでいます。
管制官もいろいろな飛行機にいちいち「右行け〜、左行け〜」
と指示しているのも大変なので、「この道に従って飛んでね」と言えるように、
空には高速道路とも呼べる飛行機の飛ぶべき道が決められているのです。

その道路にもひとつひとつ名前がきちんとついています。
「国道1号線」よろしく、「A1」などの名前があります。
世界中の航空路の名前が重複しないようにしないといけませんから、
名づけるときは国際組織で決めます。

ちなみに「A1」は日本の三宅島から鹿児島、
台湾を経由して香港へ繋がるルートになっています。
台湾や香港へ行くときにはほとんどこのルートを通ります。

百聞は一見にしかず、東京周辺の航空路図をごらんいただきましょう。
enroute_chart
日本全国の上空に、このような航空路が無数に引かれています。
不思議なのは、空港から直接航空路が作られているのではない点です。
あくまで、航空路=高速道路であるため、
空港からはインターチェンジのような仕組みで航空路へ行くからなのです。

例えば羽田空港を離陸してから、福岡に行く場合には、
「Y20」という航空路まで、いったん木更津にある航空無線標識を目安に飛んでいきます。
木更津のあたりまで来たら、今度は米軍の座間キャンプにある標識まで飛んで、
そこから「Y20」に乗る、といった仕組みです。出発方式といったりします。
この例の場合には、座間を目安に飛ぶので、「座間デパーチャー」などといいます。


この空の高速道路は、そのまま使うだけだと一方通行、一車線の道になってしまいます。
どうやって普通の道路のように扱うかというと、空には高さがありますので、
高さを区切ってやればいいわけです。
たとえば、高度30000フィートは西行き、31000フィートを東行き、としてやれば、
対面2車線の道路と同じになります。

実際には、地形などにぶつからず、電波の受信も問題ない程度の高度(およそ6000m前後)から上を
およそ300mごとに区切って、大体片側10車線程度の道路と同じようにしています。
片側10車線てけっこう、すごいでしょ。

ただ、車の運転と違って、自由に車線変更はできません。
管制官にいちいちお伺いを立てて、許可をもらわないといけません。
場合によっては「他の飛行機がいる」などの理由で却下されちゃうことも。


しかし、こんなにぐちゃぐちゃとした航空路をよく迷わずに飛べるものです。
パイロットってすごい!・・・と感心していたのですが、
入社してから知りました。飛行機には自動操縦機能+優秀なカーナビがついているのです。
パイロットは離陸前に飛行ルートを指定しておけば、
空に上がってからはほぼ全自動で勝手に飛んでくれるのです。
ですから、管制官に言われる制限速度をコンピュータに入力しながら飛ぶだけでOKなのです。
いい時代だなあ。

ちなみに、こういったコンピュータができる前は、航空路もはるかに簡単なものでしたし、
「航空士」というナビゲーターもコクピットにいて、
常に計算盤をまわして飛ぶべき進路をパイロットに指示していました。

さて、そんな空の高速道路ですが、渋滞することもあります。
その話は次週・・・

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