January 2007

January 08, 2007

雪で飛行機が飛べない!ワケ

みなさま新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
早くもお正月になってしまいました。


さて、温めていたネタがいくつかあるのですが、
今回は雪と飛行機の関係について。



冬は特に北日本の空港では軒並み雪が降ります。
強く降っていたりすると、飛行機が飛べないといった事態がよく発生します。

いったいなぜ雪が降ると飛行機が飛べないのでしょう。


まずイメージできるのは、飛行機が地面で
つるつる滑ってしまうということでしょうか。

人間が歩くときも、クルマが走るときでも
つるつるした路面は嫌なものですが、それは飛行機でも同じことです。

まず地上を走行中にハンドルを切っていろいろな誘導路や
滑走路に行かなければならないのに、
つるつる滑ってしまって行けないという問題があります。

しかし、地上走行が出来ないから飛行機が出られない、
ということはまずありません。


むしろ、滑走路が滑りやすくなるため、
離着陸に必要な性能が得られないという可能性が高いのです。

飛行機はその性能上、滑走路の雪の深さは
せいぜい数cmまでしか許容できません。

しかも、人間の足で踏んでつるつるしているようだと
もう完全にお手上げになってしまいます。


北国の空港は雪には慣れっこですから、
相当な大雪で無い限りガシガシ除雪してくれますので
そこまで心配は要りません。

ちなみに、札幌の新千歳空港の滑走路が二本あるのは、
一本が除雪中でももう一本で離発着が続けられるようにするためです。


むしろ、普段あまり雪の降らない地方、
関東地方以西の空港は雪が「降った」だけならまだ大したことはないにしろ
雪が「積もり」はじめると一気に事態は一変します。

まず、雪質が北国と比べて悪く、いわゆる「シャーベット状」なため、
離陸や着陸の性能に与える影響が大変大きいのです。

加えて、除雪に慣れていないため、時間がものすごくかかります。
北国ならば滑走路一本1時間もあれば十分ですが、
慣れていないと3時間とか平気でかかったりします。



さて、飛行機が飛べない理由は滑走路の状態が悪くなることもありますが、
もうひとつ大事な理由があります。

「翼の上に雪が積もること」です。

たかが雪とあなどれません。
滑走路を走ってればそんなの吹き飛んじゃうでしょう、というのもとんでもない。

自動車をお持ちの方は経験があるかもしれません。
雪が車体に積もると、手で払えるような「雪」と、
その下に「氷」が出来るはずです。

車体の温度が空気よりも冷えているために、雪が溶けたものが
即座に凍り付いてしまうためです。

飛行機の場合にも同じ原理で、翼についた氷は
風で飛んでくれるようなものではないのです。

ではなぜ氷がついてはダメなのでしょうか。


飛行機の翼というのは“あの形”だからこそ揚力を生み出すことができます。
1ミリたりとも余計なものがついていると
それだけで離陸性能は大きく低下します。

飛行機の翼というのはそもそも、
離着陸時の低速度においても十分な揚力を生み出し、
かつ巡航時には燃費が良いように飛べるように、
かなりわがままな設計思想から生み出された繊細なものなのです。
機体整備のときにも翼の上は一部しか足を乗せることが出来ません。


というわけで、翼に雪を載せた状態では飛行機は飛べません。
滑走路に向かう前に、お湯と不凍液を混ぜた、防除氷液というのを
翼や胴体にかけて、雪や氷を落とし、
場合によっては滑走路に向かうまでの30分弱程度、
機体の表面で雪が凍りつかないようにします。

この液の成分は主にプロピレングリコール。
「モンダミン」や「リステリン」などの口腔洗浄剤に含まれる成分と同じです。
0度以下になっても凍らないので、
機体表面に氷がつくのを防いでくれるのです。


・・・しかし、これでもかなわない場合があります。
たとえば、「凍雨(とうう)」という天気の場合。
これは、雨として空から降ってくるものの、地上付近の気温が0度以下であるため、
降ってきた雨がたちまちのうちに氷になって、地面などを凍らせる天気のことです。

さすがに強い凍雨など、防除氷液を使っても翼が凍ってしまうような場合には
飛行機は飛べなくなってしまうのです。

また、防除氷液には有効な時間というのがある程度定められています。
大雪のときは防除氷液をかけはじめてから何分、
弱い凍雨なら何分、という具合にです。

ですから、その時間が経過しても離陸できないほど
滑走路付近で順番待ちがあったりすると、
もう一度防除氷作業のやりなおしになってしまいます。

普段雪の降らない地方では防除氷作業にも時間がかかり、
かつ滑走路も込み合いますから、この可能性は十分にあるわけです。



皆さんの日常生活から飛行機の運航まで広く影響を与える大雪ですが、
だいたいどんなときにこうなるかというと、
東京では、真冬よりも春先になった頃、数年に一度大雪が降りますのでその時。
東京以西では、ほとんどが強烈な冬型の天気のとき。
日本海で発生した雪雲が、太平洋側にまでやってくるようなときです。

こんなときは日本海側の都市である福岡や金沢はもちろん、
太平洋側の鹿児島や高知、広島、岡山、大阪、名古屋など
名だたる都市はほとんど雪の脅威にさらされます。

特に山の上にあるような空港(熊本、広島、岡山、高松など)は
強烈な冬型になると、いきなり雪が降っていたり、
雲がかかって滑走路が見えないなどの事態が発生します。

なんで山の上に空港を作ったのか・・・
もしかして利用者のためでなく、作るために作ったから?
え?作る人のために?え?


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