November 2006
November 03, 2006
床下はどないなってんのん?
お久しぶりです。
皆様お元気でしょうか?
個人的な転勤でバタバタしていて、
すっかり更新が遅れてしまいました。
ええ、それはもう大変な忙しさでして。
何たって「は」のつく空港への転勤ですから。
面倒くさかったとかネタがないとかでは決してありません。
さて、今回のお話は床下の貨物室について。
英語ではbelly(ベリー)とも、lower deck(ロワーデッキ)ともいいます。
客室のことをcabin(キャビン)とか、main deck(メーンデッキ)と言うのと同じです。
貨物室に搭載する物は、
まずお客様がカウンターで預けた荷物(baggage、バゲージ)。
郵便局から頼まれた航空郵便物(mail)。
それでもまだ余裕があるので、
普通は航空貨物(cargo)も積んでいます。
最近はこの航空貨物の需要が多く、
貨物専用の航空会社がたくさん設立されたり
貨物機(freighter、フレーター)が多く飛んだりするようになりました。
ここで、貨物室が実際どんなものなのか、
写真を見ていただいたほうが早いでしょう。
ちょっと画像が小さいですがだいたいこんな感じです。
(出典:商船三井ロジスティックス:航空ULDの種類とサイズ)
ここでお話しているのとちょっと内容が違うのですが、
航空貨物について、出典のサイトはなかなか詳しく説明してくれてます。
興味があったらぜひどうぞ。
機種によって違いますが、大きな飛行機はだいたいこんな感じです。
(大きな飛行機とは、客室の窓から地面までの高さが5m以上あるかないか、
客室の廊下が1列か2列か、といったことが目安です)
このような貨物室には、航空貨物用のコンテナがあり、
これをULD(Unit Load Device)といいます。
空港でよく、
こんなのや
こんなのを見かけませんか?
サイズに違いはあるものの、ULDは大きく2種類、
周りをアルミ板でおおった「コンテナ」と、
単に鉄板の上に積みつけて、
崩れないように固定した「パレット」に分けることが出来ます。
これらULDは、貨物や郵便なら貨物上屋で、
手荷物はソーティングというところで積みつけられて、
飛行機まで運ばれてきます。
貨物室に運び上げられると、
あとは貨物室の床にタイヤのようなものがついているので、
それを回転させることでコンテナを所定の搭載場所まで移動させます。
だいたいどんな飛行機でも、床下貨物室は前方と後方で別れています。
主翼の付け根の部分は燃料タンクがあったりするからです。
また後方貨物室の一番後ろは、コンテナが入らないほど小さいので(飛行機のお尻です)、
バルク貨物室といって、貨物をバルク(bulk)、つまりコンテナにいれず
そのまま搭載するスペースがあります。
だいたいは、コンテナに入りきらない手荷物などが載ることが多いようです。
また、そもそもコンテナが貨物室に入らないような小さい機体では、
床下がすべてバルク貨物室になります。
貨物専用機の場合には、メーンデッキにも貨物が載ります。
飛行機のエンジンや、F1カー、競走馬などさまざまなものを運びます。
この貨物室の中でも、コンテナなどを好き勝手に搭載してはいけません。
飛行機のバランスが後ろにいってしまうと、離陸のとき尻もちをついたり、
逆に前だと、前輪の脚が折れてしまうかもしれません。
安全はもちろん、燃費のいい重心位置というのがありますので、
それがうまくいくように、搭載計画をつくっています。
もちろん、取りおろしのしやすさは言うまでもありません。
たとえば、飛行機が到着して、まず真っ先に出すべきは
貨物、郵便、手荷物で言うとどれなのか、という問題です。
もちろん答えは手荷物です。お客様が荷物を待っていますからね。
つまり、出発地で積み込むときには、手荷物は一番最後なのです。
ですから、出発地ではまず貨物、ついで郵便、最後に手荷物、
とうまく載るように搭載計画を考えます。
もちろん、サイズの違うコンテナたちをうまく載せないといけませんから
計画を作る段階はまるでパズルです。
この搭載計画の第一弾は出発1時間以上前に作られます。
お客様はまだまだ空港に見えていない方もいますので、
手荷物については、過去の実績に基づいて予想しているわけです。
これが予想に反してたくさん出てきてあふれてしまったり、
逆に少なくてバランスが悪くなったり
と思ったら貨物課の人がバルク貨物室に目一杯載せてくれとせがんできたり…
(バルクにつむのは時間がかかるので、
こんなときは出発ギリギリまでバルクの扉は開いています)
いずれにせよ、「燃費のいい重心位置」というのは狙っても、
なかなか入るものではありません。
そして、この重心位置、最後にはパイロットが
確認しなければならないと航空法で決められているのです。
なので最後には重心位置などを書いた書類を
パイロットに渡します。
最近では無線で電報のように打ってしまうので
労力はほとんどかかりませんが、
以前はコクピットまで届けていたのです。
もちろんいまでもたまにコクピットまで係員が届けに行きます。
もし出発間際の機内で、旅客担当者と似たような地上職員が
バインダーになにやら書類を挟んでやってきたら、
重量バランスを届けにきた係員かもしれません。
見かけたら、「ナイスバランス!」と一声かけてあげてください。
(そんなときに限って、ニアピンにできなかったときだったりして…(^^; )