December 30, 2007
台風が羽田直撃!!の顛末
また投稿まで日が延びてしまいました。もう年末とは・・・
こんどは台風が来た時の羽田空港のお話でした。今年の9/6から7日にかけての台風の事例です。
このとき、台風は東海沖から伊豆半島へ上陸、そのあと関東地方の西側を通過していきました。台風の周りでは風は反時計回りですから、羽田では東よりの風がかなり強くなっていました。
ここで思い出していただきたいのが、羽田空港の滑走路とILSの有無です。
羽田には北風着陸(RWY34L,R)にはILSがあって、雨が降り天気が悪くても問題なく降りられますが、南風になると横風滑走路でしかILSが使えませんでしたね。すると、南東風が吹いて、かつ天気が悪い時はヤバイ、というお話でした。
さて、このときは東風で、70〜90度方向から風が吹いてきました。東京湾で全く障害物もないので、風がそのまま吹き付け、6日午後には10mを常に上回るような風でした。
90度方向(真東)の風だと、34で着陸する飛行機にとっては追い風になってしまいますし、かつ横風成分も大きいという厳しい状況ですが、雨も降り出しており16Lは最低気象条件の関係ですでに使えませんでした。
しかたなく34Lで運用を続けていましたが、パイロットからある報告が入り始めます。
「34L着陸直前で気流が悪くて注意が必要だ」

そう、34Lは東風になると、ちょうど(赤線で囲った)整備ハンガーの風下になります。東風が強いと、このハンガーによる気流の乱れが大きくなってくるのです。
ちなみに、このハンガーをもっと規模の大きい、たとえば山脈と置き換えることができます。山脈に置き換えると、乱れた気流は山岳波と呼ばれる、乱気流の一種になります。

山岳波による揺れは、山の高さと大体同じくらいの高度で、山からおよそ200-300kmほど先まで影響します。たとえば、冬の富士山やその他山脈による山岳波では、高度にして3000m前後、関東地方一円の気流が悪くなっています。現代の飛行機にとっては低い高度なので、上昇降下中に多少揺れる程度で大きく影響はありませんが、その昔には富士山のそばに低高度で近づいたBOAC(今の英国航空)機が乱気流の衝撃で機体がばらばらになって墜落しています。
・・・と怖い乱気流の親戚でもあり、そもそも接地寸前はパイロットでも一番気合が入る部分の一つですので、34Lの気流の乱れは「恐ろしい」とまではいかなくても、「いやな」ものといえます。
実は近年、この「気流の乱れ」を探れる装置が羽田には設置されています。ドップラーライダーというもので、レーザー光を空中に発射し、それが空気中のチリによって散乱する具合を計測して、風を測定しようというものです。
似たような装置にドップラー「レーダー」がありますが、これはいわゆる電波を発射し、それが雨粒にあたることによる反射の程度を測定しています。つまり、雨が降っていないと測定できません。

こちらがライダーによって測定された気流の乱れ具合を表示した画面です。たしかに、ハンガーの位置から東側で、一部黄色く表示されていますね。色が暖色系にいくと、乱れが大きいということをあらわしていますので、そこまで大きくはないにしても、着陸寸前に、やはりちょっとした気流の乱れがあるようですね。
まあ難しい話はさておき、ライダーから出力された画面を見れば、気流がどの程度荒れているのかは一目瞭然というわけです。今後は、パイロットに対して事前に気流の乱れを警告できるような仕組みを考えていくそうです。
ちょっと脱線しましたが、とにかく34Lはハンガー越えの風でひどく荒れていました。17時前後辺りから、「最後安定して着陸できない」としてゴーアラウンド、すなわち着陸のやり直しをする便が出始めます。そしてまもなく風の乱れの少ない34Rへ切り替えて着陸を始めました。
しかしそれでも台風による強い風なのでいわゆる「風の息」により34Rもかなり厳しい状況、そのうちに航空各社ほとんど同じタイミングで横風制限値付近の風となってしまいました。そのため羽田到着便は各社とも欠航の方針が決まり、各地で続々と欠航し、羽田へやってくる機材はなくなりました。
ここでJALとANAでは対応が分かれました。羽田にはまだ機材はあり、かつ離陸なら多少気流が悪くても、横風制限を越えなければできます。羽田にお客さんを残したくないと考えたのがJALで、ぎりぎりの風の中、タイミングを狙って飛んでいきました。
一方のANAは羽田到着便欠航の方針とほぼ同じく、羽田出発も欠航としました。もしここで出発させてしまったら、朝一番で羽田を出発できる機材がなくなってしまいます。結局、お客さんは羽田で泊まらなければなりませんでしたが、台風通過後の朝の便はもうほぼ定刻で出発できる状態でした。
このためJALは台風一過の朝の出発の機材がないため欠航便が出ましたが、結果的にはANAとお互い補い合ったので、「どうしても」というお客さんを運ぶことができたかな、というところですね。
飛行機の欠航の裏に、必ず機材繰りが考えられている。ちょっとしたトリビア(死語?)でしょうか。
次回以降は、「飛行計画」について、お話していこうかと思います。
こんどは台風が来た時の羽田空港のお話でした。今年の9/6から7日にかけての台風の事例です。
このとき、台風は東海沖から伊豆半島へ上陸、そのあと関東地方の西側を通過していきました。台風の周りでは風は反時計回りですから、羽田では東よりの風がかなり強くなっていました。
ここで思い出していただきたいのが、羽田空港の滑走路とILSの有無です。
羽田には北風着陸(RWY34L,R)にはILSがあって、雨が降り天気が悪くても問題なく降りられますが、南風になると横風滑走路でしかILSが使えませんでしたね。すると、南東風が吹いて、かつ天気が悪い時はヤバイ、というお話でした。
さて、このときは東風で、70〜90度方向から風が吹いてきました。東京湾で全く障害物もないので、風がそのまま吹き付け、6日午後には10mを常に上回るような風でした。
90度方向(真東)の風だと、34で着陸する飛行機にとっては追い風になってしまいますし、かつ横風成分も大きいという厳しい状況ですが、雨も降り出しており16Lは最低気象条件の関係ですでに使えませんでした。
しかたなく34Lで運用を続けていましたが、パイロットからある報告が入り始めます。
「34L着陸直前で気流が悪くて注意が必要だ」
そう、34Lは東風になると、ちょうど(赤線で囲った)整備ハンガーの風下になります。東風が強いと、このハンガーによる気流の乱れが大きくなってくるのです。
ちなみに、このハンガーをもっと規模の大きい、たとえば山脈と置き換えることができます。山脈に置き換えると、乱れた気流は山岳波と呼ばれる、乱気流の一種になります。
山岳波による揺れは、山の高さと大体同じくらいの高度で、山からおよそ200-300kmほど先まで影響します。たとえば、冬の富士山やその他山脈による山岳波では、高度にして3000m前後、関東地方一円の気流が悪くなっています。現代の飛行機にとっては低い高度なので、上昇降下中に多少揺れる程度で大きく影響はありませんが、その昔には富士山のそばに低高度で近づいたBOAC(今の英国航空)機が乱気流の衝撃で機体がばらばらになって墜落しています。
・・・と怖い乱気流の親戚でもあり、そもそも接地寸前はパイロットでも一番気合が入る部分の一つですので、34Lの気流の乱れは「恐ろしい」とまではいかなくても、「いやな」ものといえます。
実は近年、この「気流の乱れ」を探れる装置が羽田には設置されています。ドップラーライダーというもので、レーザー光を空中に発射し、それが空気中のチリによって散乱する具合を計測して、風を測定しようというものです。
似たような装置にドップラー「レーダー」がありますが、これはいわゆる電波を発射し、それが雨粒にあたることによる反射の程度を測定しています。つまり、雨が降っていないと測定できません。
こちらがライダーによって測定された気流の乱れ具合を表示した画面です。たしかに、ハンガーの位置から東側で、一部黄色く表示されていますね。色が暖色系にいくと、乱れが大きいということをあらわしていますので、そこまで大きくはないにしても、着陸寸前に、やはりちょっとした気流の乱れがあるようですね。
まあ難しい話はさておき、ライダーから出力された画面を見れば、気流がどの程度荒れているのかは一目瞭然というわけです。今後は、パイロットに対して事前に気流の乱れを警告できるような仕組みを考えていくそうです。
ちょっと脱線しましたが、とにかく34Lはハンガー越えの風でひどく荒れていました。17時前後辺りから、「最後安定して着陸できない」としてゴーアラウンド、すなわち着陸のやり直しをする便が出始めます。そしてまもなく風の乱れの少ない34Rへ切り替えて着陸を始めました。
しかしそれでも台風による強い風なのでいわゆる「風の息」により34Rもかなり厳しい状況、そのうちに航空各社ほとんど同じタイミングで横風制限値付近の風となってしまいました。そのため羽田到着便は各社とも欠航の方針が決まり、各地で続々と欠航し、羽田へやってくる機材はなくなりました。
ここでJALとANAでは対応が分かれました。羽田にはまだ機材はあり、かつ離陸なら多少気流が悪くても、横風制限を越えなければできます。羽田にお客さんを残したくないと考えたのがJALで、ぎりぎりの風の中、タイミングを狙って飛んでいきました。
一方のANAは羽田到着便欠航の方針とほぼ同じく、羽田出発も欠航としました。もしここで出発させてしまったら、朝一番で羽田を出発できる機材がなくなってしまいます。結局、お客さんは羽田で泊まらなければなりませんでしたが、台風通過後の朝の便はもうほぼ定刻で出発できる状態でした。
このためJALは台風一過の朝の出発の機材がないため欠航便が出ましたが、結果的にはANAとお互い補い合ったので、「どうしても」というお客さんを運ぶことができたかな、というところですね。
飛行機の欠航の裏に、必ず機材繰りが考えられている。ちょっとしたトリビア(死語?)でしょうか。
次回以降は、「飛行計画」について、お話していこうかと思います。
October 13, 2007
「ただいま天候調査中…」の意味は!? -その4-
さて、「この空港がヤバい!」でしたね。
しかし、よく考えてみるとILSが滑走路の両方にある空港というのは
日本には新千歳、成田、中部、関西、福岡くらいしかありません。
羽田は南風時のILSは横風用滑走路にしかついていません。
すると必然的に、風向き次第ではどこの空港も充分ヤバくなってしまいます。
しかし、天気が悪い時に決まった風向きがありますので、問題がない場合が多いのです。
たとえば霧がよくでる釧路空港。
釧路の霧は、海から流れ込んでくる霧です。
とすると、そのとき風は南風。
釧路空港の滑走路は南北になっていて向かい風で降りられますし、
霧でも大丈夫なカテゴリ3という最も精密なILSがついているのは南向きに降りる時です。
つまり、釧路では霧が出ていてもILSを使うことができるので、
ほとんどの場合問題ないのです。
というわけで、釧路は私個人的にはヤバくありません。
これを上回ってヤバい空港はたくさんあります。
やばい空港をリストアップしようかとも思いましたが、
あまりローカルな空港は得意でないので、
私の独断と偏見で、北から順に追っていきたいと思います。
ちなみに、北の空港は総じて雪に悩むことが多いです。(南は台風)
ILSがついている新千歳も例外ではありません。
ですからそれ以外で考えたいと思います。
北海道でいうならやばいのは女満別でしょうか。
南向き着陸用にしかILSがないので、
北風が強い&雪が降っているとかだともうどうしようもなくなる時があります。
あと特徴的なのが旭川。
滑走路が北向きにかなり傾いているため、雪があったりして
滑走路の状態があまりよくないときは、
せっかくILSが使える北向き着陸が性能上できないことがあります。
(よく身内では「滑り台」といったりします)
するとILSの使えない南向き着陸になったりして、運航できなくなる時があります。
東北地方だとメジャーなところでは仙台でしょうか。
東風になるとILSが使えなくなるのですが、
そういう時はかならず低い雲が広がって雲低高度が極端に低かったり、
場合によっては霧になることもあります。こうなると厳しくなります。
同じような事情を抱えた空港として三沢がありますが、
こちらも仙台以上にやばいのでしょう。
天気を見ていると真っ先に霧が広がっていますから。
関東〜北陸地方は特にやばいと感じるところはありません。
ただ、例として羽田空港の弱点をあげてみましょう。
それは南向き着陸にILSがないことです。
(南西向きの横風用滑走路にはILSがありますが)
ILSを使う時はだらだらと降りるというお話はしましたが、
東京の都心部上空は日本でなく米軍の管理になっているため、
日本の航空局の都合では航空路が設定できなかったのです。
(よくいう横田空域問題というものです)
同時に騒音の問題もあり、南向き着陸にはILSがないのです。
まあ羽田の天気が悪い時、大体は南西の風が吹いてるので、
横風滑走路を使え、特に問題はありませんが、
南東の風が強くなると障害が出てきます。
(次回お話する羽田空港の事例でこの弱点が出てきます)
中部〜近畿にかけて、ダントツのやばさは中部国際空港でしょう。
前にもお話しましたが、冬の季節風がもろに横風となるため
横風制限値を超えてしまうととたんに運航不可能です。
滑走路を南北に作ってしまったのが、本当に悔やまれる空港です。
ほかに私が注目しているのは神戸があげられるでしょうか。
冬の終わりにオープンしたばかりの空港なので、
まだ本格的な冬のシーズンを体験していませんが、
六甲山脈からの吹き降ろしの風はもろに横風、
ないしはILSが使えない西風です。
この横風が制限値を超えるようなものなのか、
西風の時には天気が悪くなるのか、興味があります。
中国、四国地方はやばくない空港のほうが少ないでしょう(笑。
特に岡山、広島、高松は山の中に空港があるため、
ちょっとした天気の崩れでもすぐに雲の中に入って、
いわゆる濃い霧の状態になります。
霧になってしまうとカテゴリ3のILSでないとどうしようもないのですが、
これらの空港には普通のILSしかついていません。
また、離陸についての最低気象条件も割ってしまっていたりするので、
降りれないし飛べない、という状況になっていたりします。
九州の空港では悪天候といえば熊本ははずせません。
しかし、熊本には霧でも大丈夫なカテゴリ3のILSがありますので、
西風がよほど強くない限り大丈夫な場合がほとんどです。
むしろ、南風の大分、東風の宮崎と鹿児島のほうがよっぽどやばいです。
地形の影響もあって、上記の風が吹いた時は低い雲が出やすく、
最終進入の時に有視界飛行が出来ない場合があります。
そうなると追い風でILSを使うしかなく、厳しい運航になることもあります。
沖縄方面は南風のときは全般に厳しいことが多いです。
たとえば那覇空港は南向き着陸にILSがなく、
管制官がレーダーの画面を見ながらILSと同じ情報を声で誘導します。
GCA(Ground Controlled Approach)といいます。
「もっと右だ」とか「もっと降下角を大きく」といった内容を指示します。
航空機に無線機さえあれば、他の装備がなくても
ILSと同じ情報が得られるメリットがありますが、
カーナビを見ず、声だけで車を運転しているのと同じですから、
操縦のしづらさは群を抜いています。
他にも特に石垣島は南風だとILSやGCAがない上、
雲低高度が低いことが多く、なかなかの厳しさといえます。
海外の空港では、日本から飛んでいる主な空港では
とくに厳しいところはありません。
各国の玄関口とも言える空港ですから、ILSが満足についていたり、
天気自体が日本のようにめまぐるしく変わる気候でなかったり、
といった理由です。台風や大雪に悩むことはありますがその程度。
さて、次回、更新をサボっていたのでもう季節が終わってしまいそうですが、
台風がくるとどのようなことになるのか、
今年9月6日から7日にかけての羽田空港の事例を見てみたいと思います。
しかし、よく考えてみるとILSが滑走路の両方にある空港というのは
日本には新千歳、成田、中部、関西、福岡くらいしかありません。
羽田は南風時のILSは横風用滑走路にしかついていません。
すると必然的に、風向き次第ではどこの空港も充分ヤバくなってしまいます。
しかし、天気が悪い時に決まった風向きがありますので、問題がない場合が多いのです。
たとえば霧がよくでる釧路空港。
釧路の霧は、海から流れ込んでくる霧です。
とすると、そのとき風は南風。
釧路空港の滑走路は南北になっていて向かい風で降りられますし、
霧でも大丈夫なカテゴリ3という最も精密なILSがついているのは南向きに降りる時です。
つまり、釧路では霧が出ていてもILSを使うことができるので、
ほとんどの場合問題ないのです。
というわけで、釧路は私個人的にはヤバくありません。
これを上回ってヤバい空港はたくさんあります。
やばい空港をリストアップしようかとも思いましたが、
あまりローカルな空港は得意でないので、
私の独断と偏見で、北から順に追っていきたいと思います。
ちなみに、北の空港は総じて雪に悩むことが多いです。(南は台風)
ILSがついている新千歳も例外ではありません。
ですからそれ以外で考えたいと思います。
北海道でいうならやばいのは女満別でしょうか。
南向き着陸用にしかILSがないので、
北風が強い&雪が降っているとかだともうどうしようもなくなる時があります。
あと特徴的なのが旭川。
滑走路が北向きにかなり傾いているため、雪があったりして
滑走路の状態があまりよくないときは、
せっかくILSが使える北向き着陸が性能上できないことがあります。
(よく身内では「滑り台」といったりします)
するとILSの使えない南向き着陸になったりして、運航できなくなる時があります。
東北地方だとメジャーなところでは仙台でしょうか。
東風になるとILSが使えなくなるのですが、
そういう時はかならず低い雲が広がって雲低高度が極端に低かったり、
場合によっては霧になることもあります。こうなると厳しくなります。
同じような事情を抱えた空港として三沢がありますが、
こちらも仙台以上にやばいのでしょう。
天気を見ていると真っ先に霧が広がっていますから。
関東〜北陸地方は特にやばいと感じるところはありません。
ただ、例として羽田空港の弱点をあげてみましょう。
それは南向き着陸にILSがないことです。
(南西向きの横風用滑走路にはILSがありますが)
ILSを使う時はだらだらと降りるというお話はしましたが、
東京の都心部上空は日本でなく米軍の管理になっているため、
日本の航空局の都合では航空路が設定できなかったのです。
(よくいう横田空域問題というものです)
同時に騒音の問題もあり、南向き着陸にはILSがないのです。
まあ羽田の天気が悪い時、大体は南西の風が吹いてるので、
横風滑走路を使え、特に問題はありませんが、
南東の風が強くなると障害が出てきます。
(次回お話する羽田空港の事例でこの弱点が出てきます)
中部〜近畿にかけて、ダントツのやばさは中部国際空港でしょう。
前にもお話しましたが、冬の季節風がもろに横風となるため
横風制限値を超えてしまうととたんに運航不可能です。
滑走路を南北に作ってしまったのが、本当に悔やまれる空港です。
ほかに私が注目しているのは神戸があげられるでしょうか。
冬の終わりにオープンしたばかりの空港なので、
まだ本格的な冬のシーズンを体験していませんが、
六甲山脈からの吹き降ろしの風はもろに横風、
ないしはILSが使えない西風です。
この横風が制限値を超えるようなものなのか、
西風の時には天気が悪くなるのか、興味があります。
中国、四国地方はやばくない空港のほうが少ないでしょう(笑。
特に岡山、広島、高松は山の中に空港があるため、
ちょっとした天気の崩れでもすぐに雲の中に入って、
いわゆる濃い霧の状態になります。
霧になってしまうとカテゴリ3のILSでないとどうしようもないのですが、
これらの空港には普通のILSしかついていません。
また、離陸についての最低気象条件も割ってしまっていたりするので、
降りれないし飛べない、という状況になっていたりします。
九州の空港では悪天候といえば熊本ははずせません。
しかし、熊本には霧でも大丈夫なカテゴリ3のILSがありますので、
西風がよほど強くない限り大丈夫な場合がほとんどです。
むしろ、南風の大分、東風の宮崎と鹿児島のほうがよっぽどやばいです。
地形の影響もあって、上記の風が吹いた時は低い雲が出やすく、
最終進入の時に有視界飛行が出来ない場合があります。
そうなると追い風でILSを使うしかなく、厳しい運航になることもあります。
沖縄方面は南風のときは全般に厳しいことが多いです。
たとえば那覇空港は南向き着陸にILSがなく、
管制官がレーダーの画面を見ながらILSと同じ情報を声で誘導します。
GCA(Ground Controlled Approach)といいます。
「もっと右だ」とか「もっと降下角を大きく」といった内容を指示します。
航空機に無線機さえあれば、他の装備がなくても
ILSと同じ情報が得られるメリットがありますが、
カーナビを見ず、声だけで車を運転しているのと同じですから、
操縦のしづらさは群を抜いています。
他にも特に石垣島は南風だとILSやGCAがない上、
雲低高度が低いことが多く、なかなかの厳しさといえます。
海外の空港では、日本から飛んでいる主な空港では
とくに厳しいところはありません。
各国の玄関口とも言える空港ですから、ILSが満足についていたり、
天気自体が日本のようにめまぐるしく変わる気候でなかったり、
といった理由です。台風や大雪に悩むことはありますがその程度。
さて、次回、更新をサボっていたのでもう季節が終わってしまいそうですが、
台風がくるとどのようなことになるのか、
今年9月6日から7日にかけての羽田空港の事例を見てみたいと思います。
August 14, 2007
「ただいま天候調査中…」の意味は!? -その3-
前回はILSが使える?使えない?という話題でした。
そこでまず、ILSとはそもそも何か、について簡単に解説いたしましょう。
ILSというのは、Instrumental Landing Systemといい、
日本語で言うと「計器着陸装置」となります。
もともと、夜間や悪天などでも安全に着陸するように考案された仕組みのことです。
人間の目の代わりに、滑走路に対してヨコ、タテ、キョリの情報が得られる計器があります。
まず、ヨコ。
滑走路の中心線にちゃんと降りられるように、ヨコ方向を誘導する電波があります。
ローカライザー(Localizer,LLZ)といいます。
滑走路の終端部分にたくさんのテレビアンテナのようなのが並んでいて、
中心線からみて左右で違う周波数の電波が出ており、
コンピュータがこの周波数の混ざり具合をみて
「もっと右」とか「このコースでよい」などの情報がわかります。
そして、タテ。
タテというのは、降下する角度を誘導することをいいます。
ふつうは、理想的な降下角である、3度を誘導しています。
グライドパス(Glide Pass)、あるいはグライドスロープ(Glide Slope)といいます。
これも原理はローカライザーと同じで、
理想的な着地点となる場所のそばの芝生にアンテナがあり、
降下角が大きすぎる(滑走路の手前に降りてしまう)領域と、
降下角が小さすぎる(滑走路を飛び越えてしまう)領域で
違う周波数の電波がでていて、
混ざり具合をみて、「もっと降下角を大きく」などの情報がわかります。
これらはコクピットの計器では、
ちょうど十字の線となって表示されています。
この十字の線が適切なコースを示しているので、
たとえば計器の右上に十字があったら、
もう少しコースを右にとって、降下角を小さく(機首を上げる)しないといけません。
また、キョリを知るために、
滑走路まで一定の距離のところに地上から電波を出しています。
外側から、アウターマーカー(Outer Marker,OM)、ミドルマーカー(Middle Marker,MM)、一番滑走路の近くがインナーマーカ(Inner Marker,IM)といいます。
ILSのある空港はOMとMMを持つのがふつうです。たまにIMをもつ空港もあります。
降下していくときに、こういったマーカーの上空をとおると、
計器のランプがそれぞれ色つきで点灯し(たとえばOMなら青)、
音がブーッ、と決まった回数鳴ります(OMなら長い音が2回)。
これでキョリを知ることができるわけです。
ただ、最近はDMEという別の距離計がILSにおいても使える場合がほとんどで、
それを使うことのほうが圧倒的に多くなっています。
以上の話をまとめると、この図になります。

(出典:釧路空港ホームページ、ILSイメージ図)
要は、ヨコ、タテ、キョリの情報を得られるのがILSだと理解してください。
あとは忘れてもらって構いません。
着陸に必要なこれらの情報が全部計器から手に入るので(人間の目を必要としない)、
電波の精度さえ保てれば自動着陸も可能なわけです。
・・・と一見万能なILSですが、地上や機上の設備が壊れた時はもちろん使えませんし、
なにより横風や追い風に対して制限があります。
横風が強いとそれにあわせて風見鶏のように機体を斜めにして着陸したり、
追い風でもそれにあわせた操作が必要で、
この技術はまだ自動で出来るレベルになっていません。
ですから前回お話した伊丹の場合、
南東風が吹いている時のRWY14だとILSがありませんから、
追い風の制限許容範囲内なら逆向きにRWY32を使うのがふつうです。
制限許容範囲内でILSが使えれば、多少悪い天気でも問題ありません。
ただ、風が許容範囲内でない場合、
ちょっと悪い天気だと結構すぐに最低気象条件をわってしまいます。
そして欠航につながるのです。
ですから、「今日のフライトは飛ぶのか」と考える時に
もっとも大事なのは風と言えるでしょう。
実際、ILSが使える風ならば、
なんだかんだで着陸できる場合がほとんどですから。
次回は「各空港、この風向きがやばいよ」編をお送りします。
そこでまず、ILSとはそもそも何か、について簡単に解説いたしましょう。
ILSというのは、Instrumental Landing Systemといい、
日本語で言うと「計器着陸装置」となります。
もともと、夜間や悪天などでも安全に着陸するように考案された仕組みのことです。
人間の目の代わりに、滑走路に対してヨコ、タテ、キョリの情報が得られる計器があります。
まず、ヨコ。
滑走路の中心線にちゃんと降りられるように、ヨコ方向を誘導する電波があります。
ローカライザー(Localizer,LLZ)といいます。
滑走路の終端部分にたくさんのテレビアンテナのようなのが並んでいて、
中心線からみて左右で違う周波数の電波が出ており、
コンピュータがこの周波数の混ざり具合をみて
「もっと右」とか「このコースでよい」などの情報がわかります。
そして、タテ。
タテというのは、降下する角度を誘導することをいいます。
ふつうは、理想的な降下角である、3度を誘導しています。
グライドパス(Glide Pass)、あるいはグライドスロープ(Glide Slope)といいます。
これも原理はローカライザーと同じで、
理想的な着地点となる場所のそばの芝生にアンテナがあり、
降下角が大きすぎる(滑走路の手前に降りてしまう)領域と、
降下角が小さすぎる(滑走路を飛び越えてしまう)領域で
違う周波数の電波がでていて、
混ざり具合をみて、「もっと降下角を大きく」などの情報がわかります。
これらはコクピットの計器では、
ちょうど十字の線となって表示されています。
この十字の線が適切なコースを示しているので、
たとえば計器の右上に十字があったら、
もう少しコースを右にとって、降下角を小さく(機首を上げる)しないといけません。
また、キョリを知るために、
滑走路まで一定の距離のところに地上から電波を出しています。
外側から、アウターマーカー(Outer Marker,OM)、ミドルマーカー(Middle Marker,MM)、一番滑走路の近くがインナーマーカ(Inner Marker,IM)といいます。
ILSのある空港はOMとMMを持つのがふつうです。たまにIMをもつ空港もあります。
降下していくときに、こういったマーカーの上空をとおると、
計器のランプがそれぞれ色つきで点灯し(たとえばOMなら青)、
音がブーッ、と決まった回数鳴ります(OMなら長い音が2回)。
これでキョリを知ることができるわけです。
ただ、最近はDMEという別の距離計がILSにおいても使える場合がほとんどで、
それを使うことのほうが圧倒的に多くなっています。
以上の話をまとめると、この図になります。
(出典:釧路空港ホームページ、ILSイメージ図)
要は、ヨコ、タテ、キョリの情報を得られるのがILSだと理解してください。
あとは忘れてもらって構いません。
着陸に必要なこれらの情報が全部計器から手に入るので(人間の目を必要としない)、
電波の精度さえ保てれば自動着陸も可能なわけです。
・・・と一見万能なILSですが、地上や機上の設備が壊れた時はもちろん使えませんし、
なにより横風や追い風に対して制限があります。
横風が強いとそれにあわせて風見鶏のように機体を斜めにして着陸したり、
追い風でもそれにあわせた操作が必要で、
この技術はまだ自動で出来るレベルになっていません。
ですから前回お話した伊丹の場合、
南東風が吹いている時のRWY14だとILSがありませんから、
追い風の制限許容範囲内なら逆向きにRWY32を使うのがふつうです。
制限許容範囲内でILSが使えれば、多少悪い天気でも問題ありません。
ただ、風が許容範囲内でない場合、
ちょっと悪い天気だと結構すぐに最低気象条件をわってしまいます。
そして欠航につながるのです。
ですから、「今日のフライトは飛ぶのか」と考える時に
もっとも大事なのは風と言えるでしょう。
実際、ILSが使える風ならば、
なんだかんだで着陸できる場合がほとんどですから。
次回は「各空港、この風向きがやばいよ」編をお送りします。