July 24, 2006

飛べジャンボ

先日お話しした管制官ですけれども、
管制官の仕事を理解するのにぴったりなゲームがあります。

「ぼくは航空管制官」というゲームです。
以下、公式サイトの解説です。


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航空管制官は、飛行する航空機と直接交信し、
時にはパイロット以上の沈着冷静な判断力が必要とされる、
極めて知的で責任の重い職業です。

そんな航空管制の世界を、
誰でも楽しめる”パズル風ゲーム” として再現したのが
「ぼくは航空管制官」シリーズ。

雲海を飛行する航空機、豪快なジェット音、
忙しく働く地上作業車、旅情漂う館内アナウンス…

そんな空港情景の全てを詳細な3Dで再現しました。

「いつでも好きなときに空港へ行けたら…」

そんな純粋な想いを、あなたのパソコン上で実現する、
航空ファン待望のソフトです。


「これだけ本格的ならば、きっと難しいのでは…」
そんな心配は全く無用です。
操作は、なんと「選択肢をマウスでクリック」するだけ。
初心者も楽しみながら理解できるチュートリアルもご用意しました。
航空ファンはもちろん、お子さんから年配者まで、
幅広い年齢層の方にお楽しみいただける、
ちょっぴり知的な頭脳ゲームです。

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管制承認をもらってから誘導路を走行し、滑走路に進入し、離陸…
また、着陸進入を開始してから、着陸して、駐機場に入るまで。

次から次へと管制官に引き渡されていくのが体験できます。


興味を持った方は公式サイトの体験版を一度ダウンロードして、
プレイしてみてください。
以外に簡単でびっくりだと思います。
チュートリアルがついていますので、専門知識も一切不要。
体験版のステージは通してプレイしても15分程度ですから、
ちょっとした暇つぶしにはちょうどいいかもしれません。

私は友人に紹介されて以来このゲームにハマり気味で、
このブログの更新も遅くなってしまいました。




閑話休題。
今回はいよいよ離陸のときのお話です。

まず復習ですが、
誘導路を走行して、滑走路の入り口まで来ると、
地上からタワーの管制官に引き継がれます。

タワーの管制官が離陸に問題なしと判断して、
「離陸を許可します(Cleared for take off)」
と命令し、航空機は離陸します。


ここでみなさん、
飛行機はなぜ離陸が出来るのでしょうか?

ジェットの排気を地面に叩きつけて、その反動で上昇している?
…のではありません。

飛行機の翼の形がヒントになります。
これを学問的に研究してしまうと大変なことになるので(笑、
今はかなり噛み砕いてしまいます。

スプーンの膨らんだほうを
台所などの水道から流れる水に当ててみてください。

スプーンが(なんとなくですけど)水にくっつきませんか?
しかも、水の流れがスプーンによって曲がり、速くなりますね。

飛行機の翼の上面にも、これと同じことが起きているのです。
翼の形が、上に向かって膨らんでいるため、
この上を空気がある程度速いスピードで流れれば、
ひとりでに翼には上向きの力、すなわち揚力が働きます。

ですから、飛行機が飛び上がるのは、
エンジンをふかすことでスピードを上げ、
そうして翼に揚力を生み出しているからなのです。

飛行機が飛び上がるのに、
なぜか向かい風がいいと言われる理由もこれです。

向かい風が強ければ、大してエンジンをふかさなくても、
すでに翼の上にはかなりのスピードで空気が流れ、
揚力も生まれやすいのです。

飛行機が追い風で離陸することはまれにしかありませんが、
こうして考えれば当たり前だと納得できますね。

ちなみに脱線になりますが、着陸のとき向かい風なのも同じ。
飛行機自体のスピードは落ちても、
向かい風なので翼には揚力たっぷり。
十分にスピードを落として余裕を持って降りてこられます。
追い風だと、降りる分には大して不便はないかもしれませんが、
飛行機は揚力を作るためにかなりの速さで降りてきてますので、
地上についてから滑走路で減速するのが大変です。


離陸のときに話を戻しましょう。
飛行機はある程度速さがあれば、勝手に浮かびます。

しかしパイロットたちが離陸のとき目安にしている速さは、
勝手に浮かぶ速さではないのです。

まず、離陸のときというのは大変な速度が出ています。
そのため、離陸滑走中に何か起きたときに、急には止まれません。
調子づいてスピードが出ていたところでブレーキをかけても、
もしかしたら滑走路を越えてしまう可能性があります。

そこでまず、パイロットには離陸決心速度というのがあります。
エンジントラブルなどが起きたとき、
この速さよりも遅ければブレーキをかけ、
これよりも速くなっていればとりあえず離陸はしてしまう、
というものです。これをV1(ブイワン)といいます。

そして、次に機体が浮き上がる準備をします。
勝手に機体が浮かび上がってくれるといっても、
安全な上昇率(坂道の勾配率に直すと3%弱)を確保しなければ、
滑走路の延長にある地上の建物とぶつかってしまうかもしれません。

上昇率を保つには、飛行機の鼻先を上げてやればよいので、
浮き上がる前に鼻先を上げておきます。
鼻先を上げる速度を引き起こし速度(VR、ブイアール)といいます。

VRを超えてさらに加速を続けると、
ほどなくして機体が地面を離れます。
揚力が機体にかかる重力に勝った瞬間です。

さらにほどなくして、飛行機は安全離陸速度(V2)に達します。
地上10mまで浮かび上がったところにおける、目標速度です。

これらは予め離陸の前にコンピュータ計算され、
乗員たちは、速さ何ノットに達したら操縦桿を引いて鼻先を…
というのをメモしてコクピットに貼っています。
離陸のときは、そのメモと速度計とのにらめっこです。



一連の離陸の流れをお話しましたが、
我々地上職員としては、V1やVRよりも、
最大離陸重量のほうがはるかに気になる数字と言えるでしょう。

空港の滑走路の長さは決まっていますので、
この実際の長さ以上には使えません。
ところが、重たい飛行機というのは、
重い分滑走路を長く使わないと飛べないのです。

コンピュータ計算で、
離陸して上空10mに上がるまでに必要な長さを計算して、
その長さとして実際の滑走路の長さをほとんど使うつもりだと
いったい飛行機はどのくらいの重さになってもよいのか。
これを算出しておきます。

地上職員としては出来るだけたくさんのものを
運んでもらったほうが会社にとってお金になるので、
たくさん積み込みたいのですが、
最大離陸重量が壁となり、積み込める貨物や、
載せられるお客様の人数に制限が出る場合があるのです。

ですから、チェックインのときに
必ずお客様の預け手荷物の重さを計量しますが、
そういう理由なのです。

このあたりのお話はたくさんあるので、また今度いたしましょう。

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