May 10, 2007
空の「高速道路」?
飛行機は空を飛ぶとき、自分の好き勝手、あちこち飛べるというわけではありません。
特に旅客機の場合、ほとんどの場合「管制官の指示に常時従って」飛んでいます。
管制官もいろいろな飛行機にいちいち「右行け〜、左行け〜」
と指示しているのも大変なので、「この道に従って飛んでね」と言えるように、
空には高速道路とも呼べる飛行機の飛ぶべき道が決められているのです。
その道路にもひとつひとつ名前がきちんとついています。
「国道1号線」よろしく、「A1」などの名前があります。
世界中の航空路の名前が重複しないようにしないといけませんから、
名づけるときは国際組織で決めます。
ちなみに「A1」は日本の三宅島から鹿児島、
台湾を経由して香港へ繋がるルートになっています。
台湾や香港へ行くときにはほとんどこのルートを通ります。
百聞は一見にしかず、東京周辺の航空路図をごらんいただきましょう。
日本全国の上空に、このような航空路が無数に引かれています。
不思議なのは、空港から直接航空路が作られているのではない点です。
あくまで、航空路=高速道路であるため、
空港からはインターチェンジのような仕組みで航空路へ行くからなのです。
例えば羽田空港を離陸してから、福岡に行く場合には、
「Y20」という航空路まで、いったん木更津にある航空無線標識を目安に飛んでいきます。
木更津のあたりまで来たら、今度は米軍の座間キャンプにある標識まで飛んで、
そこから「Y20」に乗る、といった仕組みです。出発方式といったりします。
この例の場合には、座間を目安に飛ぶので、「座間デパーチャー」などといいます。
この空の高速道路は、そのまま使うだけだと一方通行、一車線の道になってしまいます。
どうやって普通の道路のように扱うかというと、空には高さがありますので、
高さを区切ってやればいいわけです。
たとえば、高度30000フィートは西行き、31000フィートを東行き、としてやれば、
対面2車線の道路と同じになります。
実際には、地形などにぶつからず、電波の受信も問題ない程度の高度(およそ6000m前後)から上を
およそ300mごとに区切って、大体片側10車線程度の道路と同じようにしています。
片側10車線てけっこう、すごいでしょ。
ただ、車の運転と違って、自由に車線変更はできません。
管制官にいちいちお伺いを立てて、許可をもらわないといけません。
場合によっては「他の飛行機がいる」などの理由で却下されちゃうことも。
しかし、こんなにぐちゃぐちゃとした航空路をよく迷わずに飛べるものです。
パイロットってすごい!・・・と感心していたのですが、
入社してから知りました。飛行機には自動操縦機能+優秀なカーナビがついているのです。
パイロットは離陸前に飛行ルートを指定しておけば、
空に上がってからはほぼ全自動で勝手に飛んでくれるのです。
ですから、管制官に言われる制限速度をコンピュータに入力しながら飛ぶだけでOKなのです。
いい時代だなあ。
ちなみに、こういったコンピュータができる前は、航空路もはるかに簡単なものでしたし、
「航空士」というナビゲーターもコクピットにいて、
常に計算盤をまわして飛ぶべき進路をパイロットに指示していました。
さて、そんな空の高速道路ですが、渋滞することもあります。
その話は次週・・・