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【コラム】

筆洗

2008年7月13日

 小学校の道徳の授業は「うそをつかないで明るく生活しようとする態度を養う」ことを、目標の一つにしている。抽象的な理想論ではなく、自分自身の日々の行動として考えさせることが大切だという▼例えば夕方遅くまで遊んで家に帰った時に母親に怒られ、つい「友達の家で宿題を一緒にやっていた」とうそをついてしまった子どもがいたとする。母親に「怒ってごめんね」と謝られ、うまくやったと思っている▼その子が授業が終わった時、母親をだましていることを悔いて、正直に話して謝ろうと思ったら授業は目標に一歩近づいたのである。全国小学校道徳教育研究会の荻原武雄元会長が自著で解説している▼大分県の教員採用試験をめぐる汚職事件のことは、子どもたちにどう話したらいいのか。教育行政のトップが「組織的と言われても反論できない」と謝罪するほど、先生たちの世界に不正がはびこっている▼せめてもの救いは「自分の行動について正直に話をしたい」と、警察に自ら出向いた先生がいたこと。役職に就きたくて密(ひそ)かに金品を渡していたのだが、教え子にうそをつき続けることに耐えられなかった、と漏らしているらしい▼逮捕されている県教委の幹部も、知っていることをすべて話す気になった、との報道がある。身に覚えがあるなら、自分の行動で子どもたちに生き方を教える時である。

 

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