国の公文書管理のあり方について、有識者会議(座長・尾崎護元大蔵次官)が中間報告を福田康夫首相に提出した。お粗末な体制の見直しを根本から図るという、あるべき姿としては妥当な内容である。
問題はこれからだ。行政府全体を巻き込んだ改革には抵抗もあるだろう。骨抜きにならぬよう強力な指導力が必要になる。
公文書は国の歴史の記録である。その適切な管理が極めて重要であることは、論をまたない。
中間報告は、公文書管理の明確なルールを作ること、国立公文書館など担当機関の機能を強化することを求めている。政府は10月の最終報告を受け、来年の通常国会に公文書管理法案(仮称)を提出する方針だ。
公文書の作り方、保存の仕方は、事実上各官庁任せだ。役所での保存期間が終わる際も、官庁側がイヤと言えば国立公文書館に移管されず、廃棄されてしまう。
公文書管理法は作成から保存、移管、公開に至るまで、全官庁に共通の基準を作ることを目的にしている。同じ基準であれば第三者がチェックしやすく、勝手に隠したり廃棄したりできなくなる。移管に際しても、公文書館の判断を官庁の意向より優先させる仕組みをつくる。
しかし、職員42人の独立行政法人という国立公文書館の現状はまったく力不足だ。中間報告は数百人規模の職員が必要としたうえで、組織を国の機関にするか、裁判や国会記録の移管も見据えた「特別の法人」とするかの2案を示した。米国の担当機関は2500人規模だ。組織の見直し、強化は当然だろう。
公文書管理のような施策は重要であっても先送りされやすい。しかし公文書は日々作成されている。改革は急ぐ必要がある。
欠かせないのは各官庁の協力である。議論が具体化してくれば、官庁は仕事の仕組みを変えることを求められる。公文書はもともと国の財産だ。職員や一官庁の恣意(しい)的な取り扱いは許されない。行政府全体が意識改革できるかどうかが、今後のカギを握っている。
福田首相は公文書管理に関心が高いことで知られる。改革の強力な機関車役になってほしい。