主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を終えた福田康夫首相が、八月下旬にも召集される臨時国会を前に内閣改造に踏み切るかどうかが政局の焦点となっている。改造しても、見送ってもメリットとデメリットがあり、福田首相にとっては難しい判断が求められる。
自民党内で改造をめぐっての発言が活発化してきている。小泉純一郎元首相は「今の閣僚たちは良くやっている。しかし、自前の内閣でないというのも(首相は)気にしているでしょう」と福田首相の胸中を推し量っている。福田内閣が安倍前内閣から閣僚をほぼそのまま引き継いだ「居抜き」で発足した経緯があるからだ。
福田首相は、これまで道路特定財源の一般財源化や消費者庁創設などの施策を打ち出してきたが、内閣支持率の向上には結びついていない。洞爺湖サミットでは各国首脳を相手に議長の大役を務めた。ここで内閣を改造すれば、福田首相の政権基盤を強化する機会となるのは間違いなかろう。
福田首相選出を支えた各派閥の事情もある。当選五回以上の「適齢期」の議員の入閣希望は高まっている。二階俊博総務会長は「首相はサミットの成功を背景に、自らの政策を思い切って推進したいとの決意をみなぎらせていると思う。改造に大いに期待する」と、党内の期待感を代弁している。
一方で、改造への慎重論も消えてはいない。安倍前政権のように、新閣僚から事務所費などで不祥事が起きることを警戒する声がある。「政治とカネ」の問題は、政権に致命傷となるのは確実だ。
福田首相も昨年末に「年明け改造」を示唆する発言をしながら改造を見送った。通常国会で民主党との本格的攻防を前に新閣僚から問題が起きることを懸念したためとされる。このため改造しても小幅にとどめるのではとの見方もある。
しかし、改造を見送れば政権の求心力が一気にしぼむ懸念もぬぐいきれない。守りの姿勢のままでは衆院解散・総選挙で「福田首相では戦えない」として、首相に退陣を求める声が高まることは避けられまい。
福田首相の支持率が低迷を続けてきた背景には、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」で翻弄(ほんろう)され、首相のリーダーシップが発揮されなかったことに国民の不満があるからだ。
加藤紘一元幹事長は「首相の政治哲学を出すとすれば内閣改造だ」と述べた。政権浮揚を狙う福田首相にとって改造の判断は試練だろう。
早期化が進む大学生の就職活動に一石が投じられた。国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会の大学三団体が、企業による学生の採用選考の活動時期が早すぎるとして、日本経団連など百三十七の業界団体・就職情報関連企業に是正を求める要請書を出した。
就職活動の時期について、大学三団体が連名で企業側に申し入れるのは初めてである。それほど問題が深刻化していることの証しだろう。
要請書は、学生の就職活動開始時期が三年生の夏ごろに早まっている点を挙げ「学生の能力・資質を高めるための貴重な学びの時間を奪っている」とし、採用活動は四年生の夏休みからにしてほしいと訴える。
確かに大学側の危機感は理解できる。専門教育が本格化する三年生の夏に就職活動が始まると、ゼミなどの授業が開店休業状態に陥るという。ちゃんとした教育ができる環境とは言い難い。短大の場合、一年生の夏から就職活動に入ることになる。
企業の採用活動は、優秀な人材を少しでも早く確保しようと前倒しされてきた。新卒者の採用ルールを定めた企業と大学の「就職協定」が一九九七年に廃止されたのがきっかけだ。
廃止当時、採用活動の開始時期は四年生の夏と決められていた。しかし、強制力のない紳士協定だったため水面下で動く会社が増え、協定は形骸(けいがい)化した面があった。
企業側の要請で協定は廃止されたが、就職活動の早期化に対する一定の歯止めにはなっていた。国際的な競争激化で、より高度な専門能力を備えた人材育成が大学に求められる中、就職活動の早期化は弊害が大きい。適正化に向け、ルールの厳守化策などを盛り込んだ協定復活を考えるべき時期である。
(2008年7月12日掲載)