「国の主張を崩していく」--。原告たちが力を込めた。佐賀地裁判決を不服とした国側の控訴を受けて控訴した原告側が11日開いた記者会見。「開門すれば水害や塩害が起きる」などとして原告の主張を聞こうとしない国に業を煮やした原告団は、「開門しない理由に挙げていることはすべてうそっぱち」と厳しく批判。新たな戦いに踏み出した。【姜弘修、鈴木美穂】
「国の主張を一つ一つ崩していくことで、裁判所も理解してくれると思う」。「よみがえれ!有明訴訟」の馬奈木昭雄弁護団長は、理詰めで再び勝訴を勝ち取る自信を見せた。
そのうえで、若林正俊農相が10日夜に環境アセスメント実施を表明したことについて「アセスは単なる茶番。開門しないことを決める手続きに過ぎない」と切り捨てた。一方、今後の国との協議方法については「和解協議も求めていくが、国は駄々っ子で、話し合いのテーブルにつきそうにない」との見通しを示した。裁判所が個別に争点整理して審理を進める「進行協議」になりそうだという。
原告漁民の一人で、県内でノリ漁業を営む西村昭彦さん(42)は「農水省前での抗議にも参加し、控訴断念を訴えてきただけに国の控訴は残念」と話し、国への不信感を改めて訴えた。
一方、長崎県の諫早湾内の漁業者ら41人が国に潮受け堤防の開門を求めている訴訟の第1回口頭弁論が14日、長崎地裁で行われる。原告は、佐賀地裁が諫干と漁業被害との因果関係を認めた諫早湾内と近郊の漁業者で、原告弁護団は開門実現に向けた和解勧告を地裁に申し入れる方針。
この訴訟は佐賀地裁訴訟とは別に4月末に提訴された。初めて諫早湾内の漁業者が訴訟に加わっている。弁護団の堀良一事務局長は「佐賀地裁判決からすれば、全員が勝てる。控訴審を待つまでもなく、最初から開門に向けて一つ一つの論点をつぶしていく作業を裁判所に求めたい」と話している。
毎日新聞 2008年7月12日 地方版