県立高の男性教諭(45)が5月、飲酒運転で懲戒免職になった。教職員の不祥事は教え子へのわいせつ行為や盗撮、無断欠勤、死亡事故など昨年度から13件相次ぎ、県教委は対策に頭を悩ませている。一方で、5月の謝罪会見で、県教委は教諭が部活動の合宿で、他県の教員と飲酒していた事実を当初、個人情報を理由に「知人と飲食」としか説明せず、報道陣に追及され、ようやく明かした。飲酒運転に社会が厳しい目を向ける中、真に問うべきモラルとは何だろうか。【近藤希実】
◆紛糾した会見◆
男性教諭は同月5日午後11時過ぎ、大津市内の路上で車を運転中、呼気1リットル当たり0・20ミリグラムのアルコールが検出され、酒気帯び運転で検挙された。同教諭はバスケットボール部の顧問で、その夜はゴールデンウイークを利用した全国20校の強化合宿の最終夜。他県の教員6人と市内の焼き肉店で飲食し、3人を宿泊先の高校のセミナーハウスに送る途中だった。
同月27日、県庁で会見した県教委は当初、個人情報保護を盾に「知人6人と飲食」とだけ発表。相手が教員であることはもちろん、3人を送っていく先さえ明かさなかった。
「送り先がなぜ個人情報なのか」「知人は未成年や公務員ではないのか」と押し問答が続き、ようやく概要が明らかになるころ、会見は延べ4時間半に及んでいた。
◆やまぬ不祥事◆
教職員の不祥事は昨年度相次ぎ、地方公務員法上の懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)は11件に上り、中でも、わいせつ事案では3人が逮捕された。県教委は今年1月、わいせつ事案は逮捕されなくても原則免職とする新基準を設定。4月に県教委主事が県青少年育成条例違反容疑で逮捕された際は、従来なら処分決定時に開いていた会見を逮捕時に前倒しし、綱紀粛正に臨む姿勢を見せていた。
しかし、県教委は5月の会見では、処分された教諭と一緒に飲酒し、車に同乗した教員らの所属は最後まで公表しなかった。報道陣から「生徒を指導するべき立場の先生が合宿中、しかも他県の教員も同乗した飲酒運転ですよ」と詰め寄られても、「指揮監督下にないから」と釈明。他県の教委に連絡もしなかったという。
◆低下するモラル◆
全国の交通事故は厳罰化などで減少傾向にあるが、故意の信号無視や酒酔い運転などに適用する危険運転致死傷罪の適用件数は、導入した02年の322件から379件(06年)と増加。モラルを欠いた運転手による事故は、むしろ増えている。県内でも昨年、飲酒運転による死亡事故が7件発生し、8人が亡くなった。
TAV(交通死被害者の会)滋賀支部の田中博司代表(58)は「子どもにモラルを説く指導者なのに、あまりに認識が足りない」と指摘。「学校は社会教育の根本。飲酒運転する本人が一番悪いのは当たり前だが、起こった事の対応より、予防策が必要」と訴える。
不祥事を起こす教員は、県内で1万人以上いる教員のごく一部に過ぎない。しかし、県教委自ら「過去に例がない」と絶句するほどの事態で、ただ謝罪会見を繰り返し、マニュアルを作っても、問題の解決にはならない。
毎日新聞 2008年7月5日 地方版