世界文化遺産の宮島・厳島神社(広島県廿日市市)が、地球温暖化の影響で、最近の7年間で、本殿と舞台などを結ぶ回廊の冠水がそれ以前の10倍に急増していることが環境省の委員会がまとめた「国内の温暖化の影響に関する報告」でわかった。1990年代は年平均で1回程度だったが、現在は年平均11回にも上っている。
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厳島神社は平安時代末期の1168年に平清盛が造営した。潮が満ちると全体が海に浮かぶかのように見える構造で、独特の美しさで知られる。年に数回の冠水はあり、1990年代(平成2〜11年)の記録では、最大年に4回の冠水があり、平均は1・3回だった。床板のすき間から水を逃す構造で、昔から冠水することを前提にした対策はとられていた。
しかし、2000年代に入ってからは、01年(平成13年)に12回を記録したのをはじめ、04年(16年)は17回、06年(18年)には22回と急増し、年平均は11回になった。
この理由について岡山大理学部の塚本修教授(気象学)は、「海水温の上がったことによる海水面の上昇が一因」と分析する。昭和31年に約300センチだった広島湾の平均潮位は平成18年には約330センチに上昇するなど、瀬戸内海の平均潮位が50年で約30センチ上昇していることが影響しているという。
潮位の上昇は、地球規模の海水温の上昇によるものとみられる。瀬戸内海だけでみても、広島湾で昭和48年に17.5度だった平均海水温は、平成14年には18.5度と、30年間で1度上昇している。また、本来は四国沖を流れる暖流の黒潮が、海水温の上昇で勢いを強め、瀬戸内海にも流入していることも瀬戸内海の潮位上昇の要因ではないかと推測されている。
厳島神社では、16年に台風18号の影響で国宝の左楽房が倒壊するなど、これまでにない規模の被害が出ているが、これについても潮位の上昇が背景にあるといい、今後も同様の被害が増加する危険性があるとされている。
厳島神社では、台風被害後、回廊の高さを上げることや、土塀を回廊前に設けることが話し合われたが、「景観を壊す」として見送られた経緯がある。環境省でも先月、研究者らと厳島の冠水対策が話し合われたが結論は出なかった。
海洋構造物の研究をしている広島大学大学院の高木幹雄元教授(64)は、「潮位が上がり続ければ回廊は水没し、社殿にまで海水が及ぶ危険がある。早急な対策が必要」訴えている。
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