東京・秋葉原の無差別殺傷事件のあった八日以降、殺害や爆破などを予告する書き込みが、インターネットの掲示板で増えている。全国の警察は警戒を強化し、「予告犯」の逮捕に乗り出した。広島県警も二件で少年二人を逮捕。「秋葉原を真似(まね)る」という記載が目立つが、「いたずら目的」とみられる動機からは、社会を混乱に陥れてしまうという想像力の欠如が浮き上がる。
「まさか、こんな騒ぎになるとは思わなかった」。JR広島駅(広島市南区)での無差別殺人を掲示板で予告したとして、広島東、中央両署に二十五日、業務妨害容疑で逮捕された宮崎市の会社員少年(18)は取り調べに、こう供述したという。
秋葉原の事件の四日後、自宅から携帯電話で無料掲示板に「これから広島駅で人を刺し殺します。十人殺したら逃走します」などと書き込んだ疑いが持たれている。市民からの通報で、東署員や駅員ら約三十人が翌日未明まで構内を警戒した。「事件を真似た。目立ちたいという軽い気持ちだった」と振り返り、反省しているという。
中区の本通り商店街での無差別殺人を掲示板で予告したとして中央署に十五日、業務妨害容疑で逮捕された西区のアルバイト少年(19)も「むしゃくしゃしていた。本気ではなかった」などと供述しているという。
以前は「いたずら」とみられていた書き込みだが、秋葉原の事件以降、警察は発信者の特定に躍起だ。広島県警は犯行予告を「県民に不安感を与える悪質な犯行」とし、サイバーパトロールの強化とともに、十六日、県内のネット関連事業者に早期通報を要請した。
秋葉原の事件以降、二十三日までに犯行予告を書き込んだとして、全国で十二人が業務妨害容疑などで逮捕された。
「世間を騒がせたかった」など自己中心的な動機が多いが、立正大の小宮信夫教授(犯罪社会学)は「ネットは気軽にアクセスできる匿名性の世界で、まさか捕まらないと思っている」と分析する。だが、「どのパソコンや携帯から発信されたのか、通信履歴などを見れば特定できる」(広島県警)のが現実だ。
書き込みの激しい中身と、容疑者の実像のギャップに戸惑う捜査関係者も少なくない。「自分の存在をアピールしたいならば、犯行後に自首してもいいはずだが、捕まるのは嫌だという矛盾する感覚がある」と、帝塚山学院大の小田晋教授(犯罪精神医学)は指摘する。
群馬大の下田博次・特任教授(情報メディア論)は「未成年のネットモラルも低下しており、ネットの危険性などの教育が重要になっている」と訴えている。(久行大輝)
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