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韓国女性射殺:李大統領、北への対話提案を強行

 李明博(イ・ミョンバク)大統領が11日、金剛山で50代女性観光客が銃撃を受けて死亡した事実について報告を受けながらも、北朝鮮に対して全面的な対話を提案するという内容の国会演説を強行したことが問題となっている。何よりもまず国民の生命と安全を守るべき大統領が、国民が銃撃を受けて死亡したその日に、それも事件の真相も究明されていない状態で、このような内容の演説を行うのは問題だということだ。

 李大統領はこの日午後2時20分から国会で演説を行う予定だったが、50分前の午後1時30分に事件についての報告を受けた。金剛山事業を行う現代峨山が午前11時30分に統一部に事件について最初の報告を行ってから2時間が経過していた。大統領府状況管理室は11時40分に鄭正佶(チョン・ジョンギル)室長に事件について報告し、キム・ソンファン外交安保首席もその10分後に鄭室長に報告を行った。

 しかし、李大統領は国会に向かう直前になって鄭室長とキム首席から報告を受けた。報告が遅れたことについて大統領府の関係者は「銃撃かどうかはっきりしないとの報告もあり、事件の真相を正確に把握できなかったからだ」と説明した。例えば合同参謀本部からは一時、「疾病で死亡した」という食い違った情報が上がってきたという。それでも現代峨山から統一部へとつながる公式の報告が直ちに大統領に伝わらなかったのは納得しにくい。

 李大統領は鄭室長とキム首席、李東官(イ・ドングァン)報道官ら側近と10分ほど緊急の会議を行った。一部の側近は「事件が非常に敏感なものであるため、(6・15及び10・4首脳宣言を履行する案について話し合う用意があるという)演説内容を削除あるいは修正すべきだ」と意見を述べた。

 しかし多くの出席者たちは、演説文はすでに12時に記者室に配布されており、そのまま行う以外にないと主張した。李大統領も今回の事件で南北関係が中断・硬直してはならないと考えていた、と大統領府は説明した。結局李大統領は演説を強行することを決め、午後1時50分に国会に向けて出発した。

 大統領府の関係者は「事件と演説内容は別の問題で、分けて対応すべきと判断した。演説文を変更するのにも時間的制約があった」と弁解した。要するに大統領と側近たちは「事件の正確な真相がまだ把握できていないのに、政府による政策の方向性を説明する演説内容をその場で変更することはできなかった」と説明しているのだ。

 しかし専門家は「事件の正確な真相が把握できなかった」からこそ、演説を先送りすべきだったと指摘する。大統領が午後1時30分に受けた報告は、北朝鮮の一方的な説明を現代峨山と統一部を通じて受けたものだ。韓国側による真相究明のための調査結果や、北朝鮮軍による韓国人観光客銃撃により多くの問題が出てくる可能性もある状況だった。西江大学のキム・ジェチョン教授は「対北朝鮮政策をわずか1時間で変更することはできなかったというが、国民の生命にかかわる重大な事件が発生したのならば、発表を先送りして時期を調整すべきだった」と主張する。明知大学の申律(シン・ユル)教授も「李大統領が演説で“銃撃事件が発生したので、今日説明する予定だった対北朝鮮政策は発表を先送りする”と語っていれば好感を得ることができていただろう。国民の生命と安全を重要視するという李大統領の発言を、国民は今後も信じるだろうか」と指摘した。

 李大統領はこの日午後になって「真相を徹底して究明せよ。北朝鮮も捜査に協力すべきだ」と語ったというが、今回も米国産牛肉問題に続き、「大統領府の基本的な政策判断能力に問題がある」との批判が再び出てくる可能性が高い。

ペ・ソンギュ記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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