イランがミサイル発射実験を行った。米国やイスラエルが強硬な対抗姿勢を示し、湾岸での軍事衝突の危険性さえある。関係国が冷静に対応し、事態打開へ交渉の機会を探るよう努力すべきだ。
イラン革命防衛隊はペルシャ湾での軍事演習で、中距離弾道ミサイル「シャハブ3」を含むミサイル発射実験を実施し、イラン衛星テレビは「成功した」と伝えた。
「シャハブ3」ミサイルは、北朝鮮から導入したミサイルの改良型で、核弾頭の搭載が可能とみられ、射程は二千キロという。イスラエルやトルコ、湾岸諸国、パキスタンなどが射程圏内となる。イランは今回の実験を「米国やイスラエルへの対抗措置」と表明した。
国連安保理の制裁決議を無視してウラン濃縮活動など核開発を進めるイランに対し、米国とイスラエルは「湾岸での最大の脅威」と位置付けてきた。
ライス米国務長官は「必要ならあらゆる手段を取る」と言明し、イスラエルのバラク国防相も対イラン攻撃の構えを捨てていない。イスラエルは先月、地中海でイラン核施設への空爆を想定した軍事演習を行ったとも伝えられる。
湾岸地域は、双方の対立が深まり、極度に緊張している。イラン側は攻撃されれば、湾岸の米艦艇攻撃、ホルムズ海峡の封鎖も辞さないとの態度だ。この地域で戦火となれば、中東全域への拡大、ひいては原油供給停止による世界経済への打撃は目に見えている。
ブッシュ米政権は常々、イラン核問題の外交による解決を主張してきた。それをぜひ実行してもらいたい。アハマディネジャド・イラン大統領の強硬一辺倒の外交に国内でも批判がある。イラン、イスラエルの自制を促したい。
米英仏中ロとドイツはイランにウラン濃縮活動の停止を前提に経済、科学技術支援、イランの安全の保障などの見返り案を提示している。イラン側は濃縮活動の停止を拒否したが、交渉の余地を残す姿勢も一部にみせているという。イランは国際社会の声によく耳を傾け、誠実に対処すべきだ。この交渉を定着させ、湾岸地域の安定に資することが緊要だろう。
中東・湾岸諸国は「イスラエルの核兵器保有」を懸念する。イスラエル政府は明確な姿勢を示していないが、エジプトなどは「中東非核化地帯」を提唱している。中東・湾岸諸国に加え、米国や欧州連合(EU)、ロシアなどが、真剣に検討することが重要だ。
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