新潟県中越沖地震から十六日で一年になる。甚大な被害を受けた柏崎市を訪れ、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を視察する機会を得た。
市街地ではあちこちで空き地や駐車場が目についた。家屋が倒壊した跡地だ。段差のついた道路を復旧する工事も随所で見られた。同市内では仮設住宅への入居者が、まだ二千人を超えるという。
日本海に面した原発の敷地は広大だ。東京ドームの九十個分に相当する。計七基の出力も八百二十一万キロワットと世界最大。しかし、震災で運転は停止されたままだ。
原子炉建屋に足を踏み入れる。地下五階まである。複雑に張り巡らされた配管。原子炉を「止める」制御棒を駆動させる機器、「冷やす」ための大量の水を送るポンプ、放射性物質を「閉じ込める」圧力容器や格納容器。“心臓部”の構造が垣間見えた。
震災時、原子炉建屋では想定を大きく上回る最大六八〇の強い揺れに見舞われた。原子炉内の点検では大きな不具合は確認されてないという。東電は一〇〇〇に耐えられるよう、先月から耐震補強工事を進めている。運転再開までの道筋はまだ見えない。
「安全安心が担保されない限り、運転再開は譲れない」。市民のほぼ一致した声だ。原発の安全性と信頼性を高め、情報公開していく努力がなお求められる。